政治安定化でリンギ安は収束へ=アナリスト予想

【ペタリンジャヤ】 アナリストは、国内政治のリスク低下および中国のゼロコロナ政策緩和の影響により、対米ドル相場でのリンギ安は収束すると予想している。

ブルームバーグ・インテリジェンスのチーフアジア為替・金利ストラテジストであるスティーブン・チウ氏は英字紙「ザ・スター」の取材に対し、10月の米消費者物価指数のデータによると、米インフレはピークに達し下落し始めた可能性があり、米連邦準備制度理事会(FRB)が近いうちに方向転換する可能性が高くなったと述べた。また、国内の政治環境がより明確になれば、リンギへの「追い風」になるとし、アジア通貨やリンギに対し米ドルは2023年に下落すると予想しているものの、世界経済の不確実性を考慮すると、2023年前半は一定の値幅内での動きになるとした。市場はFRBの利上げ低速化を織り込み済みで、来年5%付近でピークを迎え、その後来年末までに利下げに回帰すると予想しているが、利上げ幅の増加や利下げまでの期間が長期化する可能性もあるとした。チウ氏はまた、今年は台湾や韓国など、他のアジア通貨も対米ドルで下落しており、リンギだけが安くなったわけではないと強調した。

リンギは10月末時点では、1米ドル=4.747リンギ周辺で推移していたが、2日の終値では4.383リンギまで回復している。
(ザ・スター、12月3日)

プロドゥア、年初11カ月の販売台数が通年目標超える

【ラワン=マレーシアBIZナビ】 ダイハツ系プルサハアン・オトモビル・クドゥア(プロドゥア)は2日、1ー11月の販売台数が25万795台となり、今年通年の販売目標である24万7,800台を超えたと明らかにした。

11月の販売台数は2万8,592台で、前年比40.9%、前月比で10.6%共に増加し、過去最多となった。最も売れたのはAセグメント・セダン「ベザ」で、8,089台。それにBセグメント「マイヴィ」(販売台数6,624台)、Aセグメント「アジア」(同5,812台)が続いた。同月の生産台数は過去最多となる2万9,149台で、年初11カ月では25万8,960台となった。

ザイナル・アビディン社長兼最高経営責任者(CEO)は、同社が持つリソースを最大化する能力があること、新たに工場や製造拠点を追加することなく、販売および生産台数を増加することができるということが認識できたとコメント。また、売上・サービス税(SST)の減免措置対象となる6月末までに受け付けた予約分を来年3月31日までに全ての顧客により早く納車できるよう今後も努め、販売および生産好調の勢いを継続させることを目指すとした。

自動車メーカー各社、SST減免対象予約分の納車を急ぐ

【ペタリンジャヤ】 自動車メーカーは、売上・サービス税(SST)の減免措置対象となる6月末までに受け付けた予約分を来年3月31日までに納車しなくてはならないため、納車を急いでいる。

マレーシア自動車連盟(MAA)のアイシャ・アハマド会長は、一部の自動車ブランド、特に欧州のブランドは部品や半導体不足に直面しているため、全ての企業が納車期限に間に合わない可能性があると言明。キャンセルが出ているものの、期限までに納車できなくても影響はないとみているとし、新政府が寛大な対応をしてくれると期待していると示唆した。

国民車メーカー、プロトン・ホールディングスのロスラン・アブドラ副最高経営責任者(CEO)は、部品などの供給が大幅に制限されるような不測な事態が起きない限り、納車できると確信していると言明。また6月30日以降の予約についても待ち時間の管理を行っており、長期化しないように努めているとした。

マツダ車のシニア・セールス・アドバイザーであるアニソン・フランシス氏は、世界的な半導体不足の影響が同社の生産に影響を与えており、輸入完成車(CBU)、現地組立車(CKD)共に過剰在庫がないため、12月は販促キャンペーンを実施しない可能性が高いと言明。また納車が期限に間に合わない可能性があるため、注文のキャンセルが出始めていると述べた。SSTを支払うより、数千リンギ上乗せして在庫のあるモデルを購入した方が良いと考える傾向にあるという。
(ザ・スター、12月2日)

CPTPPが発効、脱退提案に製造業者連盟が反論

【クアラルンプール】 マレーシアが9月に批准し、11月29日に発効した包括的および先進的な環太平洋経済連携協定(CPTPP)について、マレーシア製造業者連盟(FMM)が声明を発表。脱退すべきという意見に反論した。

ニュースサイト「マレーシアキニ」が28日、ソーシャルメディアを使った超党派のキャンペーン、国民主権連合がアンワル・イブラヒム首相に対し、CPTPPからの脱退を促したと報じたことを受けてのもの。アンワル首相は1年前の野党時代に、雇用の安定やブミプトラ(マレー人と先住民の総称)政策への悪影響の懸念からCPTPP加盟を見直すべきだという意見を表明していた。ペナン消費者協会も先月、「利益よりもコストがはるかに多い」として、CPTPP脱退を政府に要請した。

