ガソリン補助金支出、原油高騰で月20億リンギに増加へ=首相

【プトラジャヤ】 中東紛争に伴う世界的な原油価格の高騰は、マレーシア政府の財政にも大きな影響を与える見込みで、現在の燃料補助金政策を維持した場合にはガソリン補助金だけでも毎月20億リンギに跳ね上がると推定されている。

アンワル・イブラヒム首相は、原油価格の高騰を受け、「RON95」レギュラーガソリンの補助金付き価格を1リットルあたり1.99リンギに維持するため、政府は毎月20億リンギ、年間240億リンギの補助金を拠出する必要があるとの見通しを示した。ディーゼル燃料についてもサバ州とサラワク州への補助金は昨年20億リンギだったが、現在の価格を維持した場合は補助金額が両州だけで年間46億リンギに増加する見通しだという。

アミル・ハムザ第2財務相によると、ディーゼル補助金は約12億リンギに増加しており、「RON95」とディーゼル燃料の燃料補助金総額は32億リンギとなる。

アミル・ハムザ氏は「影響を受けていないとは言えない。コモディティ価格は市場原理によって決定される原油価格に影響される」と言明。その上で「しかしアンワル政権は国民への支援を継続し、『Budi95』プログラムを通じて支援を維持できるよう努める」と述べ、現在の補助金政策を維持していく考えを示した。過去3年間に政府が実施した財政改革と財政健全化策のおかげで、補助金の増加による負担は管理可能だという。

13日時点でブレント原油価格は0.12%上昇し、1バレルあたり100.60米ドル(395.76リンギ)となっている。
(マレーシアン・リザーブ、3月15日、ザ・スター電子版、エッジ、ベルナマ通信、3月13日)

バティックエア、日本線燃油サーチャージ90リンギに引き上げへ

【クアラルンプール】 航空会社バティック・エアは25日から、日本線の燃油サーチャージを現在の50リンギから90リンギへ引き上げる。マレーシア国内線でも30リンギから50リンギに改定するなど、運賃と路線別燃料サーチャージの調整を進めている。
調整は燃料価格の急騰を受けた措置となる。90リンギとなるのは、日本のほか、中国、香港、韓国、台湾路線。中東、南アジア、中央アジアは、50リンギから80リンギに、最も高いのはオーストラリア線で50リンギから100リンギとなる。一部の路線ではすでに実施している。

航空会社ファイアフライもすでに日本を含めた路線で、11日から料金改定を実施。同じマレーシア・アビエーション・グループ(MAG)のマレーシア航空も25日から、日本線を含め料金を改定する方針だ。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、ベルナマ通信、3月13日)

ハリラヤ祝日、20日と23日を加え土日を含め4連休に=首相

【プトラジャヤ】 アンワル・イブラヒム首相は15日、ハリラヤ(断食月明け大祭)に伴う祝日について、20日と23日を祝日にすると発表。土日をはさみ4連休となることが確定した。

ハリラヤが20日になった場合を考慮した。ハリラヤの日付は、19日に全国29地点での目視(ルキヤ)による月観測で最終判断される。ただし、もともと天文計算(ヒサブ)では、21日の土曜日の可能性が高いとされていたため、23日が振替休日となる見込みだった。

しかし、ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)が13日、ハリラヤが20日になる場合は、20日が休場で、23日は取引を行うと公式に発表するなど、金融業界を中心に祝日スケジュールに混乱が生じていた。

アンワル首相は「ラマダン期間中の皆さんの勤労を考慮し、ハリラヤが20、21日のいずれになるか心配せずにすむよう、祝日を追加する」と述べた。

また人的資源省は、今回の祝日は有休での振替が可能な祝日とし、雇用主に対し柔軟な対応を要請した。ただし、出勤した従業員には祝日手当の支払い義務が生じる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、フリー・マレーシア・トゥデー、3月15日)

