IHH子会社 、第一三共に対する損害賠償請求額を約10倍に

【クアラルンプール=アジアインフォネット】  世界最大級の病院グループであるIHHヘルスケアのシンガポール子会社、ノーザンTKベンチャー(NTK)は、東京地方裁判所に起こしていた第一三共株式会社(本社・東京都中央区)に対する損害賠償請求額を200億円から約2,000億円に増額したと明らかにした。

同訴訟は、NTKによる印フォルティス・ヘルスケア(FHL)およびその子会社であるフォルティス・マラー・ホスピタルズ(FMHL)の公開買付による株式取得手続きを第一三共が妨害したとして、NTKが損害賠償の支払いを求めていたもの。

NTKは、外部専門家であるオズボーン・パートナーズによって作成された3つの仮説シナリオに基づく専門家報告書を東京地方裁判所に提出しており、新たな請求額は報告書のシナリオの最大額1,093億インドルピー(約57億リンギ、約1,998億円)に近い金額となる。

IHHは2018年、FHLが実施した投資誘致の入札で落札者となった。NTKは、インドの法令に基づきFHLに対する公開買付を実施することが義務付けられたが、第一三共がこれを不当に妨害し阻止したことでNTKは多大な損害を被ったと主張している。

海底トンネルに替えて架橋計画を検討=ペナン州政府

【ジョージタウン】 ペナン州政府は、本土と島部と結ぶ第3のルートとしてこれまで進めてきた海底トンネル計画を破棄して、第3橋の建設に切り替えることを検討している。同州インフラ・交通・デジタル委員会のザイリル・キル・ジョハリ議長(国政の閣僚に相当)が州議会演説で明らかにした。

ザイリル氏によると、架橋計画が実現すれば、島北部のプラウ・ティクスと本土側のバガン・アジャムを結ぶ可能性が高いという。橋の建設案やその他の代替案を含む実現可能性調査は2023年にすでに完了しており、新たな設計の調査がまもなく完了し、最終設計が確定する予定で、調査終了後、交通影響評価などが実施される。

海底トンネルプロジェクトは、島部ジョージタウン―本土側バターワース間全長7.2キロメートルをトンネルで結ぶというもので、ペナン州交通マスタープラン(PTMP)の一環として2011年に初めて提起された。しかし業者を巡る汚職疑惑の浮上や巨額な建設費(約63億リンギ)、海洋環境への影響懸念などから長らく進展せず、このため当初から建設費が海底トンネルに比べて半分程度と安い架橋計画への変更を期待する声も上がっていた。
(ザ・スター電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、5月21日)

日本企業のマレーシアへの関心に高まり、テレビ番組で四方大使

【クアラルンプール】 四方敬之駐マレーシア大使はベルナマテレビの番組で、マレーシア参入に関心を持つ日本企業が増えており、特にサバ州におけるグリーン投資やサラワク州の水力発電能力への関心に高まりがみられると述べた。

四方氏は「日本企業は水素、アンモニア利用、炭素回収・貯留など最新技術をマレーシアに持ち込むことで貢献できる」とした。複数の日本企業が東南アジア諸国連合(ASEAN)国際送電網構想、とくにサラワク州とジョホール州間の海底ケーブルへの投資に意欲を示している。データセンター投資を検討している企業もあるという。

飲食市場も日本企業には魅力ある分野で、マレーシアにはすでに日本食レストランが推定2,000店あるが、日本を訪問するマレーシア人観光客が増えており、マレーシアの日本食レストランに対し、より高い期待を持つようになっているという。

四方氏はハラル(イスラムの戒律に則った)食品にも言及。マレーシアはハラル認証制度を確立しているため食品関連の投資誘致につながっていると述べ、一例としてハラル認証を受けた味の素マレーシアを挙げた。
(エッジ、5月21日)

ペナン州のマグロ水揚げ量が昨年倍増、加工拠点化の可能性も

【ジョージタウン】 ペナン州のマグロ水揚げ量は2024年に431トン、金額にして776万リンギに上り、前年比で2倍以上に増加した。2023年のマグロ水揚げ量は177トン、金額は319万リンギだった。

