首相任命受け株価とリンギが上昇、行き詰まり解消を好感

【クアラルンプール】アンワル・イブラヒム氏の首相就任を受け株価が上昇し、リンギも対米ドルで値上がりした。政治的行き詰まりの解消を市場は好感した。
代表的株価指数のFBM・KLCIは4.04%上昇し、約3カ月ぶりの高値を記録した。リンギは米ドルに対し1.8%上昇した。

金融大手RHBのアナリストは、株式市場は短期的には強気相場が続くが、投資家は浮かれすぎないことが肝心と警告。「新政権はチームとして機能することを証明する必要がある」とした。

ケナンガ投資銀行は、新政権は国内産業保護、現金給付、燃料・食料補助、公共工事による景気てこ入れなどこれまでの政策を継続するとみている。
大連立はマレーシアで初めての試みで、市場は新政権がどの程度機能するかを注視すると述べた。

リンギは上昇を続けるとの意見が多い。シンガポール系UOB銀行はその根拠の一つとしてリンギに影響を与える人民元の動きを挙げ、中国はコロナ封じ込め政策を緩和しており、経済回復が強まるため、リンギには追い風になるという。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月25日、マレーシアン・リザーブ、11月24日)

KLIAエアロポリス、99年間の長期土地使用権を取得

【クアラルンプール】 空港運営会社のマレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)は21日、連邦政府との間のクアラルンプール国際空港(KLIA)運営契約(OA)を一部変更したと発表。KLIAエアロポリス開発用地を切り離し、99年間の長期使用が可能になったとした。

MAHBがブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)に宛てた声明によると、MAHBの完全子会社であるKLIAエアロポリス(KASB)が連邦政府との間で2022年11月17日から99年間のKLIAエアロポリス開発用地リース契約および開発契約を締結。KASBがKLIAエアロポリス開発用地3454.92ヘクタール(ha)の占有、使用、支配、管理、転貸の権利を有し、KLIAエアロポリスの開発に携わることになった。また、同じくMAHB完全子会社であるマレーシア・エアポーツ(セパン)も連邦政府との間で補足契約を締結し、クアラルンプール国際空港(KLIA)の運営のため、47区画、約9352.71haの土地を保有することになった。

KLIAのOAが締結されたのは2009年2月。当初のMAHBの運営期限は2034年2月までという短期間だったため、KLIAエアロポリスへの投資誘致が難しい状態となっていた。2019年4月に期限は2069年まで延長されたが、MAHBはさらにKLIA周辺の土地賃貸期間を99年間に延長するよう連邦政府に働きかけていた。
(ザ・スター、11月22日、エッジ、ベルナマ通信、11月21日)

不安定な政治状況でリンギ安が続く=アナリスト予想

【クアラルンプール】 アナリストらは、対米ドル相場でのリンギ安について、19日に実施された第15回総選挙でどの党も過半数が獲得できなかったことが影響し、連立政権が樹立されるまでリンギ安が続くとみている。

米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げや中国の経済状況に加え、国内の政治状況の不安定さがリンギ安の要因になっており、21日の終値では0.62%安の1米ドル=4.5810リンギとなった。一方、対シンガポール・ドルでは0.11%高の1シンガポール・ドル=3.3135リンギ、対タイ・バーツでは0.33%高の12.6399リンギなど、近隣通貨に対しては強含みとなっている。

社会経済研究所(SERC)のリー・ヘングイエ専務理事は英字紙「ザ・スター」の取材に対し、当面の課題は不安定な政治状況をいかに早く解消するかであり、連立政権の樹立が早ければ早いほど、リンギ安の傾向は弱まると言明。また、新連立政権が正しいことを行い、市場に優しい政策で政治的安定を確保し、安定した政権を通じて投資を誘致できるようにすることが重要だと述べた。

SPIアセット・マネジメントのスティーブン・イネス社長も、総選挙の結果によっても政治的不和は緩和しないというのが大方の見方であり、その見方が21日のリンギ安や株価下落に表れているとコメント。一方、連立政権が成立することで、長期的に見て建設的な政策が生まれ、抑制や均衡も働くことになるとした。また、現在のより重要な課題は、中国のゼロコロナ政策であり、中国の都市・企業封鎖が続いたことでリンギにも悪影響が出ていると指摘した。

Amバンク・リサーチもマレーシアの当面の課題は次期政権の樹立だとし、サポートライン(下値支持線)が1米ドル=4.550ー4.560リンギ、レジスタンスライン(上値抵抗線)が1米ドル=4.600ー4.610リンギになると予想している。
(ザ・スター、11月22日)

セルコムとDiGiの合併、両社の株主が承認

クアラルンプール】 通信大手のアシアタ・グループ傘下で携帯電話事業を手掛けるセルコム・アシアタとノルウェー系テレノル・アジア傘下のDiGiドットコムとの間の合併について、両社の株主が承認した。

