あらゆる独占契約を見直し=アンワル首相

【ジェッダ/クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アンワル・イブラヒム首相は、政府が現在のシステム上に存在するあらゆる独占形態を見直し、国民が公正でより良いサービスを享受できるようにすると言明した。

サウジアラビアを訪問中のアンワル首相は、電子化自動車検査センター(Puspakom)の独占撤廃に関連して記者団から質問を受け、「独占問題について公正な評価が行われるよう、独占を許可している根拠についてすべての管轄省庁に調査を求めている」と言明。「透明性のある経済発展の原則は、既得権益を満たすための時代遅れのものから脱し、何らかの転換を行うことを保証するものだ」と述べ、Puspakom以外の独占状態についてもメスを入れる考えを示した。

その上でアンワル首相は、「ブミプトラ(マレー人と先住民の総称)企業を支援するという政府の約束は守るが、ブミプトラ企業間の公正な競争を可能にするために、透明性をもって行われなければならない」と述べた。

アンワル首相の発言に先立ち、アンソニー・ローク運輸相は、2024年8月31日にPuspakomとの契約が満了した後、資格のあるすべての関係者が車検サービスに参入できるようにすることを決定したと発表。民間参入に備えて、遅くとも2024年第1四半期に許認可手続きを開始する考えを示していた。

AMDマレーシアがペナン拠点を拡張、オフィスとラボ施設を新設

【ジョージタウン】  米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のマレーシア現地法人AMDグローバル・サービシーズ(M)は23日、ペナン州バヤンレパス拠点を拡張すると発表した。

ペナン開発公社(PDC)がバヤンレパスで建設中の2億リンギの「GBSバイ・ザ・シー」ビルの約70%にあたる約20万9,000平方フィートのスペースにオフィスとラボ施設を構え、グローバル・ビジネス・サービス(GBS)とエンジニアリング部門の人員を増強する。「GBSバイ・ザ・シー」は2024年に完成予定の9階建てのオフィスビルで、賃貸可能床面積は約30万平方フィート。

AMDマレーシアのデビンダー・クマール副社長は発表会で、ペナンは50年以上にわたって、半導体エコシステムおよびAMDの先端テクノロジー製品の組立・テストにおいて重要な役割を果たしてきたとし、今回の投資やペナン州政府の支援を受け、AMDはペナンでイノベーションを推進し、科学研究、データセンター、通信を発展させる新しい機能を提供することを約束すると述べた。

発表会に参加したチョウ・コンヨウ州首相は、ペナンではGBSを含むデジタルエコノミー産業が増加しており、ペナンのサービス部門の投資額(認可ベース)は、過去2年間で州投資総額の11%を占める100億リンギに達したと言明。州政府はペナン州政府系投資会社インベスト・ペナンやPDCとともにAMDのペナンでの事業拡大を支援していくと述べた。

AMDはペナンへの投資を拡大する方針で、AMDと中国・通富微電子の合弁会社であるTF-AMDマイクロエレクトロニクス(TFME)も昨年6月、約20億リンギを投じてバトゥカワン工業団地に製造工場を新設すると発表している。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月24日、マレー・メイル、エッジ、3月23日)

「ハラル産業マスタープラン2030」がスタート、産業強化図る

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 ハラル(イスラムの戒律に則った)産業の強化を図るための「ハラル産業マスタープラン2030(HIMP2030)」が23日にスタート。テンク・ザフルル通産相はマレーシアのハラル(イスラムの戒律に則った)産業が2030年までに1,132億米ドル(5,003.4億リンギ)規模まで成長し、国内総生産(GDP)に占める割合が2025年までに8.1%に拡大するとの見通しを示した。

