リンギの動きは人民元次第、エコノミスト見解

【クアラルンプール】 通貨リンギは1米ドル=4.4リンギ近くと過去最安値の水準にあるが、中国が経済活動を全面的に再開すれば短期的にリンギ値上がりの可能性もありそうだ。
エコノミスト、通貨ストラテジストによると、リンギの動向を左右する要因は複数あるが、最も影響するのは人民元の動きだ。
サンウェイ大学のイア・キムレン教授は「マレーシアは中国との貿易額が多く、中国経済の再開は元、リンギを押し上げる」と語った。
SPIアセット・マネジメントは「有価証券に資金が流入すると元は値上がりするが、リンギの値上がりは元より遅い。投資家は中国資産の方を優先するからだ」と語った。また中国経済の全面再開は強い元をもたらし、全アジア通貨に波及するという。
米国経済もリンギ相場に影響するが、Amバンクのアンソニー・ダス主任エコノミストは、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引引き締めの方針を転回しそうな場合、米ドルは値下がりの可能性もあると述べた。
(ザ・スター、6月7日)

セキュリティの米フォーティネット、顧客センターを設置

【クアラルンプール】 サイバーセキュリティ大手の米フォーティネットは2日、クアラルンプール(KL)市内中心部に位置するエクアトリアル・プラザにオフィスを移転し、カスタマー・ブリーフィング・センター(CBC)を設置すると明らかにした。

CBCでは、フォーティネットの最新ソリューションやテクノロジーに加え、次世代のサイバーセキュリティ機器を顧客企業に紹介していく。

新オフィスの開所式で、フォーティネット・マレーシアのカントリーマネージャーであるディクソン・ウー氏は、国内および近隣諸国でのデジタル化が急ピッチで進むにつれ、サイバー攻撃も増加かつ巧妙になっていると言明。それに対応するため、フォーティネットではイノベーションや人材育成に注力しているとし、セールスやマーケティング、情報セキュリティアナリスト、セキュリティエンジニア、コンプライアンスマネージャーなど、すべての中核分野における人材の採用に向け投資を続けていくとした。

国内のサイバー人材不足に対処するため、新オフィスでは従業員のスキルアップに向けた専用トレーニングスペースを設置する。また、マルチメディア大学(MMU)などの国内教育機関にリソースを投入し、トレーニングや認定、キャリア情報、雇用機会などを提供し、サイバーセキュリティ分野でのキャリア構築を支援する。

フォーティネットは2000年に米カリフォルニア州で設立。統合脅威管理(UTM)製品の開発・製造に携わる。公共部門、通信、金融などを中心とする企業に対し、セキュリティ機器を提供している。
(ベルナマ通信、6月3日)

ハラル経済の役割拡大を、首相がシャリア順守委の設立提案

【プトラジャヤ】 イスマイル・サブリ首相は5月30日、アブドラ・バダウィ元首相を記念したレクチャーで、世界情勢の先行きが不確実で、域内諸国同士の競争が激しいなか、マレーシアは経済に占めるハラル産業の役割を拡大するのが望ましいとの認識を示した。
マレーシアは、米調査会社ディナールスタンダードによる81カ国・地域のイスラム経済ランキングで9年連続1位の評価を得ており、特にイスラム金融で強みを持つが、イスマイル首相は、食品、観光、ファッション衣料、化粧品・薬品、メディア、娯楽の領域では改善の余地があると述べた。
イスラム金融は中央銀行バンク・ネガラ、ハラル産業はイスラム開発局と管轄が分かれているが、首相はハラル経済全体を見る機関としてシャリア(イスラム法)順守監督委員会の設立を提案した。
首相は「非イスラムの国もハラル商品の市場になり得る。ハラルは品質保証をも意味する」と述べた。
(ザ・スター、5月31日、ベルナマ通信、5月30日)

産業界、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足を歓迎

【クアラルンプール】  バイデン米大統領が23日に発足を表明し、日本、マレーシアを含む13カ国が参加した「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」について、業界団体は歓迎の意を表明している。
マレーシア製造業者連盟(FMM)は25日、IREFを通じて米国からの投資がさらに強化されることを歓迎するとし、米国から電気・電子(E&E)製品や医療機器などの分野で高品質な投資を得られることで、雇用創出だけでなく、技術移転や産業高度化を通じての地元メーカー育成にもつながると言明。国内製造業者は、IPEFから得られる戦略的・経済的利益を最大限に活用し、マレーシアを魅力的な投資先やサプライチェーンのハブにできると述べた。
マレーシア半導体産業協会(MSIA)は、通産省と米商務省が今月、半導体サプライチェーンの強化で協力覚書を交わしたことと合わせ、国内半導体業界、E&E業界にとって前向きな進展であり、世界の重要な半導体ハブの1つとしてのマレーシアの地位をさらに強固にできる上、半導体と電子機器のサプライチェーンを長期的に強靭にしてコストを下げるのに役立つと述べた。
IPEFは、インド太平洋地域における経済協力を目的とし、貿易、サプライチェーン、クリーンエネルギー・脱炭素化・インフラ、税・腐敗防止について地域共通基準を定めるもの。特恵関税制度は含まれていない。参加国は、▽米国▽日本▽マレーシア▽オーストラリア▽ニュージーランド▽韓国▽インド▽ブルネイ▽インドネシア▽フィリピン▽シンガポール▽タイ▽ベトナムーーの合計13カ国で、世界の国内総生産(GDP)の40%を占める。
(ザ・サン、ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月26日、エッジ、5月25日)

