MSCの後継戦略「マレーシアデジタル」を正式発表

【クアラルンプール】  イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は4日、デジタル経済成長に向けた新戦略「マレーシア・デジタル(MD)」の開始を正式発表した。
1996年に開始された、プトラジャヤ、サイバージャヤを含む、首都中心部からクアラルンプール国際空港にかけた地域をマレーシア版シリコンバレーにする「MSC(マルチメディア・スーパー・コリドー)」の後継戦略となる。ハイテク企業、人材、投資を呼び込み、地元企業や労働者が世界のデジタル経済に参加できるようにする。今年1月にアヌアル・ムサ通信マルチメディア相がMSCの改称および対象を全国に広げるなど、優遇措置の強化について発表していた。
MDの中心となるのは、▽デジタルツーリズム▽イスラムデジタル経済▽デジタル貿易▽デジタル農業▽デジタルサービス▽デジタル都市▽デジタルヘルス▽デジタル金融▽デジタルコンテンツーーの9分野。通信マルチメディア省がマレーシア・デジタル調整委員会(MD-CC)を設立し、企業へのMDステータス付与などの運営を担当する。
初期プログラムとして、デジタルノマド(ITを活用し旅行しながら働く人)を呼び込み観光を促進する「DEランタウ」や国内外のオンライン取引を促進する「デジタル・トレード」などがすでに開始されたという。
イスマイル首相は、デジタル経済は昨年、国内総生産(GDP)の22.6%に達し、2025年までに当初の目標である25.5%を超えて成長すると予想されているとし、MDは国のデジタル強化を目指すと述べた。
(ザ・スター、7月5日、マレー・メイル、7月4日)

通信6社、5Gネットワーク運営のDNBに均等出資へ

【プトラジャヤ】 国内通信会社6社は、第5世代移動通信(5G)ネットワーク展開のために設立された特別目的事業体(SPV)デジタル・ナショナル(DNB)に均等出資することに合意した。アヌアル・ムサ通信マルチメディア相が明らかにした。
シンガポールの英字紙「ストレーツ・タイムズ」によると、拘束力のない条件概要書(タームシート)が通信会社6社との間で締結された。6社は▽セルコム・アシアタ▽Digiドットコム▽マキシス▽ユーモバイル▽テレコム・マレーシア▽YTLコミュニケーションズーーで、それぞれ株式の11.66%を約2億リンギで購入する。政府が株式の30%を5億リンギで購入するため、DNBには合計約17億リンギが投入されることになる。
アヌアル大臣によると、争点となっていた5G卸売価格の透明性や価格設定については解決済みで、公式発表は7月8日頃になる見込みだという。
5Gネットワークについては、政府系企業であるDNBが単独で所有・運営し、各通信会社に卸売する1社独占方式(SWN)に対して、通信会社から不満の声が上がっていた。通信大手4社が代替案として2社方式を政府へ提案したが、政府は今年3月、5G導入の迅速化のためSWNを採用すると最終決定。DNBの株式70%を通信会社に提供し、6月末までに株式売却交渉を完了させるとしていた。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、7月1日、6月30日)

英スミスアンドネフュー、ペナンで工場を開所

【クアラルンプール =マレーシアBIZナビ】 医療機器の製造・販売、英スミス・アンド・ネフュー(S+N)は、ペナン州のバトゥ・カワン工業団地に工場を開所した。
マレーシア投資開発庁(MIDA)が28日に発表した声明によると、投資額は1億リンギ以上。製造、エンジニアリング、サプライチェーンなどで800人分の雇用を創出することができると見込まれている。工場の面積は2万3,225万平方メートル。2020年3月に着工、昨年完成していた。S+Nは、7月に米国に初出荷する予定だ。
MIDAのアズマン・マハムド最高責任者は、S+Nがマレーシアに工場を開所したことで、国内企業や医療機器業界におけるエコシステムの成長を促進に繋がり、マレーシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)における医療技術の製造拠点として強化できるとした。
MIDAによると、昨年は38億リンギ相当の医療機器関連の製造プロジェクトを認可した。1万2,500人分の雇用創出が見込まれている。
S+Nは1856年に創業。100カ国以上で事業を行っている。