FMMのソー・ティエンライ会長は声明で、CPTPPからの脱退は重大な機会損失をもたらし、投資家からの信頼も揺るがすことになるとし、マレーシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)内で出遅れていると言明。例えば2019年1月からCPTPPに加盟しているベトナムは、2019年のカナダ、メキシコ、ペルーへの輸出が29.7%増、輸出全体の成長率が8.5%増となり、同年のCPTPP加盟国からの外国直接投資(FDI)もFDI全体の24.2%にあたる390億米ドル(約1,758億1,000万リンギ)に増加したと述べた。

ソー会長はまた、CPTPP加盟によりこれまでマレーシアが自由貿易協定を結んでいないカナダ、メキシコ、ペルーへの輸出が促進され利益をもたらすとし、3国合計で人口2億人以上、国内総生産(GDP)3兆5,000億ドルとマレーシアの94倍もの経済規模を有するとした。そのためCPTPPからの脱退はマレーシア経済にとって大きな打撃となり、また投資家にとってマレーシアが魅力的な投資先でなくなる可能性もあると警告。さらに、CPTPPへは中国、エクアドル、台湾、英国がCPTPP加盟を申請・交渉中であり、韓国、タイ、フィリピンも関心を示しているとして加盟のメリットを強調した。
(エッジ、11月29日)

首相任命受け株価とリンギが上昇、行き詰まり解消を好感

【クアラルンプール】アンワル・イブラヒム氏の首相就任を受け株価が上昇し、リンギも対米ドルで値上がりした。政治的行き詰まりの解消を市場は好感した。
代表的株価指数のFBM・KLCIは4.04%上昇し、約3カ月ぶりの高値を記録した。リンギは米ドルに対し1.8%上昇した。

金融大手RHBのアナリストは、株式市場は短期的には強気相場が続くが、投資家は浮かれすぎないことが肝心と警告。「新政権はチームとして機能することを証明する必要がある」とした。

ケナンガ投資銀行は、新政権は国内産業保護、現金給付、燃料・食料補助、公共工事による景気てこ入れなどこれまでの政策を継続するとみている。
大連立はマレーシアで初めての試みで、市場は新政権がどの程度機能するかを注視すると述べた。

リンギは上昇を続けるとの意見が多い。シンガポール系UOB銀行はその根拠の一つとしてリンギに影響を与える人民元の動きを挙げ、中国はコロナ封じ込め政策を緩和しており、経済回復が強まるため、リンギには追い風になるという。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月25日、マレーシアン・リザーブ、11月24日)

KLIAエアロポリス、99年間の長期土地使用権を取得

【クアラルンプール】 空港運営会社のマレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)は21日、連邦政府との間のクアラルンプール国際空港(KLIA)運営契約(OA)を一部変更したと発表。KLIAエアロポリス開発用地を切り離し、99年間の長期使用が可能になったとした。

MAHBがブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)に宛てた声明によると、MAHBの完全子会社であるKLIAエアロポリス(KASB)が連邦政府との間で2022年11月17日から99年間のKLIAエアロポリス開発用地リース契約および開発契約を締結。KASBがKLIAエアロポリス開発用地3454.92ヘクタール(ha)の占有、使用、支配、管理、転貸の権利を有し、KLIAエアロポリスの開発に携わることになった。また、同じくMAHB完全子会社であるマレーシア・エアポーツ(セパン)も連邦政府との間で補足契約を締結し、クアラルンプール国際空港(KLIA)の運営のため、47区画、約9352.71haの土地を保有することになった。

KLIAのOAが締結されたのは2009年2月。当初のMAHBの運営期限は2034年2月までという短期間だったため、KLIAエアロポリスへの投資誘致が難しい状態となっていた。2019年4月に期限は2069年まで延長されたが、MAHBはさらにKLIA周辺の土地賃貸期間を99年間に延長するよう連邦政府に働きかけていた。
(ザ・スター、11月22日、エッジ、ベルナマ通信、11月21日)

不安定な政治状況でリンギ安が続く=アナリスト予想

【クアラルンプール】 アナリストらは、対米ドル相場でのリンギ安について、19日に実施された第15回総選挙でどの党も過半数が獲得できなかったことが影響し、連立政権が樹立されるまでリンギ安が続くとみている。

米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げや中国の経済状況に加え、国内の政治状況の不安定さがリンギ安の要因になっており、21日の終値では0.62%安の1米ドル=4.5810リンギとなった。一方、対シンガポール・ドルでは0.11%高の1シンガポール・ドル=3.3135リンギ、対タイ・バーツでは0.33%高の12.6399リンギなど、近隣通貨に対しては強含みとなっている。

社会経済研究所(SERC)のリー・ヘングイエ専務理事は英字紙「ザ・スター」の取材に対し、当面の課題は不安定な政治状況をいかに早く解消するかであり、連立政権の樹立が早ければ早いほど、リンギ安の傾向は弱まると言明。また、新連立政権が正しいことを行い、市場に優しい政策で政治的安定を確保し、安定した政権を通じて投資を誘致できるようにすることが重要だと述べた。

