今年のマレーシアGDP成長予想、ムーディーズが下方修正

【クアラルンプール】 ムーディーズ・アナリティクスはマレーシアの今年の国内総生産(GDP)増加率予想を5%から4.4%へ下方修正した。米国政権の関税措置で国際貿易が不透明になっているためだ。

ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)での会議においてムーディーズのアジア太平洋地域幹部カトリーナ・エル氏は「相互関税措置が長期に及ぶことはない、との前提での修正であり、もし長期にわたる場合、さらに大幅な修正になる」と言明。「関税措置の現状は変動が激しい。こうした不透明感はマレーシアのような輸出依存国には大問題だ。輸出は減少する」と述べた。

ムーディーズ・アナリティクスはインフレ予想も2%から1.6%へ修正した。物価上昇が予想より緩やかであれば、中央銀行バンク・ネガラ(BNM)には金融緩和を考える余地が生じるという。

アブドル・ラシードBNM総裁は同じ会議で、中銀のGDP増加率予想(4.5-5.5%)の見直しに着手したことを明らかにした。
(エッジ、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、4月14日)

複数の企業が株式公開を延期、市場の不安定化で

【クアラルンプール】 複数の企業がブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)での新規株式公開(IPO)の延期を決めた。アブドル・ワヒド最高経営責任者(CEO)が今年の見通しに関する会議で明らかにした。米政権による関税措置の発表で市場が不安定になっているためだ。

アブドル・ワヒド氏によると、4月30日に上場予定だった韓国系クク電子傘下のクク・インターナショナルが上場計画の2カ月延期を決定。既に募集を開始していたため、投資家からの返金要求に応じている。化学品メーカーの韓国系OCIホールディングスもIPOに向けた作業を停止した。

ブルサの今年の上場目標数は60件で、アブドル・ワヒド氏は、引き続き目標達成を確信していると述べた。

マレーシアを含む世界各地の証券市場は一貫性を欠く米政権の関税政策、その結果としての不透明感から大きく変動している。

今年、既に上場を果たしたのは15社。米関税措置発表後、5社で初値が公開価格を下回った。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、エッジ、4月14日)

投資貿易産業省、大阪万博で2週間の開幕記念イベントを主催

【クアラルンプール】 大阪・関西万博のマレーシアパビリオンでは、13日の万博開幕から2週間、「投資・貿易・産業ウィーク」と銘打ち、さまざまなビジネスマッチングセッションを展開している。

開幕を記念した2週間のプログラムは、投資貿易産業省(MITI)が主催。グリーンテクノロジーやハラル(イスラムの戒律に則った)産業、イスラム金融などのテーマごとに、セミナー、製品展示、ビジネスピッチなどが催される。それらを通じて、マレーシア企業30社が日本などの150社以上と話し合う予定で、今後の協力や投資などに関する複数の覚書(MoU)締結につなげたいとしている。

万博でマレーシア政府代表を務めるハイリル・ヤフリ・ヤーコブMITI事務次官は、「万博期間中に130億の投資獲得という目標に向け、この取り組みを通じてマレーシアをダイナミックで未来志向の国家として位置付けていきたい」と語った。
(ベルナマ通信、ザ・バイブス、4月14日)

ホンダマレーシア、初の電気自動車「e:N1」の予約受付開始

【クアラルンプール】 ホンダ・マレーシアは15日、同社初のバッテリー電気自動車(BEV)、「e:N1」の予約受付を開始すると発表した。同社の公式ウェブサイトから予約できる。今年第2四半期の発売を目指す。正規販売代理店8カ所で詳細情報を提供するという。

価格は明らかにされていないが、隣国タイでの販売価格は119万9,000バーツ(15万7,600リンギ)であることから、ライバルであるプロトン「e.Mas7」やBYD「アット3ウルトラ」(いずれも約12万リンギ)よりやや高めとなるとみられる。

ホンダ・マレーシアは2027年までの向こう3年間で少なくとも3種類のバッテリー電気自動車 (BEV) モデルを発売する予定で、年内に同社初のBEVである「e:N1」を発売すると発表していた。

「e:N1」は、新たな前輪駆動プラットフォーム「e:NアーキテクチャーF」をベースに開発され、最高出力204PS(150kW)、最大トルク310Nmを発揮するフロントシングルモーターを搭載。0-100km/h加速は7.7秒、最高速度は160km/hに達する。容量68.8kWhのニッケルマンガンコバルト(NMC)バッテリーを搭載し、最大500kmの航続距離を実現する。
(ポールタン、モタオート、4月15日)