【総点検・マレーシア経済】第542回:1月のマレーシアの製造業指数は7.3%増と好調を維持

第542回:1月のマレーシアの製造業指数は7.3%増と好調を維持

3月11日、統計局はマレーシアの1月の製造業生産指数が前年同月比7.3%増だったと発表しました。12月の6.7%増からさらに上昇し、好調が続いています。内訳を見ると、内需向けは12月の5.2%増から6.4%増に、外需向けも7.5%増から7.8%増へとそれぞれ伸びました。とりわけ電子・電機製品は15.2%増と、12月の12.8%増から一段と加速しています。

図は2024年以降のマレーシアにおける内需向け・外需向け製造業生産指数の推移(前年同月比)を示しています。内需向け(青)は2024年前半の高い伸びから減速し、2025年1月にはほぼ横ばいまで低下しました。その後は年末にかけて持ち直し、2026年1月には6%台の高い伸び率を記録しています。一方、外需向けは2024年初の低迷から夏場にかけて回復し、2025年前半はトランプ関税の影響下でも堅調に推移しました。しかし5〜8月は伸びが鈍化しており、4月2日以降の関税政策をめぐる不確実性の高まりが背景にあるとみられます。8月以降は状況が落ち着きを取り戻すとともに成長が再加速し、12月には7%台に達しました。

このように、2025年後半からマレーシアの製造業は内外需共に好調で、これが2025年通年のGDPが5.2%となり、トランプ関税によって下方修正された政府の予測である4.0%〜4.8%を大きく上回った要因です。

外需については、AIブームの恩恵を受けていることは間違いありません。特に米国向けの輸出が好調で、2025年12月には前年同月比でほぼ50%増という驚くような伸び率を記録しています。内需も堅調で、マレーシアの2025年の自動車販売は過去最高を記録しました。

3月12日に発表された卸売・小売指数も数量指数で5.8%増、売上高で7.3%増と引き続き好調です。米国とイスラエルのイランへの攻撃が、鉱業部門を中心にどのような影響を与えるかは不透明ですが、この調子で推移すると、2026年第1四半期のマレーシアのGDP成長率は6%台に乗る可能性もあります。

昨年来のかなり急激なリンギ高の中でも、マレーシア経済に通貨高の悪影響が出ているようには見えません。高い経済成長率と相まって、マレーシア経済は「高所得国入り」へのラストスパートの段階に入っているように見えます。

 

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

 

【イスラム金融の基礎知識】第588回 イスラム銀行で発生するイスラム法に反する事項(後編)

第588回 イスラム銀行で発生するイスラム法に反する事項(後編)

Q: イスラム銀行ではイスラム法に反する事項は発生しますか?

A: イスラム法(シャリア)に基づいてビジネスを行うイスラム銀行であっても、従来型金融が併存する多民族・多宗教社会のマレーシアにおいては、イスラム法に反する事項が発生することがある。この場合、各イスラム銀行はシャリア・ボードの指導に基づき事案を年次報告書に報告する義務がある。この点に関する研究論文が2023年に発表されたので、その内容を見てみたい。

論文によれば、2015-2020年の6年間に16のイスラム銀行で、合計159件のイスラム法違反が報告された。中でもバンク・イスラム、メイバンク・イスラミック、スタンダード・チャータード・サアデクの3行が20件を超えており、全体の44%を占めた。発生した事項の詳細だが、前回紹介した分類に基づきさらに14種に分類した結果、「取引の不履行」「イスラム法に準拠しない活動を含む契約」「裏付けとなる資産の不在」「アカド(契約が成立するための条件)が満たされていない」が特に多かった。また、融資に関して契約形態別のトラブルを見てみると、タワッルク融資にまつわるものが29件中12件と突出していた。複雑な売買契約の組み合わせで成り立つ融資手法ゆえ、トラブルも多いとみられる。

さらに、イスラム法に反する事項で生じたイスラム銀行の損失は、各行とも年間10件程度であり損失は50万リンギ以内に収まっているが、100万リンギ以上に及んだ事例もあり、トラブルが多発するほど損失もまた大きくなった。

もっとも論文によれば、中央銀行の義務規定の履行が徹底されておらず、報告されるトラブルの内容や報告の仕方が銀行ごとに異なっている。したがってトラブルの発生件数の違いが、そのまま銀行の能力や危機意識の違いを表しているわけではないと指摘している。公正な比較のためには、適切なルール運用が必要と言えよう。

 

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。