
第579回 イスラム式クラウドファンディングの可能性
Q: マレーシアでイスラム式クラウドファンディングが普及するためには?
A: 企業や個人が資金調達を行う手段であるクラウドファンディングの普及が進んでいるが、中にはイスラム式を謳うプラットフォームも存在する。イスラム式とは、「モスクの建設費用を集める」など目的がイスラムに適うとともに、調達した資金をイジャーラ(リース)方式で運用して出資者に分配するなど手段がイスラムに則ったものを指す。このようなイスラム式クラウドファンディングは、マレーシアではどのように発展していくかについて、2024年に研究論文が発表された。
トレンガヌ州のスルタン・ザイナル・アビディン大学のムハンマド・シャフルル・イフワート・イシャク准教授らの研究チームは、クラウドファンディングやイスラム銀行等で働く7名の実務家・専門家に対して聞き取り調査を行い、マレーシアにおけるイスラム銀行とクラウドファンドの発展を探った。調査結果から明らかになったことは、調査対象者がイスラム式クラウドファンディングを通じて多くの資金がイスラム金融市場に流入していると認識している、という点だ。また、両者は競合関係になるとはみておらず、むしろ補完関係だとみなしている。
根拠としては、クラウドファンディングを利用するスタートアップ企業や中小企業の中は、イスラム銀行から融資を受けられなかった事例が多いため、クラウドファンディングとイスラム銀行が借り手を奪い合ってはいないとしている。また、クラウドファンディング自体がイスラム銀行を利用していることから、足りないものを互いに補いあっているといえる。
クラウドファンディングの課題は、銀行融資ならば必須の企業へのモニタリングや、イスラム法によるガバナンスが徹底されていない恐れがあるため、この点をどう強化するかが、クラウドファンディングへの信頼に繋がると、専門家らは見ている。
| 福島 康博(ふくしま やすひろ) 立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。 |