アブドラ元首相が死去、回廊計画など地域経済政策を推進

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 アブドラ・バダウィ元首相が14日午後7時ごろ、クアラルンプールの国立心臓病研究所で亡くなった。85歳だった。アブドラ氏は呼吸困難を起こして13日に入院していた。娘婿であるカイリー・ジャマルディン氏(元保健相)が明らかにした。

アブドラ氏は統一マレー国民組織(UMNO)の政治家であったアハマド・バダウィ氏の長男として1939年にペナンで出生。マラヤ大学卒業後、外交官などを務めたのちに66年に政界入りし、78年に初当選。81年にマハティール・モハマド政権下で初入閣(首相府相)を果たした。その後、教育相や国防相、外相、内相などを歴任し、2003年に副首相に指名された。

突然辞任を発表したマハティール氏の指名を受けて、2003年に第5代首相に就任。マハティール政権時代の縁故主義や汚職対策を公約に掲げて2004年の総選挙では圧勝し、穏健なイスラム主義の下で東海岸経済地域(ECER)などの地域経済対策に注力した。またマハティール首相時代に悪化したシンガポールとの関係改善にも尽力した。

しかし政策を巡って元老的立場のマハティール氏との関係が悪化。2008年の総選挙では一転して与党連合・国民戦線(BN)が過半数を失ったことで与党内部での求心力も低下し責任論も浮上、2009年4月に待望論が高まっていたナジブ・ラザク副首相(当時)に禅譲するかたちで辞任した。

政界引退後はほとんど表舞台に出ることはなく、近年では体調悪化が伝えられ、カイリー氏は22年9月、アブドラ氏が認知症を患っていることを公表。家族の名前が分からず会話も困難な状態で、車椅子生活だったという。

マレーシア国鉄、30年までに線路利用率80%達成を目標

【クアラルンプール】 マレーシア国鉄(KTMB)は、10州にまたがる1,655kmの線路網の利用率向上計画を発表し、2030年までに新型列車の導入と線路利用率の80%達成を目指す方針だ。モハメド・ラニ・ヒシャム・サムスディン最高経営責任者(CEO)が明らかにした。

線路利用率は一定期間に線路が利用されている比率のことで、現在は30%程度にとどまっている。KTMBでは、インフラの改修と新型車両の調達により、保線作業のために使われない20%を除いた80%の達成を目指す方針で、これにより乗客数と貨物量の増加が見込まれるとしている。

首都圏クランバレーの複線1号線(KVDT1、ラワン―サラク・セラタン間)と複線2号線(KVDT2、セレンバン―ポート・クラン間)事業は2027年の完成予定。既存の線路は30年間使用されてきたため、線路の交換、バラストの交換、信号システムと架線の改良が必要だという。またゲマス―ジョホールバル・セントラル間電化複線化は年内に完成する予定だ。

KTMBは現在、首都圏クランバレーで26編成、北部回廊で7編成、そしてゲマス―パダン・ベサル間の高速電車運行サービス(ETS)に14編成を使用しているが、これも増強する計画。新型列車のリースと、耐用年数を迎えた車両のオーバーホールによってこれを実現する予定だ。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、4月13日)

デジタルクリエイティブ産業を振興、資金面で後押し

【クアラルンプール】 マレーシア・デジタル経済公社(MDEC)は、デジタル技術を活用したコンテンツ制作や映像、ゲーム開発などデジタルクリエイティブ産業をさらに振興するため、資金支援措置を講じる。

アヌアル・ファリズ最高責任者は声明で「人材育成から市場参入まで、価値連鎖全般を強化し、デジタルコンテンツ創造センターとしてのマレーシアの地位強化を図る」とした。

支援のうちデジタルゲーム実証基盤プログラムでは、少なくとも5つのゲーム開発会社に計350万リンギを交付し、新たなゲームジャンルの開発を促進する。マレーシア資本のゲームスタジオが応募できる。

アニメ部門では、応募者から選んだ12人に計120万リンギを交付し、ショートアニメの製作を競わせる。専門家による指導もある。

メタバース(インターネット上に構築された3次元の仮想空間)ビジネスプログラムでは、メタバースを活用したマーケティングの採用を後押しする。受給対象は200の事業者で、5,000リンギの交付金を活用し仮想店舗などを構築する。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、エッジ、ビジネス・トゥデー、4月11日)