アシアタ・グループの声明によると、18日に臨時株主総会を開催し、合併案を承認。DiGiドットコムも同日の臨時株主総会で合併案が承認されたと発表した。

合併案は、アシアタがセルコム・アシアタの株式100%を177億6,000万リンギでDiGiに譲渡するもの。DiGiは買収資金をDiGiの新規株式39万6,000株(1株4.06リンギで発行)と現金16万9,000リンギにより支払う。年末までに買収を完了する予定。合併完了後、両社の親会社であるアシアタとテレノルは、合併後の新会社であるセルコムDiGiの株式をそれぞれ33.1%ずつ均等保有することになる。

合併案については、関係当局である、マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)、マレーシア証券委員会(SC)、ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)からの承認をすでに得ており、今回の株主承認により実施に向けた障壁がすべて取り除かれたことになる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月19日、エッジ、ベルナマ通信、11月18日)

マレーシアが来年景気後退に陥ることはない=中銀総裁

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 中央銀行バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)のノル・シャムシア総裁は11日、マレーシアが来年、景気後退に陥ることはないとの予想を示した。


2022年第3四半期(7ー9月)の国内総生産(GDP)成長率を発表したノル・シャムシア総裁は記者会見で、インフレ率は今後も引き続き上昇する可能性があるものの、経済成長率の改善が見込めるとした上で、景気後退に陥らないと述べた。インフレ率が高まることで、国民の購買力や貯蓄への影響が出るため、中銀は段階的に政策金利の調整を実施していると説明。緩やかな政策が経済に完全に反映されるまでは時間がかかる可能性があるとした。急激な政策金利の上昇は家庭や企業に打撃を与えることになるとして、物価の安定と持続可能な成長のために複数の政策を実施していると説明。インフレ率は第3四半期に4.5%でピークを迎えた可能性が高いとしたが、今後も高止まりするとの見方を示した。


 一方で、通貨リンギが対米ドルで下落していることについて、ノル・シャムシア総裁は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが米ドル高に繋がっているだけであり、マレーシア経済が危機に瀕しているという意味ではなく、域内の通貨も同じように下落していると説明。米ドル高が今後も続く可能性があるものの、マレーシアの経済ファンダメンタルズを反映した水準に調整されるとの予想を示した。

プロトン、2027年までに自社製EVの製造販売を開始へ

【クアラルンプール】 国民車メーカー、プロトン・ホールディングスは、電気自動車 (EV) 生産能力を強化し、2027年までに自社製EVを製造・発売する計画だ。ロスラン・アブドラ副最高経営責任者(CEO)が明らかにした。

ロスラン副CEOは、10年前にEVのロードマップをスタートしたものの、市場需要や技術的な問題から実現に至らなかったとし、EVの販売やマーケティングを理解しないままEV生産に乗り出すことができないとした。2年後には、より良い価格の新しいEV技術を開発する競合他社が現れる可能性があるため、今後5年間で技術や地域市場の両方を徹底的に研究し、最も受け入れやすく維持しやすい価格帯のEVを開発すると述べた

自社製EVに移行する前に、今年1月にマレーシアとタイにおける販売代理店契約を締結した、スマート・オートモービル社のEV販売を通じて、EVの現地組立や販売などに関する経験と知識を蓄えるという。

ロスラン副CEOは、手頃な価格のEVの少なさ、EV充電インフラの未整備、EV分野での人材育成や関連技術への投資不足などがEV普及を妨げていると指摘。EV産業の発展には、研究開発、サプライチェーンへの投資、新技術、EVインフラなどに対する支援が必要だと述べた。
(ザ・サン、ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月10日、ポールタン、マレーシアン・リザーブ、ベルナマ通信、11月9日)

来年の政策金利は3.5%の可能性も、ホンリョン投資銀予想

【クアラルンプール】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は3日、翌日物政策金利を2.75%へ0.25ポイント引き上げたが、ホンリョン・インベストメント・バンクは強気姿勢の継続を予想しており、来年には更なる利上げが行われ、政策金利は3-3.5%になるとみている。

ホンリョンエコノミストのチン・イーシャン氏は「来年の金利予想はこれまでどおり3-3.5%だが、当初予想より早くその水準になる。インフレ抑制のため利上げは前倒し実施が必要だからだ。リンギ安圧力も強い」と述べた。

チン氏によれば、来年上半期は、財政・金融緩和という追い風効果の多くが消散し、前年同期の数字が統計に影響するベース効果も薄れるため、経済は徐々に減速すると予想される。さらに、金融政策は効果が表れるまで時間がかかるため、経済減速が明確になった時より、経済回復が好調な時の方が利上げをしやすいという。

消費者支出はこの先数カ月、堅調を維持する見通しのため、コアインフレに対する需要サイドからの圧力は弱まらないという。
(マレーシアン・リザーブ、11月4日)

