第904回:中小企業の両利き経営(7)両利きとグリーンイノベーション、持続可能性

前回は、内部リソースの不足を克服して両利きになるために、中小企業は外部リソースに依存するオープンイノベーションを採用する必要があること、しかし、オープンイノベーションはしばしばオーケストレーションを伴うため、短期的には中小企業にとってコストがかかる可能性があることを述べました。今回は、グリーンイノベーション(炭素排出量を減らすなどの環境に良いイノベーション)についてです。

ポルトガルの中小企業336社を対象とした研究は、両利きが持続可能性にプラスの影響を与え、それが新製品の成功とグリーンイノベーションにプラスの影響を与えることを示しました。同様に、中国に本社を置く多国籍企業300社を対象とした研究では、両利きは、経済、環境、社会の持続可能性にプラスの影響を与えることが示されました。

深化によるイノベーションは、企業が持つ従来の技術を活用したものであり、既存のインフラ設備の下で、多額の投資をすることなく実現できます。主に、既存のプロセスと製品を改善して効率を上げます。一方、探索によるイノベーションは、従来とは大きく異なる、より優れた方法を用いて、様々な技術を探求します。設計の改善を伴い、企業のインフラに大きな変更を加えずには実現できないため、十分な投資が必要です。不確実性を伴うものの、長期的には成果をもたらします。探索と活用が共存する例としては、燃料電池技術(エコ効率)とハイブリッド技術(エコデザイン)に基づく燃料電池システムがあります。

しかし、グリーンイノベーションの導入には、オープンイノベーションと同様にコストがかかります。どのようにすれば克服できるでしょうか。次回に続きます。

 

Kokubun, K. (2025). Digitalization, Open Innovation, Ambidexterity, and Green Innovation in Small and Medium-Sized Enterprises: A Narrative Review and New Perspectives. Preprints. https://doi.org/10.20944/preprints202504.0009.v1

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)