3月の新車登録台数、プロドゥアが車種別トップ3を独占

【クアラルンプール】 道路交通局(JPJ)の最新登録データによると、2025年3月の新車登録台数トップ車種はダイハツ系プロドゥア「ベザ」(8,517台)で、2位は「アジア」(7,031台)、3位は「マイヴィ」(6,593台)とプロドゥアがトップ3を独占した。

4位以下はプロトン「サガ」(5,891台)、プロドゥア「アルザ」(3,815台)、ホンダ「シティ」(3,541台)、プロドゥア「アティバ」(3,154台)、ホンダ「HR-V」(2,676台)、トヨタ「ヴィオス」(2,360台)と日系車種が上位を占めた。

販売台数が増加傾向にある電気自動車(EV)だがトップ20にも入らず、最も売れたプロトン「e.MAS7」が737台にとどまった。EV販売の2位以下はBYD「シーライオン7」(303台)、BYD「M6」(281台)、BYD「アット3」(258台)とBYD強さをみせた。

年初3カ月では「ベザ」が2万3,335台でトップ。2位以下は「アジア」(2万1,223台)、「マイヴィ」(1万8,183台)、「サガ」(1万5,364台)で続いた。EVは20位以内にも入れず、「e.MAS7」の1,738台がトップだった。
(ポールタン、4月10日)

KLIA第2ターミナル、15、17日に一時乗り入れ禁止に

【プトラジャヤ】 空港運営会社、マレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)は、中国の習近平 国家主席による3日間のマレーシア訪問に合わせ、4月15日と4月17日の2日にわたり、クアラルンプール新国際空港(KLIA)第2ターミナルへの自動車乗り入れが一時禁止されると発表した。

MAHBのフェイスブックによると、乗り入れが禁止される時間帯は15日が午後6時―午後7時、17日が午前8時50分―午前9時50分で、第2ターミナルに接続する周辺道路が全て閉鎖され、駐車場も利用できなくなる。このため第2ターミナルの利用者はKLセントラル駅からKLIAエクスプレス、第1ターミナルからはKLIAトランジットでアクセスするよう推奨している。

また警察は、習氏の滞在期間中の15日から17日にかけて首都圏クランバレーの合計17の道路が30分から45分間閉鎖されるとして利用者に注意を呼び掛けている。
(マレーシアン・リザーブ、フリー・マレーシア・トゥデー、ベルナマ通信、モタオート、4月14日)

【イスラム金融の基礎知識】第566回 フィリピン、タカフル保険を開業へ

第566回 フィリピン、タカフル保険を開業へ

Q: フィリピンではタカフル保険業者が開業するようですが?

A: イスラム金融市場の拡充に力を入れているフィリピンであるが、中央銀行等が発表したところによれば、早ければ4月からタカフル保険会社が開業をすることになった。これは同国では初の事例となる。

タカフル保険商品を提供する保険会社は、イギリスのプルーデンシャル・グループ傘下のプルライフUK社である。同社は、昨年11月に中央銀行から同国で初の保険会社のライセンスを取得した。それ以来開業に向けての準備を進めており、専用のウェブサイトの開設をはじめ、アル・アマナ・イスラム投資銀行と業務協定を結んだほか、さらにはミンダナオ島ダバオ市にある三つのイスラム学校(マドラサ)でイスラム金融に関する教育プログラムの提供を行い、地域コミュニティにも働きかけている。中央銀行のアリファ・アラ総裁補佐(イスラム金融担当)によれば、他にも外国金融機関がイスラム銀行とタカフル保険の両方のライセンス取得に関心を寄せているとしている。

他方、アジア開発銀行とイギリスのイスラム金融情報会社が共同でアンケート調査を行ったところ、フィリピン人の78%がイスラム金融に興味があることが明らかになった。特に貯金・ビジネスローン・医療保険・個人ローン・電子ウォレットの五つに関心が高い結果が示された。プルライフUK社は、この保険分野のニーズをうまく汲み取れかどうかが、ビジネス展開において重要になりそうだ。また同調査では、マニラ首都圏と南部地域で高い関心が示されたとしている。

別の調査機関によれば、フィリピン在住のムスリム700万人のうち、300万人が十分な金融サービスを利用できていないとしている。先発のマレーシア資本のメインバンクも、同国でのイスラム金融ビジネスを拡大すると明らかにしており、市場拡大を促しそうだ。