州農業技術・食料安全保障・協同組合開発委員会のファミ・ザイノル議長(国政の閣僚に相当)は州議会演説で、「同州におけるマグロ漁業の大きな可能性を浮き彫りにしている」と強調。「ペナン州は国内市場だけでなく国際市場にも対応できる、マグロの水揚げと加工の主要拠点となる能力を秘めている」とした上で、「マグロ漁業の発展を促進するため、施設、インフラ、物流、そして総合的な支援サービスを強化していく」と述べた。

ペナン州は新たなマグロ水揚げ専用港の設置場所を複数検討しており、ファミ氏は「マグロ漁業は雇用機会を創出する。世界市場向けに高品質な水産物を生産できるハイテク・マグロ加工センターなどの関連産業を育成することで、州経済にプラスの影響を与えることが期待される」と述べた。
(マレー・メイル、5月21日)

新デザインのカード型運転免許証を発表=道路交通局

【ジョホールバル】 道路交通局(JPJ)は21日、セキュリティを強化した新デザインのカード型の運転免許証(LMM)を発表した。

新免許証は表面にムルデカ広場にある「スルタン・アブドル・サマド・ビル (旧連邦事務局ビル)」、裏面にはイスタナ・ネガラと花が描かれている。カードの改ざんや偽造を防止し、最長10年間使用できる仕様になっている。すでに21日から段階的に全国で配布が始まっているが、デザインの切り替えに伴い発行に時間がかかる場合があるという。

マレーシアは2023年からデジタル免許証も導入しており、マレーシア国民の免許証は原則デジタル版のみとなる。ただし、旅行などで海外で運転する際は国際運転免許証と、発行国のカード型の免許証の両方の携帯を必要とする国が多いため、海外に渡航するマレーシア国民と、マレーシア在住の外国人向けに引き続きカード型の免許証が発行される。

またJPJでは現在、全国で248ある自動車教習所の運営のあり方や試験システム、教習所の新規設立などに関するガイドラインの見直しを進めている。アエディ・ファドリ・ラムリ局長によると、セランゴール州クランのような人口密集地では教習所を卒業するまで最大3カ月かかる場合があり、免許取得が1カ月程度で可能になるよう取り組んでいくという。
(ビジネス・トゥデー、ザ・スター、ベルナマ通信、5月21日)

【イスラム金融の基礎知識】第568回 比・ダバオ市、イスラム金融普及のためマレーシア領事館と連携

第568回 比・ダバオ市、イスラム金融普及のためマレーシア領事館と連携

Q: ダバオ市でイスラム金融のフォーラムが開催されたようですが?

A: フィリピンでは5月12日に中間選挙が実施された。6年に1度の大統領選挙の中間に行われる各種の選挙の総称で、マルコス大統領派とドゥテルテ前大統領派の対立という構図で選挙戦が展開された。その中で注目されたが、オランダのハーグで身柄を拘束されているドゥテルテ前大統領が、古巣で人口およそ180万人の国内第3の都市、ダバオ市長選挙に立候補、当選を確実なものとしたことだろう。現職で息子のセバスチャン・ドゥテルテ氏も副市長選に当選(市長選挙と副市長選挙は別々に行われる)、国外の父に代わって行政の運営に当たるとみられている。

中間選挙が明けた5月15日、在ダバオ・マレーシア総領事館とダバオ市役所、市イスラム事務局、および地元の複数のイスラム団体が共同で、イスラム金融のフォーラムを開催した。主な出席者は地元企業やムスリム起業家たちで、イスラム金融の基本的な仕組みや融資のあり方などの説明が行われた。

ダバオ市は、ハラル条例を施行するとともにハラル産業評議会、さらには市役所内にイスラム事務局を設置している。いわば、ハラル産業を制度化したフィリピンでも数少ない都市の一つであることを、ダバオ市は標榜している。これは、セバスチャン・ドゥテルテの政策である「ムスリム・コミュニティに平等な経済的機会を与え、これを促進する」という考えに基づくものだ。

出席したガブリエル・ナカン事務局長は、「フォーラム参加者にはダバオ市がハラル産業振興の一環としてイスラム金融を推進していると理解してもらえただろう」と語った。またサーレフ領事は、ダバオ市でイスラム金融が導入されることを受けて、「イスラム金融を経験する機会は近いだろう」と語った。また、こうした取り組みを通じて、ダバオ市がフィリピンにおけるハラル産業の中心となることに期待を示した。

 

