【総点検・マレーシア経済】第531回 緊密化するマレーシアと台湾の貿易関係

第531回 緊密化するマレーシアと台湾の貿易関係

ここ数年の貿易統計を見ると、マレーシアと台湾の貿易関係が緊密化していることが分かります。マレーシアの台湾からの輸入は2020年の461億リンギから2024年にはほぼ2倍の903億リンギに増加し、国別で見ると中国、シンガポール、アメリカに続く第4位となっています。一方、マレーシアから台湾への輸出は2020年の205億リンギから2024年には2.3倍の471億リンギに増加し、国別ではシンガポール、アメリカ、中国、香港、日本に続く6位となっています。

図1はマレーシアと台湾の貿易における半導体(HS8542)の輸出入額と全輸出入に占める比率を示したものです。マレーシアの台湾からの半導体輸入はここ5年で1.6倍に、輸出は2.4倍に増加しています。全輸出に占める半導体の比率は約80%で安定していますが、輸入に占める比率は2020年の80%から2024年には66%に低下し、台湾からの輸入はやや多角化する傾向が見られます。ただし、品目を詳しく見ると、半導体にノートPCやサーバーなど(HS8571)とPC関連の部品(HS8573)を加えると台湾からの輸入の約90%となり、IT関連製品で占められていることは変わりはません。

 

さらにマレーシアと台湾の半導体貿易を詳しく見ると、マレーシアの台湾からの輸入はプロセッサ・コントローラ(45.6%)、IC部品(28.6%)、その他IC(19.2%)と比較的分散しているのに対し、マレーシアの台湾への輸出ではプロセッサ・コントローラが68.4%を占めています。台湾から半導体部品・コンポーネントを輸入し、マレーシアで半導体完成品に組み立てている構造を示唆しています。

 

これは、台湾にTSMCに代表される先端半導体の前工程が集中している一方、マレーシアでは米インテルの後工程や半導体組み立て・テスト(OSAT)の世界最大手である台湾ASE社が進出し、後工程の集積地となっていることとも整合的です。企業レベルでは、例えばインテルはノートPC向けプロセッサのCore Ultra(Meteor Lake)において、GPUやインターフェイス部分の「タイル」の生産をTSMCに委託しています。

 

インテルは近年、前工程の微細化が停滞し、経営不振に陥っています。しかし、9月18日にAI半導体最大手のNVIDIAがインテルに50億ドルを出資することが発表され、AIデータセンター向けのNVIDIA製品にインテルのCPUが統合される方針が示されました。NVIDIAは台湾TSMCの主要顧客でもあることから、前工程を担う台湾と後工程を担うマレーシアの協業関係は今後さらに深まることが予想されます。

 

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

JICA、第三国研修「労働安全衛生管理」を開催

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 国際協力機構(JICA)マレーシア事務所は、マレーシア外務省及びマレーシア労働安全衛生局(DOSH)と共同で第三国研修「労働安全衛生管理」を2025年10月6日―10月17日にかけて開催すると発表した。

第三国研修は、ある開発途上国において、他の開発途上国から研修員を受け入れて行われる研修をJICAが資金的・技術的に支援する技術協力の一種。今回の研修はDOSHが研修機関として、アジア諸国から15人の研修員を受け入れ、労働安全衛生管理に関する研修を実施する。研修員の多くは、自国において労働安全衛生管理を担当する政府職員。

研修員の受け入れ対象国は▽バングラデシュ▽カンボジア▽インドネシア▽ラオス▽ネパール▽パキスタン▽フィリピン▽スリランカ▽東チモール▽タイ▽ベトナム――で、労働安全衛生管理におけるマレーシアの経験と優良事例を共有する

神戸市港湾局、「神戸港セミナー」を11月11日にKLで開催

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 神戸市港湾局は、神戸港の港勢拡大を図ることを目的としたセミナーを阪神国際港湾と共にクアラルンプール(KL)市内のホテルで開催すると発表した。

「神戸港セミナーinクアラルンプール」は日本の国土交通省の共催で、日本貿易振興機構(ジェトロ)、神戸商工会議所が後援する。現地の製造業・物流業等の企業を対象に港勢拡大を図ることを目指す。神戸港は、国際コンテナ戦略港湾として、貨物や航路の誘致、港湾機能の向上を推進するとともにポートセールス活動に積極的に取り組んでいる。

プログラムは国土交通省港湾局や神戸市港湾局による講演(日本語と英語)、山九グループのマレーシア法人や船会社のオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)による事業紹介、情報交換会――。

参加申込は以下のURLから10月31日まで受け付ける。https://forms.office.com/r/tJCT2QGGFV

ジェトロKL、高齢者産業に関するセミナーを10日に開催

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール(KL)事務所は、マレーシアの高齢者産業をテーマとした概要と政府の動向を解説する「マレーシアにおける高齢者産業の 概要(市場/規制)及び政府の動向」セミナーを10月10日に開催する。

中小企業海外展開現地支援プラットフォームコーディネーターと、マレーシアにおける日本式介護施設を運営するアシルテックの代表が登壇者となり、高齢者産業に参入する上でおさえるべきポイントについて解説する

ハイブリッド形式(会場+オンライン)で実施し、セミナーの録画は後日オンラインで配信する。会場参加者にはセミナー後に登壇者とのネットワーキングセッションを設ける。

マレーシアは2021年に高齢化社会へ突入し、2030年には65歳以上人口比率が15%を超える「高齢社会」へ移行すると予測されており、高齢者関連産業は介護施設整備やケア人材育成、デジタル行政インフラ強化など幅広い領域で投資機会が広がっており、海外企業にとっても魅力的な新成長市場となっているという。

参加申込み(締め切り10月9日)は次のURLより受け付ける。https://www.jetro.go.jp/form5/pub/mak/healthcareseminar25