まだ道半ばでありこの先もどうなるか予断を許さない新型コロナウイルス「Covid-19」との戦いだが、これまでのマレーシア政府の感染対策については国民から高く評価されているようだ。実際、6月23日時点でのマレーシアの累計感染者数は8,590人にとどまり、すでに8,186人が回復している。1日あたりの新規発生件数は10人前後に落ち着いており、累計死者数は121人でおさまっている。

 シンガポールのブラックボックス・リサーチとフランスのトルーナが23カ国・地域の1万2,000人を対象に共同実施したコロナ対策に対する国民の満足度調査によると、マレーシアは総合評価で58ポイントで4位。中国やベトナムには及ばなかったが優等生といわれたニュージーランド、台湾、タイ、韓国を上回った。日本はわずか16ポイントだった。

 また政治、経済、地域社会、メディアの4分野のうち、政府の対応を高く評価した人の割合は59ポイントで、台湾、タイ、韓国を上回った。何かと安倍内閣にシビアな国民が多い日本はわずか16ポイントだった。マレーシアはメディアに対する評価も93ポイントと高く、日本で高く評価された台湾を上回った。

 「国に医療危機に対する備えがない」との設問に同意したのは17%で、中国に次いで低かった。「医療危機に対する備えより軍事的備えがある」との設問に同意したのはわずか3%で、ニュージーランドと共に最も低かった。

 保健省のノール・ヒシャム事務次官が紹介した非営利組織、DNDi(顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)のリポートは、西側諸国の状況と比較すると、マレーシアなどのアジア諸国では感染と死亡を比較的低く抑える革新的で迅速な対策が行なわれたと指摘。「新しい治療法やワクチンなどのより高価なソリューションに投資する必要があることは明らかだが、基本的な感染対応に関する実務性とスピードが主要な要因」と分析している。

 感染対策の陣頭指揮をとってきたノール事務次官は先日、マレーシアのアプローチには、特定の国と比較して2つの重要な違いがあると指摘している。まず1つ目は、症状の有る無しにかかわらず陽性患者をすべて病院で隔離・治療するという方針で、他の国では例え陽性であっても無症状、もしくは症状が軽度の場合では自宅で隔離・治療されるが、マレーシアでは陽性の場合、症状がなくても病院で隔離する点が異なっているという。

 二つ目は、自宅であるか保健省の隔離センターであるかにかかわらず、海外から帰国した国民に隔離を義務付けている点。マレーシアへの帰国者は自宅隔離を受けることができるが、それでも隔離が義務づけられている点は変わらないと強調している。これらに加えてノール事務次官は、マレーシア政府が国境管理を厳しく行なっていることを挙げている。


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