通信5社、5Gネットワーク運営のDNBと回線卸売契約を締結

【クアラルンプール】 国内通信会社5社は10月31日、政府系デジタル・ナショナル(DNB)から5Gネットワーク回線の卸売を受ける契約を締結した。テンク・ザフルル財務相が明らかにした。

5社は▽セルコム・アシアタ▽Digiドットコム▽テレコム・マレーシア▽ユーモバイル▽YTLコミュニケーションズーー。いずれも6月にDNBに均等出資しているが、同じく出資したマキシスは今回契約を締結していない。

ザフルル財務相は、DNBから回線の卸売を受けることで、5社の顧客は高速な5Gサービスを手頃な価格で享受できると言明。現在、5Gネットワークは全国で約1,100万人、人口密集地では33%をカバーしているが、DNBは2024年末までに人口密集地で約80%をカバーすることを目指すと述べた。また、5Gネットワーク構築費用は10年間で165億リンギに達しているが、政府は、DNBに対して5億リンギを出資した以外の資金提供はしていないとし、DNBが単独で所有・運営し、各通信会社に卸売する1社独占方式(SWN)のおかげで今後10年間でインフラ建設費の約300億リンギを節約できると述べた。

5GネットワークのSWNについては通信会社から不満の声が上がっていたが、政府が3月、5G導入の迅速化のためSWNを採用すると最終決定。6月にDNBの株式70%を通信会社6社に提供した。5Gサービス構築により、生産性、効率性、革新性が向上し、2030年までに75万人の高技能職の創出や国内総生産(GDP)への6,500億リンギの貢献が期待されるという。
(マレーシアン・リザーブ、11月2日)

中銀バンクネガラ、今年4度目の利上げで2.75%に

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 中央銀行バンク・ネガラは3日、定例金融政策会合(MPC)を開催し、政策金利である翌日物政策金利(OPR)を0.25ポイント引き上げて2.75%とすることを決定した。中銀は2020年7月から1.75%で維持していたが、今年5月11日、7月6日、9月8日にそれぞれ0.25ポイント引き上げており、今回で4会合連続の利上げとなった。

中銀は声明の中で、国内経済の好調な成長が最新の統計で示されており、今後も成長維持が見込めるとして、4度目の利上げを決めたと説明。現在の金融政策のスタンスも緩和的であり、引き続き経済成長を支えることが可能だとした。

国内経済について中銀は、厳しい世界情勢にも関わらず、内需が引き続き経済成長を下支えするとの予想を示した。国境再開に伴い、外国人観光客数が増加しており、観光産業の成長を押し上げると予想。投資活動も複数年にわたって実施されている大型プロジェクトに支えられるとしたものの、外需は世界経済の成長鈍化を受ける見通しだとした。また、金融および為替市場のボラティリティー(変動性)の高まりも懸念されるものの、マレーシアの経済成長を阻害することはないと指摘。その上で、今後も、世界経済の回復が予想を下回る可能性、ロシアのウクライナ軍事侵攻の激化、サプライチェーンの混乱悪化が成長リスクとなり続けるとした。今年のコア・インフレ率の予想については、2.0ー3.0%で維持するとしたものの、2023年は引き続き上昇するとの見解を示した。

また中銀は世界経済について、コスト圧力の高まり、世界的な金融引き締め、中国の「ゼロコロナ」政策下で実施されるロックダウン、コスト圧力の上昇、欧州のエネルギー危機の可能性などが成長に影響を与えているとした。特に米国の積極的な金融緩和策が金融市場を変動させているとし、リンギなどの様々な国の通貨に影響を及ぼしていると指摘。今後も主要経済国のインフレ上昇や中国が抱える国内問題、地政学的緊張の高まりなどが下振れリスクとなるとした。

リンギは来年第2四半期から値上がり、Am銀行見解

【クアラルンプール】 Amバンクの調査部門は、対米ドルで下落を続けるリンギ相場は来年第2四半期以降、上昇に転じ、第4四半期には1米ドル=4.4リンギの水準になるとの見解を示した。米ドルが下落局面に入ると予想されるためだ。

リンギが最も下がったのは1998年3月31日で、1米ドル=4.88リンギ。年内は下落傾向を維持し、27日の4.705リンギに対し、第4四半期は4.7リンギ、来年第1四半期は4.8リンギが予想されるという。

来年のリンギ上昇予想の根拠は両国金利差の縮小で、米国経済は急な減速あるいは景気後退が予想されるため、米連邦準備制度理事会(FRB)は来年下半期に利下げに転じるという。同期の引き下げ予想幅は1ポイント。

FRBは9月20、21日に連邦公開市場委員会を開き、政策金利の誘導目標2.25ー2.5%から3.0ー3.25%へ0.75ポイント引き上げた。

現在のマレーシアの政策金利は2.5%だが、中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は今年11月と来年1月にそれぞれ0.25ポイント引き上げ、3.0%にするとAmバンクは予想している。
(ザ・サン、10月28日、ベルナマ通信、10月27日)