中小企業協会、SSTの課税対象企業の基準引き上げを要求

【ペタリンジャヤ】 マレーシア中小企業協会(SAMENTA)は、7月1日から施行される改正売上・サービス税(SST)が中小企業経営を圧迫するとして、課税対象企業の基準を引き上げるか、または零細・小規模企業を免税対象に含めるよう求めている。

SAMENTAのウィリアム・ン会長は、現在の年間売上高50万リンギ以上となっている課税対象基準が中小企業を圧迫しているとした上で、これを200万リンギに引き上げてより基準を狭めることを提案。こうした措置により影響を受けるのは中規模以上の企業のみになると述べた。

その上でン会長は、「多くの小規模企業は依然として高い運営コスト、弱い消費者需要、輸出市場の不確実性に直面しており、特に米国の関税撤廃が7月8日に終了した後、状況がさらに悪化する可能性がある」と指摘。「こうした状況下で、SSTの改正が十分な免税措置や高い基準値の設定なく進められれば、最も対応が遅れがちな企業にさらなるコスト負担をかける危険がある」と述べた。

さらにン会長は、改正SSTが原材料費にとどまらず、賃貸料や企業間サービスなどにも適用範囲が広がることが、最終的に消費者への価格転嫁を促し、生活費の上昇を引き起こす可能性があると警告した。
(フリー・マレーシア・トゥデー、6月9日)

改正SST制度が7月施行、高級品や6つのサービスに課税拡大

【クアラルンプール】 財務省は9日、売上・サービス税(SST)の適用範囲拡大を7月1日から施行すると発表した。リース、建設、金融、民間医療、教育、美容の6つの分野が新たにサービス税の課税対象となり、6―8%の税率が課される一方、売上税は生活必需品に関して非課税のままとし、低所得層や中小企業向けにさらに免税の規定を設けるなど、国民の負担に配慮した。

売上税に関しては、米、食用油、砂糖、牛乳、医薬品、書籍などの生活必需品、さらにセメントや砂といった建築資材も0%に据え置かれる。一方で、高級品は増税し、輸入果物やサーモン、絹などは5%、競技用自転車や絵画などは10%が課せられる。

サービス税の新たな対象となったリースでは、年間収入が50万リンギ超の事業者に対して、8%の課税となる。ただし、住宅や海外資産、特定のファイナンスリースなどは免除される。

建設サービスについては、年間収入が150万リンギ超の事業者に対して、6%が適用される。ただし、住宅建設や公営住宅関連工事は免税となり、二重課税を回避するため、企業間取引(B2B)も免税となる。

金融サービスでは、手数料を伴うものには8%が適用される。ただし、標準的な銀行取引、イスラム金融、為替差益、対外送金などは引き続き非課税となる。ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)、ラブアンを拠点とするサービス、企業間取引についても減税措置を講じる。

民間医療サービスとしては外国人には6%の課税が課され、マレーシア人は非課税で据え置かれる。

教育分野では、生徒1人当たりの年間授業料が6万リンギを超える私立幼稚園、小中学校に6%の課税が課される。高等教育の場合、留学生が対象になる。マレーシア人学生は完全に免除される。

フェイシャルトリートメントやヘアスタイリングを含む美容サービスは、年間収入が50万リンギを超える事業者には8%が課される。

財務省は6月中に拡大範囲の詳細なガイドラインなどを発表する予定だが、年内は懲罰措置は講じない方針。SSTの拡大は、2025年度予算案演説の際に発表され、当初は5月に施行が予定されていた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、エッジ、6月9日)

モハマド農業食糧安全相、福井県や小泉農水相を訪問

【クアラルンプール】 大阪・関西万博出席などのために日本を訪問したモハマド・サブ農業食糧安全相は4日、福井県を公式訪問。越前町などで有機米の栽培農家などを見学した。

越前町の農家に、マレーシア人が働いている縁で訪問が実現。無人田植え機などITを活用したスマート農業を見学し、モハマド氏は「労働力不足と気候変動の問題に対処するために、農業をどのように近代化できるかを示す好例だった。マレーシアの米生産量の増加と食料安全保障の強化に向け、非常に有益な情報を得た」とフェイスブックに投稿した。

モハマド氏は5日には、東京の農林水産省で小泉進次郎大臣とも会談。農業の環境負荷低減と生産性向上の両立に向けた「日ASEANみどり協力プラン」 を今秋に改訂することへの協力や、グリーン開発と気候変動への対応、農林水産物・食品の輸出拡大など、両国の農林水産分野に関する意見交換を行った。
(マレーシアン・リザーブ、6月5日、農林水産省報道発表資料)

スナック菓子の新興企業6社が公的支援受け日本市場参入

【シャアラム】 セランゴール州開発公社(PKNS)は9日、同公社などによる輸出促進プログラムを通じ、新興企業6社が日本市場に参入すると発表した。

6社はいずれもスナック菓子の製造・販売を手掛ける企業で、▽ニムズ・アデリシャス▽ノーリッシュ・ノバ・フーズ▽TFNブラウニー▽ザ・スキニー・ベイカーズ▽Mファエズ・フード▽アダックティブ。同公社とマレーシア中小企業公社が2024年から取り組むプログラムを通じ、30社の中から審査を経て選ばれた。