HIMP 2030のテーマは「目立って可視化されグローバル化されたハラル・マレーシア」で、▽ハラルに配慮した政策や法律の強化▽国内ハラル製品・サービスのための大きな新市場空間の創出▽グローバルなニーズに対応できるハラル専門家やプロフェッショナルの確保▽質の高い統合的なインフラ整備の強化▽ソート・リーダーシップの育成▽ハラル・チャンピオンの輩出▽ハラル産業におけるブミプトラ(マレー人と先住民の総称)の競争力強化ーーの7項目の戦略的推進事項と合計23のイニシアチブからなる。

これらの政策は▽強固で多様な国内ハラル産業育成▽徹底したシャリア(イスラム法)遵守▽マレーシアにおけるビジネスのしやすさの向上▽競争力のあるビジネス・エコシステム育成▽「ハラル・マレーシア」の世界への発信ーーの5つの主要目標成果によって推進される。

テンク・ザフルル通産相は「通産省は世界のハラル市場における主要なプレーヤーとしてのマレーシアの地位を高め、世界全体で20億人に上るムスリム人口を活用するために、ハラル・エコシステムのすべての要素を強化することに全力を尽くす」と言明。通産省と下部機関は、ハラル産業を特に中小企業にとって有利かつ競争力のある産業として位置づけるための活動をすでに開始していると述べた。
HIMP2030の開始宣言を行ったアハマド・ザヒド副首相は、ハラル証明書発行の迅速化に向け新たなメカニズムやプロセスを導入する必要があると指摘。現状では官僚機構などの制約のために発行に約9カ月かかっていると述べた。

通産省によると、2022年のマレーシアのハラル製品輸出額は594.6億リンギで、前年から231.6億リンギ、率にして63.8%の大幅増となった。セクター別では食品・飲料が引き続きトップとなり、総輸出額は278.4億リンギで、ハラル輸出全体の46.8%を占めた。これに▽ハラル原料(233.5億リンギ)▽化粧品・パーソナルケア商品(34.9億リンギ)▽パーム油派生商品(27.9億リンギ)▽工業用化学品(12.7億リンギ)▽医薬品(7.2億リンギ)ーーが続いた。

インフレ抑制のため金融引き締めを、IMFが提言

【クアラルンプール】 国際通貨基金(IMF)のマレーシア訪問団を率いるラミン・リー氏は、インフレを抑えるために現在の緩和的なスタンスを中立に戻して、金融政策をさらに引き締めるべきだと指摘した。

3月8日から20日までマレーシアに滞在したリー氏は、外部からの逆風により、2023年のマレーシアの経済成長率が約4.5%に減速すると予想。その中にあって、インフレ率は約3.25%で上昇し続けると予測されるとし、プラスの需給ギャップと需要側の圧力の高まりからコア・インフレ率が高止まりする可能性があると指摘した。

その上でリー氏は、「急速に変化する非常に不確実な環境では、マレーシア中央銀行バンク・ネガラは政策決定の根拠を引き続き明確に伝えることが重要」と指摘。「金利が上昇し経済成長の勢いが弱まっている現在の環境下では、家計や企業のバランスシートの監視を強化する必要がある。マクロプルーデンス政策(金融システム全体のリスクの把握を重視し安定を図る政策)のツールキットを拡大することは、こうした取り組みをサポートするのに役立つ。為替レートの柔軟性は、外的ショックに対する最前線の防衛ラインとして必要となる」と述べた。

マレーシア中銀は長く3.25%で維持していた翌日物政策金利(OPR)を2019年5月、2020年1月、3月、5月、7月に引き下げ、16年ぶりの水準である1.75%としていたが、利上げに転じ2022年5月、7月、9月、11月に利上げを実施して2.75%とし、その後は維持していた。

リー氏はまた、第12次マレーシア計画(12MP)と2023年度予算で設定された協調的な政策課題の実施に向けて前進する時が来たと指摘。これらの政策は広範な生産性推進と包括的な成長、気候変動への対処、デジタル化促進、ガバナンス強化、腐敗防止の強化に適切に焦点を当てていると評価した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月21日)

