国際協力銀行、太陽鉱工のマレーシア法人に協調融資

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 国際協力銀行(本社・東京都千代田区、JBIC)は23日、太陽鉱工(本社・兵庫県神戸市)のマレーシア法人、太陽鉱工マレーシア(TKMSB)との間で、融資金額30億円を限度とする貸付契約を締結したと発表した。

今回の融資は、日本の民間金融機関との協調融資により実施するもので、協調融資総額は92億円。TKMSBがパハン州において実施する使用済み脱硫触媒からのモリブデンおよびバナジウムの分離回収事業に必要な資金を融通する

太陽鉱工は1949年に兵庫県で設立された非鉄金属類の製錬を主業とする中小企業で、モリブデンおよびバナジウムの製錬、販売を主体に、レアアースやジルコニウム、セラミック原料などのマテリアルの開発・製造を行っている。同社は使用済み脱硫触媒を引き取り、当該廃触媒からモリブデンおよびバナジウムを回収して再利用する事業の開始に伴いTKMSBを設立した。

JBICは太陽鉱工への協調融資について、太陽鉱工の海外事業展開支援を通じて、マレーシアの循環型社会構築に貢献するとともに、地球環境保全に資するとしている。

IHG、マレーシア初ブランドのvocoを来年末にクチンに開業

【クアラルンプール】 英国系IHGホテルズ&リゾーツは17日、サラワク州にホテル「voco(ボコ)クチン」を2026年末に開業すると発表した。同社プレミアムブランドのvocoのマレーシア初進出になる。

同ホテルは全321室で、クチンの中心部から車で15分、クチン国際空港から5分の場所に位置する。1,300人収容可能な宴会場を含め2,400平方メートル以上の会議室なども備える。

vocoは、2018年に創設されたブランドで、2022年開業のシンガポール、翌年開業の日本・大阪をはじめ、現在25カ国超で100軒のホテルを展開し、急成長している。今年後半にはタイにも初進出が予定されており、さらに95軒の計画を含め東南アジアなどでの事業拡大を目指していく。
(ビジネス・トゥデー、エッジ、6月19日)

アンワル首相の支持率が55%に上昇=ムルデカ調査

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 世論調査機関、ムルデカ・センターが発表した最新調査によると、経済を中心とした与党政権の政策に対する批判を背景に、アンワル・イブラヒム首相個人に対する支持率は2カ月前の調査から2ポイント上がって55%となった。不支持は44%から36%に下がった。

同調査は5月12日から23日にかけて行われ、18歳以上の男女1,208人が回答した。アンワル首相の支持率は、政権発足直後の2022年12月は68%を記録したが、その後低下し、2024年6月調査では43%まで下落し不支持が支持を上回ったが、その後緩やかな回復基調を続けている。

国の方向性については、「正しい方向に向かっている」との回答は前回の36%から43%に上昇した。一方、「誤った方向に向かっている」は55%から50%に低下した。「誤った方向・・・」と回答した理由については、53%が「経済の懸念」を挙げ、これに「不十分で非効率的な行政」(8%)、「政治的不安定」(7%)が続いた。

回答者が挙げた国の最大の問題点は「経済の懸念」(73%)で、「民族問題」や「治安」(いずれも3%)を大きく上回った。懸念する要素としては「インフレ」が33%でトップとなり、これに「経済成長の促進」、「汚職」が続いた。

民族別でみると華人は「正しい方向・・・」が「誤った方向・・・」を上回ったが、マレー系、インド系はいずれも「誤った方向・・・」が「正しい方向・・・」を上回っており、中でもインド系は68%が「誤った方向・・・」と答えた。年齢層別でみると、18―30歳の若い層は「正しい方向・・・」が「誤った方向・・・」を上回ったが、31歳以上の高年齢層は「誤った方向・・・」が「正しい方向・・・」を上回った。

連邦政府のパフォーマンスについては、「満足」は前回の47%から50%に上昇し、「不満」は51%から48%に下がった。ムルデカ・センターは、肯定的な評価と否定的な評価の差が小さいのは、生活費の高騰に対する根強い懸念と、間もなく実施される補助金削減への不安が主な要因となっていると分析した。

サービス税対象拡大と売上税改定、新規事業者登録は8月から

【クアラルンプール】 7月1日付で施行されるサービス税の適用対象拡大と売上税の改定について財務省は、新規に当局への登録が必要な事業者の申請は8月1日から受け付けると、エックス(旧ツイッター)への投稿で発表した。

すでに登録している事業者の場合、新たなサービス項目の追加および売上税改定の適用申請は6月24日から受け付ける。売上税の率は必需品は従来どおりだが、必需品以外の品目は5%か10%の率になる。サービス税の対象拡大では、リース・レンタル、建設、金融、プライベートヘルスケア(自己負担や民間医療保険などを利用して受ける医療サービス)、教育、美容の各サービスが加えられる。