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。

フィッチグループのBMI、マレーシアGDP成長予想を下方修正

【クアラルンプール】 フィッチ・ソリューションズ傘下の調査会社、BMIはマレーシアの今年の国内総生産(GDP)増加率予想を5.0%から4.2%へ下方修正した。政府目標は4.5-5.5%。輸出減の懸念と投資の冷え込みが理由だ。

輸出は2、3月に増加したが、米政府の関税を回避するため電気・電子機器メーカーが前倒し輸出した結果で、輸出増の傾向が続くことはないとBMIは見ている。対米輸出の20%近くは半導体が占めており、これがマレーシアの脆弱性だという。
BMIは投資の減速も予想している。米トランプ政権の政策は世界の直接投資に影響し、投資家はデータセンター投資を減らすという。

マレーシア統計局によれば、建設投資の増加率は昨年第4四半期の23.1%(前年同期比)に対し今年第1四半期は16.6%に減速した。この傾向は続く見通しだという。
(ビジネス・トゥデー、マレー・メイル、5月20日)

「キャンパススタイル」マレーシア1号店、開業1周年で記念企画

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 コクヨ(本社・大阪市)の直営店「キャンパススタイル(Campus STYLE)」マレーシア1号店がこのほど開業1周年を迎えることを受け、5月23日―6月30日に「オープン1周年記念企画」を実施すると発表した。

マレーシア1号店は2024年5月にセランゴール州ペタリンジャヤの「スターリング・モール」内にオープン。1年間で1万5,000人以上が来店した。女性顧客が多く、「イラストレーターノート」などのかわいいデザインのものや、マレーシアの絶滅危惧種であるマレーバクが描かれている「キャンパスノート・インデンジャード アニマルズデザイン」、機能的なペンケース「タカシャ ハコハコ」や「キャンパス スタンプマーカーペン」などが人気商品となっているという。

「オープン1周年記念企画」では、一定金額以上の購入者を対象に「オリジナルキーチェーン、オリジナルステッカー、キャンパスノート」セットをプレゼントする。またカラーや柄を揃えて文房具を購入する人が多いことから、プレゼントにも最適な「カラーコーディネート文房具セット」を用意した。

ドンキ、マレーシア産品の日本進出支援で国内取引物価省と提携

【クアラルンプール】 国内取引物価省(KPDN)は、日系ディスカウントストア「JONETZ by DON DON DONKI」(ドンキ)と提携し、マレーシア産品の日本市場進出を支援するプログラムを展開する。

プログラム名は「マレーシア産、日本の味」で、19日からドンキの首都圏クランバレーの4店舗でスタートした。地元の5社・ブランドによる、在庫保管単位(SKU)で計281品目が販売されている。今年8月には日本国内の同系列の「ドン・キホーテ」3店舗で、19社・ブランドの70品目(SKU)を加えた拡大展開が予定されている。

ドンキの親会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは日本国内で640店舗、アジアだけでも50店舗を展開。KPDNの貿易・流通・ビジネス部門のシニアディレクター、ロハイジ・バハリ氏は「ドンキの存在は、マレーシア企業にとって海外市場進出の戦略的な機会につながる」とし、単に商品を紹介して認知度を高めるだけでなく、日本人に好まれる包装や品質などを参考にしながら、生産力の向上を図るという。
(ベルナマ通信、5月19日)

三井化学と山九、クラン港にコンテナ輸送ハブ拠点開設

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 三井化学(本社・東京都中央区)は20日、山九(同)と協業し、セランゴール州のクラン港に海上コンテナ輸送用の物流ハブ拠点を設置したと発表した。

新物流拠点は4月から本格稼働。化学産業にとって重要な、危険品や温度管理品のコンテナを長期保管できる機能に加え、貨物をデバンニング(コンテナを開けてから貨物を荷下ろしすること)して倉庫に保管したのちに第3国へ再輸出する機能もあり、東南アジア・インド・欧州地区のさまざまなニーズなどにも柔軟に対応可能という。

新物流拠点に関しては、ウクライナ情勢などによる物流の不安定性への懸念を背景に、国土交通省が2022年度から実施した、国際物流の多元化に向けた実証実験に両社で参加。従来の日本向けの製品配送をメインとした海外物流拠点ではなく、主に日本からインド・中東・欧州向け輸出の「中継貿易拠点」としての機能と輸送ルート開発に取り組んでいた。