新型コロナで17万6千人の起業家が廃業=起業家開発相

【コタキナバル】 イーウォン・ベネディック起業家開発協同組合相は、新型コロナウイルス「Covid-19」パンデミックの影響で事業が立ち行かなくなったために廃業に追い込まれた起業家がマレーシア全土で17万6,000人に上ったと明らかにした。
ベネディック大臣は、2020ー2022年に廃業した起業家は17万6,426人だったとした上で、パンデミックがビジネスに大きな打撃を与え、多くの起業家が景気後退の中で会社を存続させようと奮闘していると強調。政府は起業家が事業再開したり他の事業で再出発することを後押ししていると述べ、「政府は助成金や融資、職業訓練、起業指導などの起業家支援を行っている」とした上で、厳しい状況に直面する起業家や協同組合が競争力を維持していくことを最終目標に掲げていると述べた。
また起業家開発協同組合省が下部機関やプログラムを紹介した「起業家精神プログラム2023」と題する冊子を作成したことを公表した。冊子はダウンロード(https://online.flippingbook.com/view/726095416/)可能。

インベストKLの投資誘致額、昨年は過去最高の27.9億リンギ

【クアラルンプール】 クアラルンプール(KL)における投資誘致活動を行っているインベストKLは16日、昨年の投資誘致額が前年比13%増の27億9,000万リンギとなり、過去最高となったと発表した。

外国直接投資(FDI)が貢献し、製薬会社の米アボットや、化粧品の米エスティローダー、医薬品の米バクスターなど13社のグローバル拠点設立への投資を獲得したことで、2,805人の熟練労働者向けの雇用を創出した。

2011年以降の累計投資誘致額は215億2,000万リンギとなった。大手多国籍企業や急成長企業120社がKLにグローバル拠点を設立し、1万9,000人分の高度スキルを有する幹部クラスの雇用が創出された。うち94%の平均月給は1万3,000リンギとなっているという。

今年の目標についてインベストKLは、20億リンギに設定していると説明。デジタル・エコノミーやフィンテック(金融技術)サイバーセキュリティなど、より影響や価値が高い投資を誘致するとした。昨年の投資誘致額よりも目標を低く設定した理由については、2030年までに年間投資誘致額を50億リンギに引き上げることを目標に掲げており、その最低基準として20億リンギという数字を割り出したと説明した。
(ザ・サン、ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月17日、エッジ、3月16日)

銀行システムは健全、米銀破綻受け中銀が安全性保証の声明

【クアラルンプール】 マレーシア中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は米銀の破綻とクレディ・スイスの経営不安に関する報道機関の取材に対し、マレーシアの銀行は最近破綻した米国の2銀行と直接取引はなく、間接的に損失を被る可能性もごくわずかと回答した。

米国ではシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行が経営破綻し、これがスイスに飛び火し、金融大手クレディ・スイスの経営不安が広がり、同行はスイス中央銀行から最大で7兆1,000億円相当を調達すると発表した。

BNMは「急な事態に耐えられるかの健全性審査を銀行に対し定期に行っており、耐えうることを確認している。不都合な事態になっても銀行は企業、一般世帯への貸し付けを継続できる」とした。健全性審査の結果は年2回公表の金融安定化報告に掲載されている

格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスによれば、ほとんどのアジア太平洋の銀行は、破綻した米の2銀行と直接の取引はなく、ごく少数の銀行が少額の損失を被る可能性があるだけという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月17日)

米SVBの経営破綻、マレーシアへの影響はほぼゼロ

【クアラルンプール】 米国のシリコンバレー銀行(SVB)が10日経営破綻した。ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)の13日の取引ではろうばい売りが見られたが、マラッカ証券のケネス・リョン上級アナリストは、ブルサやマレーシア企業への影響はわずか、あるいはゼロだとの見解を示した。ラフィジ・ラムリ経済相もツイッターへの投稿で、SVBに預金しているマレーシア企業はなく、マレーシアへの直接的な影響はないと述べた。