ジョハン・マハムード財務事務次官によれば、今回の税制措置で今年の売上税・サービス税収入は50億リンギ、来年は100億リンギの増加が見込める。
(ザ・スター電子版、エッジ、バイブズ・ドットコム、6月22日)

売上サービス税の適用拡大、自動車販売への影響は限定的

【クアラルンプール】 CIMBセキュリティーズは、7月施行の売上・サービス税(SST)の適用対象拡大の自動車販売への影響は限定的との見解を示した。自動車販売には既に10%の売上税が課せられており、整備・修理も8%のサービス税の対象だ。

ショールーム賃貸料の上昇といった間接的影響は考えられるが、影響はごくわずかだという。しかし下半期に予定されているレギュラーガソリン補助の合理化が消費者心理に影響する可能性はあり、通年の新車販売台数は昨年比7%減の76万台が予想されるという。マレーシア自動車協会は4.5%減の78万台を予想している。

CIMBは、燃料補助の合理化で電気自動車(EV)の販売に勢いがつくとみている。第1四半期のEVの販売台数は前年同期の2倍近い5,394台。EVにハイブリッド車を加えた同期のシェアは7.3%。輸入電気自動車に対する関税100%免税措置は今年末で期限を迎える。
(ベルナマ通信、エッジ、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、6月20日)

マレーシアで今年初の新型コロナ関連の死者、感染者は14%増

【クアラルンプール】 保健省は、2025年第24疫学週(6月8日ー6月14日)に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の死者が報告されたと発表した。マレーシアで新型関連死が報告されたのは2024年5月26日以来。2024年の死者は57人だった。

死者は糖尿病や心臓病などの基礎疾患があり、ワクチンの2回目の追加接種を受けていなかった。重症化して集中治療室に収用された患者数は6人で、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心臓病、ダウン症候群などの基礎疾患(ハイリスクグループ)を持っていた。うち4人はすでに退院し、2人は一般病棟に移っているという。

一方、感染者数は前週から14%増加して3,379人となった。累計感染者数は2万1,738人に達し、週平均で約900人となっている。

保健省は予防対策として、高齢者、基礎疾患のある人、免疫不全の青少年、妊婦、医療従事者などのハイリスクグループに対し、COVID-19ワクチンの追加接種を推奨している。また18歳以上は任意でワクチン接種を受けることができる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、マレー・メイル、6月19日)

KLIAエアロトレイン、7月1日に運行再開へ

【セパン】 老朽化に伴う改修工事のため運休していたクアラルンプール国際空港第1ターミナル(KLIA1)のメインターミナルとサテライトターミナルを結ぶKLIAエアロトレイン・サービスは、7月1日午前10時に運行を再開する予定だ。

アンソニー・ロ―ク運輸相はメディア向け説明会の中で、システム試験の最終段階に入ったと述べ、空港運営のマレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)の職員と緊急対応チームが参加する緊急対応計画(ERP)訓練もすでに実施したと公表。「今後数日間にわたり最終テストを数回実施する。中でも最も重要なのは緊急事態発生時の対応を確認するための緊急対応訓練だ」と述べた。

新しいエアロトレイン車両は3両編成で、1回の運行で270人の乗客を運ぶことができる。2編成の列車を交互に運行し、3編成目は予備となる。オフピーク(深夜零時―午前5時)は1編成のみの運行となる。

1998年に建設されたエアロトレインは老朽化のために度々故障を起こしたことから改修工事が行われていたが、工事は再三にわたって遅延。運行は2023年3月から停止されていた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、6月21日)

エネルギー委、7月からの新電気料金体系を発表

【プトラジャヤ】 エネルギー委員会は20日、マレー半島部における今年7月1日から2027年12月までの第4次規制期間(RP4)の新たな電気料金体系を発表。電圧使用量に基づいて消費者区分を家庭用と非家庭用に分類したことなどで、電力消費量が1,000キロワット時(kWh)以下の家庭消費者は値上げの影響を受けないとしている。

今回、新たな消費者区分として、電圧使用量に基づいて低電圧、中電圧、高電圧の3分類が設定された。低電圧とは1,000kWh以下で、一般家庭や小規模商業などが該当する。

加えて家庭用と、200kWh以下の非家庭用には、省エネインセンティブ(EEI)が導入され、オフピーク時間帯に電気を利用すると、ピーク時に比べて電気料金を節約できる。オフピーク時間帯は、土日の終日、および月―金曜の10―14時に拡大された。

一方、基本料金は1キロワット時(kWh)あたり45.40センとなり、昨年12月の45.62センから引き下げられた。前期間のRP3の39.95センと比較すると、値上げではあるものの消費者区分の導入などで全体としては最大19%の削減になるという。