外国人観光客誘致目標、450万人に上方修正=観光芸術文化省

【クアラルンプール】 ナンシー・シュクリ観光芸術文化相は21日、2022年の外国人観光客誘致目標について、当初の200万人から450万人に上方修正すると明らかにした。観光収入目標も、68億リンギから111億リンギに引き上げる。
ナンシー大臣は、同日クアラルンプールで開催された「観光復興枠組み2.0(TRF2.0)」の発表会において、今年の外国人観光客数はすでに約230万人と当初目標に達しており、観光業も力強い回復の兆しがみられるとし、新目標の達成については楽観的だと述べた。インドやサウジアラビアなどからマレーシア観光への関心は強く、さらに渡航制限を緩和する国が増加することで来訪者は増え続けるとした。インドからは6月だけで2万5,000人が来馬している。
ナンシー大臣により発表されたTRF2.0は、「観光・文化事業の復興支援」、「外国人観光客の信頼回復」、「観光商品・サービスの改革」、「長期的な回復力と危機対応力」という5つの柱により構成され、観光芸術文化省(MOTAC)は今後TRF2.0を通じ、国民所得の増加、スマートな国内外協力の促進、地域コミュニティの強化に取り組む。
ナンシー大臣は、経済回復が続く中、資本の成長だけを目指すのでなく、企業の社会経済的地位の向上や環境の持続可能性などに対してもバランスの取れた行動が必要だと言明。これらの目標を達成するためには、業界関係者、地域社会、非政府組織(NGO)、政府の間で緊密な協力が不可欠だとし、TRF2.0が観光部門の回復を牽引することを期待していると述べた。
MOTACはまた、全国の観光業界関係者250人を集めて対話セッションを開催し、観光開発に関するヒアリングを実施。ライセンス制度の改善や人材開発などについての意見が出たという。ナンシー大臣によると、MOTACは5月時点で、観光業者1万5,000社に対して総額2,380万リンギの資金援助を行っている。
(マレーシアン・リザーブ、ベルナマ通信、6月21日)

二輪車の配送ドライバーの下限年齢、18歳に引き下げへ

【クアラルンプール】 二輪車を利用したデリバリーなどの配送ドライバーの年齢制限は21歳以上だが、マレーシア政府は18歳以上に引き下げる計画だ。
ウィー・カション運輸相によると、下限年齢を18歳に下げることで、より多くの若者が、二輪車を利用してデリバリーや配送サービスを行うことで収入を得たり、インターネットを通じて単発で仕事を請け負うギグワーカーとしてのキャリアを検討することができると見込んでいる。年齢制限の修正案は次期国会開催時に提出する予定だ。
新型コロナウイルス「Covid-19」の感染拡大を防ぐために施行されていた行動制限が解除され、マレーシア経済の活動が再開したことで、二輪車の配送ドライバーが元の仕事に戻ったため、最大でドライバー数は25%減少したという。
(ポールタン、フリー・マレーシア・トゥデー、6月20日)

国際ハラルショーケース、今年は4日間のハイブリッド開催

【クアラルンプール】 ハラル(イスラムの戒律に則った)製品の国際展示会、マレーシア国際ハラル・ショーケース(MIHAS2022)が、今年は9月7ー10日の日程でハイブリッド方式で開催される。
第18回目となる今年は、▽製薬▽イスラム金融▽ファッション▽メディアとレクリエーション▽化粧品とパーソナルケア▽食品技術▽フランチャイズ▽イスラム教徒に優しい旅行▽サービスとイネーブラー▽教育▽ eコマースーーといった主要分野に新たにイスラム芸術と文化を加える。1,196のブースを設置する。
MIHASのモハマド・ムスタファ最高責任者(CEO)は、成約額について19億リンギを目標に掲げると言明。バーチャル商談会も実施し、400人に上ると予想される海外バイヤ 向けに国際調達プログラムを開催する予定だとした。
昨年の「MIHAS2021」は新型コロナウイルス「Covid-19」のためにバーチャルで3カ月にわたって開催され、成約額は21億3,000万リンギに達した。MIHASは2004年の第1回以来、マレーシアの輸出に累計約200億リンギ貢献した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、6月18日、ベルナマ通信、6月17日)

半導体チップ不足、国内産業に深刻な影響

【クアラルンプール】 世界的な半導体チップ不足は、多様な製品の生産遅延や生産コストの上昇を招き、国内産業にも深刻な影響を与えている。
ペナン州政府系投資会社インベスト・ペナンのリー・カーチョーン取締役は、英字紙「マレーシアン・リザーブ」の取材に対し、ペナン州ではパンデミック以来、サプライチェーンの混乱が続いているため、生産に影響が出ているとし、半導体を必要とする製品の増加だけではなく、半導体チップ不足を懸念する企業による在庫増加の動きも出ているため、しばらくは不足状況が継続するだろうとした。
マレーシア自動車協会(MAA)は、半導体チップなどの部品不足や出荷遅延により、4月の自動車総販売台数が3月の7万3,222台から23.2%減の5万6,213台となったと発表。アイシャ・アハマド会長は、半導体チップ不足は、自動車生産の中でも特に現地組立(CKD)に影響を及ぼし納車遅延の原因になっているとし、回復時期については現時点では予想ができないと述べた。
マレーシア半導体産業協会(MSIA)のウォン・シューハイ会長は、半導体チップ不足の影響を受け、国内での半導体部品の生産が滞っているとし、国内企業は、生産能力の向上を図っているものの、需要を満たすにはしばらく時間がかかるだろうと述べた。今後の見通しについては、ほとんどの半導体メーカーが増産体制をとっているため、徐々に需要が満たされていくと楽観視しているという。
(マレーシアン・リザーブ、6月13日)

