新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大で壊滅的な打撃を受けている旅行業界。いつ終息するかも分からない先行き不透明な状況にあって、生き残りを模索する一方で、将来的な「ポスト・コロナ」を見据えたビジョンが求められている。日系旅行代理店、日本旅行グループ・サンライズ・ツアーズ&トラベル取締役の壁田忠幸さんに話を伺った。

業態の脆弱性が浮き彫りに

——コロナの流行でマレーシアの旅行業界ではどのような影響が出ているのでしょうか?

壁田:マレーシアに限らず世界全体の旅行業界がかつて経験した事のない、まさに未曾有の危機に直面しているのは間違いないことです。いずれの旅行会社も売り上げがゼロまたはそれに近い状況となり、旅行産業という業態の脆弱性が浮き彫りになりました。それぞれが生き残りをかけた対策を講じていますが、実際は各社毎の企業体力に寄るところが大きいと言えるでしょう。

——政府の支援体制はどうでしょう。

壁田:世界観光ランキングでもトップ20に入る上位国であり、観光立国と言われるマレーシアですが今般のコロナ禍において、現時点では観光業に対する特別な支援は少なく、他の産業同様に企業努力が求められています。今後、日本の「Go To トラベルキャンペーン」のような分かりやすい施策に発展していく事を期待をしています。

——マレーシアは3月18日というかなり早い時期に行動制限令(MCO)を敷くという思い切った厳しい措置をとりましたが、効果がそれに見合っていない印象です。解除どころか年末まで延長となってしまいました。

壁田:仮に先月(9月)にRMCOが解除されていれば「あの早い時期でのロックダウンは英断だった」という評価になったと思うのですが、結果的に12月末まで延長されたことでガッカリした方も多かったのではないでしょうか。ここまで我慢に我慢を重ねてきた我々の希望は奪われ、もう一段踏み込んだ費用圧縮の対策に追われる事になりました。もし8月末で終わっていれば・・・もしは無いですが各社とも進む道が大きく変わっていたと思います。

「ゼロよりまし」の功罪

——御社サンライズ・ツアーズ&トラベルのお話をお願いします。

壁田:弊社は日本旅行のマレーシア総代理店です。クアラルンプールを本拠地にした総合旅行社でありインバウンド事業は主にマレーシアを訪れる日本人のお客様を、アウトバウンド事業は在馬日系企業の業務渡航や団体旅行のお手伝いを中心にサービス展開をさせていただいております。

——インバウンドとアウトバウンドではコロナの影響はどのように違いますか?

壁田:当社のインバンド事業は日本からの来馬顧客をメインに取り扱うため、マレーシアのRMCOの解除時期に限らず、日本国内における海外旅行需要復活の時期が大きな鍵になります。一方、アウトバウンド部門ですがマレーシアのRMCOが年末まで延長された影響は甚大です。来年早々の市場の戻りに期待をし、その準備をするより手立てがありません。インもアウトも本年いっぱい動きのない(収入が見込めない)この状態、そしてこの時間をどうやって乗り越えるかは目下の課題です。

——アウトバウンドについては、ベトナムとかタイ、中国、豪州、ニュージーランドといった感染を抑え込んだ国を対象に「グリーンゾーン」国として観光渡航も解禁していこうという動きがあり、マレーシアの観光大臣もそうした交渉を他国と進める意向を示しています。

壁田:市場回復過程で「グリーンゾーン」渡航制度が確立され、段階的に渡航国が増えるのは喜ばしい事ですが、必ずしもそれだけでは十分とは言えません。もちろん一部のビジネス需要の回復は小さな光であり希望です。しかしながら一般的な旅行者にも、そして旅行業界にとってもより分かりやすい対策が投入される事を心から期待しています。

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——MCO延長のため年内は回復が期待できなくなりました。そうした中、生き残りのために物品販売をやっている旅行会社もあると聞きます。

壁田:「収入ゼロよりは何でもやって少しでも収入を得よう」という考えに基づいて実施しているところは多いようです。各社毎の判断ですからそれをとやかく言うつもりはありません。ただ、ポスト・コロナでもその分野に進出していくつもりで本気でやっているものと、言葉通り手当り次第にやっているものが混在しているように感じます。

——これまでにも現地のおみやげを車内販売する旅行会社が多くありましたが、これはガイドさんが観光のついでに売る訳です。本業(旅行)があるからプラスアルファの儲けになるからいいのでしょうが、本業が無いのに売るという事になれば勝手が違うし、経費も余計にかかってしまいます。

壁田:はい、付帯販売と呼ばれるものですね。たしかに主力商品であるツアーと比べると「付帯=オマケ」的な存在ではありますが、旅行全体を輝かせる名脇役だとも言えます。そこにはしっかりとしたストーリーがありました。ですから脇役だけを必死で売るような事は無かったのですし、旅行に直接関係ないものであればなおさらです。

——まったく本業と関係の無いものを売っている旅行会社もあるようですがいますが、これでは将来には繋がらないですよね。

壁田:旅行業はその歴史の中で常に形態を変えてきました。旅行という形の無い商品を取り扱う我々にとって、売るものが変化していくことに大きな戸惑いはありません。ただし今般のコロナ禍中で「生き残りの為に迫られた急激な変化」は、「ゼロよりマシ」「売れれば何でもいい」等、ストーリー性のない無策な物販に走ったものと、コロナ問題が明けた後も本業の旅行商品と融合できる(させる)戦略的ものとに大別されていると思います。

※本記事は中編・後編に続きます。

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