SPIアセット・マネジメントのスティーブン・イネス社長も、総選挙の結果によっても政治的不和は緩和しないというのが大方の見方であり、その見方が21日のリンギ安や株価下落に表れているとコメント。一方、連立政権が成立することで、長期的に見て建設的な政策が生まれ、抑制や均衡も働くことになるとした。また、現在のより重要な課題は、中国のゼロコロナ政策であり、中国の都市・企業封鎖が続いたことでリンギにも悪影響が出ていると指摘した。

Amバンク・リサーチもマレーシアの当面の課題は次期政権の樹立だとし、サポートライン(下値支持線)が1米ドル=4.550ー4.560リンギ、レジスタンスライン(上値抵抗線)が1米ドル=4.600ー4.610リンギになると予想している。
(ザ・スター、11月22日)

セルコムとDiGiの合併、両社の株主が承認

クアラルンプール】 通信大手のアシアタ・グループ傘下で携帯電話事業を手掛けるセルコム・アシアタとノルウェー系テレノル・アジア傘下のDiGiドットコムとの間の合併について、両社の株主が承認した。

アシアタ・グループの声明によると、18日に臨時株主総会を開催し、合併案を承認。DiGiドットコムも同日の臨時株主総会で合併案が承認されたと発表した。

合併案は、アシアタがセルコム・アシアタの株式100%を177億6,000万リンギでDiGiに譲渡するもの。DiGiは買収資金をDiGiの新規株式39万6,000株(1株4.06リンギで発行)と現金16万9,000リンギにより支払う。年末までに買収を完了する予定。合併完了後、両社の親会社であるアシアタとテレノルは、合併後の新会社であるセルコムDiGiの株式をそれぞれ33.1%ずつ均等保有することになる。

合併案については、関係当局である、マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)、マレーシア証券委員会(SC)、ブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)からの承認をすでに得ており、今回の株主承認により実施に向けた障壁がすべて取り除かれたことになる。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月19日、エッジ、ベルナマ通信、11月18日)

マレーシアが来年景気後退に陥ることはない=中銀総裁

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 中央銀行バンク・ネガラ・マレーシア(BNM)のノル・シャムシア総裁は11日、マレーシアが来年、景気後退に陥ることはないとの予想を示した。


2022年第3四半期(7ー9月)の国内総生産(GDP)成長率を発表したノル・シャムシア総裁は記者会見で、インフレ率は今後も引き続き上昇する可能性があるものの、経済成長率の改善が見込めるとした上で、景気後退に陥らないと述べた。インフレ率が高まることで、国民の購買力や貯蓄への影響が出るため、中銀は段階的に政策金利の調整を実施していると説明。緩やかな政策が経済に完全に反映されるまでは時間がかかる可能性があるとした。急激な政策金利の上昇は家庭や企業に打撃を与えることになるとして、物価の安定と持続可能な成長のために複数の政策を実施していると説明。インフレ率は第3四半期に4.5%でピークを迎えた可能性が高いとしたが、今後も高止まりするとの見方を示した。


 一方で、通貨リンギが対米ドルで下落していることについて、ノル・シャムシア総裁は、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが米ドル高に繋がっているだけであり、マレーシア経済が危機に瀕しているという意味ではなく、域内の通貨も同じように下落していると説明。米ドル高が今後も続く可能性があるものの、マレーシアの経済ファンダメンタルズを反映した水準に調整されるとの予想を示した。

プロトン、2027年までに自社製EVの製造販売を開始へ

【クアラルンプール】 国民車メーカー、プロトン・ホールディングスは、電気自動車 (EV) 生産能力を強化し、2027年までに自社製EVを製造・発売する計画だ。ロスラン・アブドラ副最高経営責任者(CEO)が明らかにした。

ロスラン副CEOは、10年前にEVのロードマップをスタートしたものの、市場需要や技術的な問題から実現に至らなかったとし、EVの販売やマーケティングを理解しないままEV生産に乗り出すことができないとした。2年後には、より良い価格の新しいEV技術を開発する競合他社が現れる可能性があるため、今後5年間で技術や地域市場の両方を徹底的に研究し、最も受け入れやすく維持しやすい価格帯のEVを開発すると述べた

自社製EVに移行する前に、今年1月にマレーシアとタイにおける販売代理店契約を締結した、スマート・オートモービル社のEV販売を通じて、EVの現地組立や販売などに関する経験と知識を蓄えるという。

ロスラン副CEOは、手頃な価格のEVの少なさ、EV充電インフラの未整備、EV分野での人材育成や関連技術への投資不足などがEV普及を妨げていると指摘。EV産業の発展には、研究開発、サプライチェーンへの投資、新技術、EVインフラなどに対する支援が必要だと述べた。
(ザ・サン、ニュー・ストレーツ・タイムズ、11月10日、ポールタン、マレーシアン・リザーブ、ベルナマ通信、11月9日)