飲料水のスプリツァー、設備投資に過去最大の1億リンギ

【ジョージタウン】 大手飲料水メーカーのスプリツァーは、今年1億リンギの設備投資を行うと明らかにした。生産ラインと水処理工場の新設、機械の更新、昨年取得した土地の費用残金を支払う。
ケニー・リム最高経営責任者(CEO)は、英字紙「ザ・スター」の取材に対し、1億リンギの設備投資は、同グループにとり過去最大で、年産能力は8.5億リットルから9億リットルに増加するとした。生産ラインと水処理工場の新設に2,500万ー3,000万リンギ、ミネラルウォーター製造施設用に取得したペラ州ブキガンタンの1,227エーカーの土地費用残金として7,610万リンギを割り当て、5年以内に製造施設を開設する予定だ。
タイピンの既存工場の稼働率は約70%。昨年はタイピンとジョホール州ヨンペンのミネラルウォーター工場の土地をそれぞれ7.4エーカー、6.1エーカー拡張し、新たに土地5カ所を合計350万リンギで取得。今年1月には、既存工場に隣接する土地(約60エーカー)を総額620万リンギで取得した。
リムCEOは、最大の懸念事項は原材料の高騰であり、樹脂価格は2020年は1トン当たり3,200リンギだったが、現在は5,800リンギに上昇したと言明。ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を包装材として使用しており、利幅が圧迫されていることから、昨年12月に販売価格を5%ほど引き上げたと説明した。今後、原材料の価格が上昇し続ければ、再度価格調整の必要もあるという。
一方でリムCEOは、今月1日に新しい企業ロゴを発表したとして、下半期には再生プラスチックの包装材利用を開始し、ラベルデザインも刷新すると述べた。またバリューチェーン全体のプロセス、市場占有率、販売量を常に改善し、国内飲料水業界で首位維持を目指し、中核ブランドへの投資、生産工程と生産能力の自動化、事業機会の追求、持続可能なパッケージ導入にも注力すると言明。ミネラルウォーターの利点や人体に悪影響を及ぼす可能性のあるマイクロプラスチックの混入がない点を強調するなど、製品の差別化を行い、コスト上昇の監視・管理対策、オンライン販売や海外市場の拡大などにも取り組むとした。
スプリツァーは、1989年に飲料水の製造・販売を開始。飲料水で40%の市場シェアを持ち、2000年9月にブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)メイン市場に上場した。
(ザ・スター、6月13日)

広告宣伝での宗教的要素の使用禁止、新規定を近く発表へ

【ペタリンジャヤ】 マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)は近く、商品の広告宣伝に宗教的要素を使用することを禁じる新たな倫理規定を発表する予定だ。

マレーシア通信マルチメディア・コンテンツ・フォーラム(FKKMM)のメディハ・マフムード専務理事によると、「2022年コンテンツコード」は、広告主が顧客を惹きつけるために宗教的要素を利用することを防ぐことを目的としており、年内にも施行される予定だ。例えば、「コーラン(クルアーン)の祈りで祝福され、病気を治す」「沐浴に最適」などと主張する商品は、販売者がその主張について詳しく説明し、証拠の提供が求められることになる。草案には、宗教だけでなく、扇動的・挑発的コンテンツ、性暴力行為などに対する規定も含まれるという。
メディハ専務理事は、新規定はイスラム教だけでなく、全宗教の宗教的要素に適用されると言明。宗教がマーケティング手法の一部として使われないようにするためだとした。宗教家が製品を宣伝するアンバサダーに就任することは禁止されないが、宗教的な主張により商品価値を誤認させることはできなくなる。FKKMMにはこれまで宗教を利用した広告宣伝について多くの苦情が寄せられており、消費者保護に加え、それらの苦情に対応するために新規定が設けられることになったという。
(フリー・マレーシア・トゥデー、6月8日)

景気回復までGSTの再導入はなし=財務省副次官

【クアラルンプール】 財務省のジョハン・マハムード・メリカン副事務次官は、新型コロナウイルス「Covid-19」で落ち込んだマレーシアの景気回復が確実に軌道に乗るまで、物品・サービス税(GST)再導入を含む新たな税制の導入は考えていないと言明した。
「インベストASEAN2022会議」に出席したジョハン氏は、「最初に明確にしたいが、GSTの再導入についてはまだ何も決定していない」とした上で、国の財政を強化するという財務省の使命に沿って、GSTの再導入に踏み切る可能性は高いと言明。「周知のように財務省は財政状況の改善を目指しており、我々はGST再導入も視野に入れている」と述べた。
その上でジョハン氏は、財務省としては新たな税制の導入でなく既存の税制体系の統合や再編に注力していると言明。「我々は段階的な財政再建に取り組んでおり、単に歳入を強化するだけでなく、歳出の効率化も含まれる。歳入については新たな税制ではなく既存の税制の見直しを中心にしており、現時点ではターゲットをどのように絞っていくかが重要だ」と述べた。
マレーシアは2015年4月1日付けでそれまでの売上税・サービス税に代わる税率6%のGSTを導入。しかし希望同盟(PH)政権時代の2018年9月1日付けでGSTが廃止され、売上サービス税(SST)が再導入された。
(エッジ、6月8日)