大阪・関西万博で6社の製品が展示されているほか、万博期間中、各社の代表者らが日本に滞在し、商談を進める。すでに「ドン・キホーテ」など日本の大手小売り店やホテル、レストランなどでの販売も決まっているという。

PKNSのマフムド・アッバス最高経営責任者(CEO)は、「地元起業家と2公社が協力して、厳格な基準と目の肥えた消費者で知られる日本市場に、ブミプトラ(マレー系および先住民)製品を輸出することは画期的な出来事」と述べた。
(ベルナマ通信、6月9日)

携帯電話利用記録の提出、通信委が携帯各社に要求

【クアラルンプール】 マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)が携帯電話サービス各社に、年初3カ月間の携帯電話通話記録、インターネット利用記録の情報提出を要求していたことが分かった業界筋の情報として香港紙のサウスチャイナモーニングポストが伝えた。

エッジの取材に対しMCMCは当初、返答を控えたが、6日夜、情報提出を要請したことを明らかにした。政策決定に活用するための統計作成が目的だという。

エッジの調査によれば、地方議会、政府省庁、国関係機関が保管する重要情報が、一般市民がアクセスできるサーバー上で公開されたことがあり、政府はこうしたサイバー攻撃、個人情報の漏洩に神経質になっていた。また最近、サイフディン・ナスティオン内相のワッツアップのアカウントがハッキングされる事案があった。

MCMCは、情報通信技術(ICT)と観光分野の政策決定に生かすためだとした上で、個人を特定できる情報は入手していないと釈明した。ICT分野ではブロードバンド利用者数や地域別浸透率などを調べるという。

事業者のうちUモバイルとテレコム・マレーシアは、個人を特定できる情報は提供していないと説明した。

(ベルナマ通信、6月8日、ザ・スター電子版、エッジ、6月6日)

大阪市とMATRADE、25日にヘルスケア商談会を開催

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 大阪市はマレーシア外国貿易開発公社(MATRADE)などとの共催で、25日に「マレーシア ヘルスケア・ウェルネスビジネス商談会」を大阪市中央区で開催。参加企業を募集している。

商談会では、医薬品のGMPやハラル(イスラムの戒律に則った)認証を受けたマレーシアの製造メーカーや卸売企業が参加。商談時間は30分で、必要に応じて通訳がつけられる。

募集は、大阪府内に拠点(本社、支社、営業所など)を有する企業・団体など約15社。締切は20日(先着順)で、詳しくはサイト(https://www.bpc.ibpcosaka.or.jp/malaysia-b2b2025)。

印紙税免除の基準額大幅引き上げ、製造業連盟が政府に要請

【クチン】 雇用契約に対する印紙税納が今年から義務化されたことについて、マレーシア製造業連盟(FMM)は、印紙税免除規定における適用基準額が現状にそぐわないとして大幅な引き上げを盛り込んだ「1949年印紙法」の包括的改正を政府に要請した。

FMMのソー・ティエンライ会長は、現在の経済・ビジネスの実態を反映させるため、1949年印紙法の第一条を正規化・改正することを検討するよう政府に要請。現代の賃金水準と業界標準に合わせ、雇用契約に対する印紙税免除の基準額を現在の月額賃金300リンギから同1万リンギに引き上げるよう求めた。

雇用契約に対する印紙税は「1949年印紙法」で定められているが、これまで違反に対する摘発は行われていなかった。同法によると、1件当たり10リンギの印紙税の納税義務は雇用契約においてフルタイムかパートタイムかに関わらずいずれの国籍の従業員にも適用されることになっている。

今年に入ってから監査体制を強めていた内国歳入庁(IRB)は今月6日、今年いっぱいは罰金は科さないが2026年1月1日からは、納税義務を怠り雇用契約締結から30日内に納税しない場合には罰金が課されると改めて発表していた。
(ボルネオポスト、6月7日)

500万リンギ未満の中小企業の電子インボイス、来年以降に延期

【クアラルンプール】 内国歳入庁(IRB、LHDN)は5日、今年7月1日付けで完全導入義務化が予定されていた電子インボイスについて、年間売上高が500万リンギ未満の中小企業(SME)を対象に導入期限の延期を発表した。

今回、年間売上高が2,500万リンギ未満50万リンギ以上のSMEを、さらに細かく3つのカテゴリーに区分。500万リンギ以上は予定通り7月から導入されるが、500万リンギ未満―100万リンギ以上は2026年1月、100万リンギ未満―50万リンギ以上は2026年7月にそれぞれ期限を延長し、50万リンギ未満は当面免除とした。加えて、各段階における義務化発効後6カ月間の猶予期間も認めている。

