【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 中国が8月28日に発表した「2023年度版標準地図」にサバ州とサラワク州沖の広範囲の排他的経済水域(EEZ)が含まれていることが分かり、マレーシア政府が受け入れられないと抗議の声を上げている。

同地図には、台湾を含む南シナ海の大部分が含まれており、マレーシアのほか、ブルネイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアの主張するEEZや領海が中国領と描かれている。

マレーシア外務省は8月30日に声明を発表し、中国の地図には法的拘束力はなく、マレーシアは中国の主張を認めないと言明。「マレーシアは1979年の新地図において謳っている原則を堅持し、マレーシアの領海やEEZ内に対する主権、管轄権などの外国の主張を一貫して拒否してきた」と述べた。その上で「マレーシアは、南シナ海に関する問題は本質的に複雑かつデリケートなものと考えている」とし、「この問題は、1982年海洋法に関する国連条約(UNCLOS 1982)を含む国際法の規定に従って、対話と協議を通じて平和的かつ合理的な方法で処理されなければならない」と指摘した。これに続いてザンブリー・アブドル・カディル外相が翌8月31日、中国に正式に抗議する予定だと明らかにした。

サバ・サラワク州沖で活動している国営石油会社、ペトロリアム・ナショナル(ペトロナス)のテンク・タウフィク最高経営責任者(CEO)は、「ペトロナスの探査・採掘活動はマレーシアの主権領域の範囲内であり、ペトロナスはマレーシアのエネルギー安全保障のためにマレーシアの権利を精力的に擁護する」と述べた上で、「中国の影響力がその主張を超えて拡大していることを注視している」と警戒感をにじませた。

フィリピンは8月31日、「フィリピン領土や海域に対する中国の主権と管轄権を正当化しようとする今回の試みには、国際法上の根拠がない」と言明。国際法及び、中国側が主張する境界線には法的根拠がないとした2016年の仲裁判断に基づき、責任ある行動をとり、義務を順守するよう中国に求めた。

同地図にはまた、インド北東部のアルナチャルプラデシュ州、アクサイチン地域が中国領として描かれており、インド政府は28日、中国に抗議した。