SVBの破綻は過去10年余りで最大の銀行破綻と言われ、株式市場への影響が懸念されている。破綻は預金の取り付け騒ぎと増資の失敗による流動性不足が原因。
リョン氏は「銀行がこの件をきっかけに貸し付けに慎重になるといった間接的影響は考えられる」と述べた。

楽天トレードのトン・パクレン調査担当副社長もブルサへの影響はほとんどないとの意見で「マレーシアと米国の銀行システムは異なり、マレーシアの方が厳格なのでリスクは低い。13日のろうばい売りは反射的なもので、マレーシアへの影響はないと分かれば、買い戻しに来る」と語った。
(ベルナマ通信、3月14日)

プロトンがタンジョンマリム工場に新ライン、部品輸入削減へ

【クアラルンプール】 国民車メーカー、プロトン・ホールディングスは、ペラ州タンジョン・マリム工場に1億4,000万リンギを投じ新スタンピング(プレス)ラインを導入したと発表した。

プロトンによると、スタンピングラインとしては国内最大級で、最大2,500トンの加圧能力を有し、50種類の部品を生産できる。人工知能(AI)システム連動カメラによる材料の正確な位置決めやOEM(相手先ブランド製造)企業による遠隔サポートなど、インダストリー4.0(IR4.0)技術を取り入れ、工程の98%を自動化。材料の移動にもロボット6台を活用するため、高効率で人的ミスも少ないという。部品の年間輸入量を11万5,000個削減し、サプライチェーン混乱の影響を軽減できるとしている。

ロスラン・アブドラ副最高経営責任者(CEO)は、新ラインの立ち上げは、プロトンの自動車生産において大きな付加価値となり、また部品の国内調達を増やすことは国内自動車エコシステムにとって重要で、海外への資金流出を減らすのにも役立つと述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月15日、ポールタン、ベルナマ通信、3月14日、プロトン発表資料)

中銀バンクネガラ、政策金利を2.75%で据え置き

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は9日、定例金融政策会合(MPC)を開催し、政策金利である翌日物政策金利(OPR)を2.75%で維持することを決定した。2022年5月から段階的に引き上げていたが、2会合連続での据え置きとなった。

BNMは声明の中で、金融政策のスタンスにおいて現在の金利水準は依然として緩和的であり、経済成長を下支えしているとした上で、金融政策が経済に及ぼす影響のタイムラグを考慮して、これまで行ってきた利上げの影響を引き続き評価していくと強調。今後もインフレ率や経済成長のリスクとのバランスを考慮して金利を調整するとした。

国内経済については、昨年通年の経済成長率が8.7%となり、力強い成長を遂げたと指摘。今年の成長率は、前年が高い成長率となったことや、世界経済の減速の影響も受けて緩やかな水準に止まる見込みだとした。その上で、今年も好調な内需が成長を牽引し、雇用や所得の前向きな見通しからの下支えも見込めると予想。その他には、外国人観光客増加による観光産業の成長や、複数年にわたって実施されている大型プロジェクトによる投資活動の下支え、先ごろ政府が発表した今年度予算案に盛り込まれたプロジェクトの実施が上方リスクとなるとした一方で、世界経済の成長が予想を下回る可能性、積極的な金融引き締めなどが成長リスクとなるとした。またインフレ率については、今年は需要とコスト圧力の高まりにより高い状態が続くが、上昇率は穏やかになるとの見込みを示した。

世界経済についてBNMは、中国経済の再開や主要経済国の成長率が予想を上回るなど、前向きな展開があったとしたものの、コスト圧力の高まりや金利の上昇により圧迫されており、インフレ率の上昇率は緩やかになってきているが、今後も利上げが行われると予想。その上で、今後も地政学的緊張の高まり、予想を上回るインフレ率の上昇、急激な金融引き締めなどが依然下振れリスクとなるとした。