今回の延期について内国歳入庁は、SMEがより十分な準備期間が必要としているため、とする。これに対し、マレーシア華人商工会議所(中華工商聯合会、ACCCIM)や中小企業協会(SAMENTA)は歓迎しつつ、中小企業協会のウィリアム・ン会長は免除対象を100万リンギ未満からにするよう求めている

電子インボイスについては、昨年8月1日からの第1段階では1億リンギ以上、今年1月1日からの第2段階では2,500万以上と、段階的に導入された。当初は第3段階として2,500万リンギ未満は7月1日から一斉に導入される予定だったが2月に50万リンギ未満のSMEに対しては2026年1月1日への延期が発表されていた。
(ザ・スター、6月7日、ベルナマ通信、6月6日、エッジ、6月5日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第901回:中小企業の両利き経営(4)深化が好まれる理由

第901回:中小企業の両利き経営(4)深化が好まれる理由

前回は、競争や変化の激しい業界においては、深化よりも探索を戦略の中心に据えることが合理的であることを示しました。

しかしながら、中小企業の多くは深化を好みます。これは、深化には非合理的な側面と合理的な側面の両面があるからです。英国の新興B2Bテクノロジー企業180社を対象とした研究では、主要顧客への依存は、製品開発へのモチベーションを低下させるなど、企業の存続に大きな悪影響を及ぼすことが示されました。しかし、こうしたリスクを乗り越えて生き残った企業では、顧客ポートフォリオの成長にプラスの影響が及ぶという逆説的な結果が示されました(Yli-Renko et al., 2020)。これは、長年にわたって深化を続けることで主要顧客との良好な関係を維持した中小企業は、その評判を利用して新規顧客を獲得できる可能性があることを示唆しています。

一見非合理的に見える深化をなぜ中小企業が続けるのかを考える上で、この研究は大きな示唆を与えてくれます。例えば、日本では大企業と中小企業が系列システムを形成しており、中小企業は既存のサプライチェーンの中で大企業が求める仕様の製品・部品を迅速かつ正確に供給するために、ラディカル・イノベーションよりも、プロセス・イノベーションやインクリメンタル・イノベーションに取り組むことが期待されてきました。このような環境下では、新たな情報ネットワークを必要とする探索よりも、既存の情報ネットワークを活用した深化が企業業績に大きく影響します。したがって、このような状況下では、既存顧客への満足が最も合理的な生存戦略であるため、探索を行わない中小企業をイノベーティブではないと批判することはあまり建設的ではない可能性があります。

そうはいっても、時代は大企業への依存から脱することを中小企業に求めています。中小企業の取るべき戦略はどのようなものでしょうか。次回に続きます。

Kokubun, K. (2025). Digitalization, Open Innovation, Ambidexterity, and Green Innovation in Small and Medium-Sized Enterprises: A Narrative Review and New Perspectives. Preprints. https://doi.org/10.20944/preprints202504.0009.v1

Yli-Renko, H., Denoo, L., & Janakiraman, R. (2020). A knowledge-based view of managing dependence on a key customer: Survival and growth outcomes for young firms. Journal of Business Venturing, 35(6), 106045. https://doi.org/10.1016/j.jbusvent.2020.106045

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

KLIAエアロポリス本格始動、航空産業に特化の工業団地が起工

【クアラルンプール】 航空宇宙産業に特化した工業団地、セランゴール・エアロパーク(SAP)の起工式が5日、クアラルンプール新国際空港(KLIA)の隣接地で行われた。セランゴール州政府は、16日から開催される世界最大規模のパリ航空ショー(パリ国際航空宇宙ショー)で、SAPを含めたKLIAエアロポリス構想をアピールし、世界的な誘致に取り組む。

SAPは、空港運営会社マレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)と、州政府系企業メンテリ・ベサル・セランゴールが提携して開発する。600エーカー(243ヘクタール)で、総開発価値(GDV)は23億リンギが見込まれる。第1フェーズとして開発される200エーカー(81ヘクタール)のうち半分は、米国の航空機エンジンメーカー、GEエアロスペースがMRO(保守・整備・オーバーホール)施設などの建設用地として確保している。残る400エーカー(162ヘクタール)は2028年以降、段階的に開発していく。

KLIAエアロポリスに関しては2022年、MAHBに対し、連邦政府所有地8,500エーカーの99年間のリースおよび開発権を付与している。

セランゴール州のアミルディン・シャリ州首相は「KLIA第2章の始まりであり、空港だけでなく、産業とサプライチェーンを統合した完全なエコシステムを構築する」と述べた。現在、国内の航空宇宙産業の68%超が同州に集中しているが、さらに2030年までに73%に引き上げるとしている。

アンソニー・ローク運輸相は「東南アジアにおけるトップクラスの航空貨物ハブを目指している。目指すのは、銅メダルや銀メダルではなく、金メダルだ」と意気込む。中国と協力して、「エア・シルクロード」構想のもと、KLIAを東南アジアと中国を結ぶゲートウェイとして強化していく方針も示している。
(マレーシアン・リザーブ、6月6日、ビジネス・トゥデー、6月6日、6月5日、エッジ、6月5日)