また従来は、基本料金に加え、燃料価格の変動に合わせて料金を調整する不均衡価格転嫁(ICPT)メカニズムにより、半年に1度料金が調整されてきたが、今後は新しい自動燃料調整(AFA)メカニズムを導入。AFAは市場燃料価格と為替レートに基づいて自動的に調整されるもので、今後は毎月見直されることになる。

そのほか、最貧困層世帯には毎月40リンギの補助金が提供される。また農業、水道、下水道、鉄道事業者向けには特定の料金が設定され、登録済みの高等教育機関、学校、福祉施設、礼拝所には10%の割引が適用される。

エネルギー委員会は、2,360万人以上の家庭ユーザーが、より公平で累進的な電気料金の恩恵を受けるとしている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、マレーシアン・リザーブ、ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、6月20日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第902回:中小企業の両利き経営(5)両利きと、長期的・地球的視点

第902回:中小企業の両利き経営(5)両利きと、長期的・地球的視点

前回は、中小企業の多くが深化を好むというお話でした。しかし、特定の技術に依存し、深化に特化することは、イノベーションと研究開発が牽引する産業において、時代の変化への対応を困難にし、競争優位性を低下させる可能性があります。今日、産業構造の転換により、ニーズの細分化、複雑化、予測不可能性が高まる中、中小企業にとって、下請け構造からの脱却や、既存のネットワークにとどまらない幅広い情報源の活用、技術シーズを機動的に新規事業に繋げるイノベーション活動がますます重要になっています。さらに、コロナ禍を契機としたICT化の波や、持続可能な開発目標(SDGs)を契機とした地球環境意識の高まりは、企業経営者に変化を迫り、従来のやり方に固執することのリスクを高めています。さらに、リスク分散、すなわちポートフォリオ投資の観点からは、国内で多くのイノベーション活動が展開されることが必要です。言い換えれば、両利きであることが一企業の短期的な売上に直接つながらないとしても、国全体、あるいは世界規模で取り組むことが合理的な場合があると考えられます。

さらに、両利きであることは中小企業にとって短期的には有益とは考えられないとしても、長期的には有益となる場合があります。深化と探索を組み合わせることで、中小企業は既成概念にとらわれず、短期的ではなく長期的な視点でイノベーションを起こし、最終的にプラスの結果を生み出す可能性があります。これは、両利きであることが、深化と探索という相反する要求を統合する上で重要な役割を果たすためです。両利きの中小企業は、斬新なアイデア、製品、プロセスを開発する能力を失うことなく、深化と探索を管理し、効率性を向上させる能力を持っています。

こうした中小企業は、財務構造に関する重要な意思決定を迅速かつ柔軟に行うことができます。例えば、国際化を通じて新たな市場を開拓したり、新製品や新ブランドを立ち上げたりすることができます。したがって、中小企業が両利きを達成できる方法を見つけることは、中小企業の回復力を高め、マクロ的または長期的な視点から、中小企業、国、そして世界が納得できる解決策に到達するために役立つ可能性があります。そこで、次回からは、中小企業が両利きを達成するための条件について検討します。

 

Kokubun, K. (2025). Digitalization, Open Innovation, Ambidexterity, and Green Innovation in Small and Medium-Sized Enterprises: A Narrative Review and New Perspectives. Preprints. https://doi.org/10.20944/preprints202504.0009.v1

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

JS-SEZは今後の日馬関係に戦略的に重要=アンワル首相

【クアラルンプール】 ジョホール・シンガポール経済特区(JS-SEZ)に日本からの関心が高まっていることに関し、アンワル・イブラヒム首相はマレーシアとシンガポールの強固な基盤に基づく信頼性を強調。日本からの投資を通じ「JS-SEZは今後の日本とマレーシアにとって戦略的にますます重要になる」との見方を示した。

アンワル首相は19日、ジョホール州で開かれたフォーラム「メディニ・ジョホール2025」で発言した。同フォーラムはイスカンダル・インベストメント(IIB)などが主催した。

またフォーラムに登壇した四方敬之 駐マレーシア日本大使は、今後の両国関係においてグリーンテクノロジー、交通インフラ、教育交流の3つの主要分野の重要性を指摘。同州で急増するデータセンターに付随するエネルギー関連での投資や、問題化している交通渋滞解消に向けた協力、共同学術プログラムの創設などの可能性について語った。

州政府傘下の投資誘致機関「インベスト・ジョホール」のナタザ・ハリス最高経営責任者(CEO)は「日本からの投資に必要な枠組みと支援体制は整っている」と述べ、より多くの投資獲得に向け対策を強化していくとした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、フリー・マレーシア・トゥデー、6月19日)