米ハーシー、ジョホールにR&Dセンターを開設

【クアラルンプール】 チョコレート製造の米ハーシー・カンパニーは13日、ジョホール州において研究・開発(R&D)センターを開設したと発表した。商品の開発やイノベーションを加速させる。
ハーシーは発表した声明の中で、R&Dセンターを開設したことにより、消費者の好みに合わせた新製品や革新的な製品を迅速に開発、テスト、発売できるようになると説明。面積は1万400平方フィートで、同社にとり米国外で最大規模のR&D施設の一つになるとした。
インドおよびアジア太平洋地域・欧州・中東・アフリカ(AEMEA)地域事業のハルジット・バハラ副社長は、同センターはAEMEA地域全体の拠点として機能すると言明。R&Dセンターの設立は、市場全体の消費者の好みを理解したいという同社の継続的な取り組みを反映するものと説明した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月14日、ベルナマ通信、5月13日)

政策金利引き上げ受け、銀行が次々と利上げを発表

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 中央銀行バンク・ネガラが11日に1.75%だった政策金利を2.00%に引き上げたことを受け、国内の銀行が次々と利上げを発表している。
銀行最大手のマラヤン・バンキング(メイバンク)は5月13日付けで、基準金利(BR)及び基準貸出金利(BLR)をそれぞれ0.25ポイント引き上げ、年率2.00%、5.65%とする。メイバンク・イスラミックもイスラム基準金利と基準融資金利(BFR)をそれぞれ2.00%、5.65%とする。メイバンクの金利見直しは2020年7月9日以来。
RHBグループも5月18日付けでBR及びBLRをそれぞれ0.25ポイント引き上げ2.75%、5.70%とする。RHBグループの金利見直しは2020年7月13日以来。
中銀の政策金利の引き上げは2018年1月ぶり。多くのエコノミストが低水準で推移するインフレ率を理由に政策金利を当面据え置くと予想していただけに市場では驚きの声が上がっている。
中銀は2018年1月に3.25%に利上げしたが、その後景気悪化への懸念を背景に2019年5月、2020年1月、同年3月、5月、7月に相次いで利下げを実施。2004年以来16年ぶりの低水準である1.75%となっていた。

パーム油輸出税の引き下げを検討=農園一次産業相

【クアラルンプール】 世界的な食用油の供給危機の懸念が高まる中、ズライダ・カマルディン農園一次産業相は、世界第2位の生産国であるマレーシアが食用油不足を補い且つ輸出シェアの拡大を目指してパーム油の輸出税を半分程度引き下げる可能性があると述べた。
ズライダ氏はロイターとのインタビューで、輸出税に関する検討を行うための委員会を設置した通産省に対して引き下げを提案したことを公表。現在8%となっている輸出税について、暫定措置として4%から6%に引き下げる可能性があると述べた。早ければ6月中に実施が決定される可能性があるという。
ロシアのウクライナ侵攻がひまわり油の輸出に影響を与えており、さらにインドネシアが国内需要を優先するためにパーム油輸出禁止を決めたことで世界的な食用油の供給懸念が高まっている。
ズライダ氏は「こうした供給危機に際して、輸出規制を緩和することでより多くのパーム油を輸出できるようになる」と指摘。また国内外の食品産業への供給を優先するために、国内のバイオ・ディーゼルの一部にパーム油を30%混合することを求める「B30」バイオディーゼル令の実施を遅らせることになると述べた。
(ロイター、ザ・スター、エッジ、5月10日)

中銀バンクネガラ、政策金利を2%に引き上げ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 中央銀行バンク・ネガラは11日、定例金融政策会合(MPC)を開催し、政策金利である翌日物政策金利(OPR)を0.25ポイント引き上げて2.00%とすることを決定した。中銀は2020年7月に0.25ポイント引き下げたのを最後に1.75%で維持しており、利上げは2018年1月以来、4年4カ月ぶり。
中銀は声明の中で、新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大に伴う影響を緩和させるため、2020年はOPRを段階的に引き下げ、これまでで最も低い利率を維持してきたと説明した。今回のMPCでは、国内の経済成長が堅調に回復してきており、最悪な状況は脱したと判断し、物価の安定や持続可能な経済成長を支えるためOPRを段階的に引き上げることを決定したと明らかにした。
最新の統計では、内需や輸出の成長により国内経済が堅調に回復していることが示されており、労働市場でも失業率の低下、労働力率の上昇、所得の見通しの改善が見られていると指摘。新型コロナのエンデミック(風土病)段階への移行に伴う規制緩和や国境再開が経済活動を活性化させると予想した。しかし世界経済の回復が予想を下回る可能性や、ロシアのウクライナ軍事侵攻、サプライチェーンの混乱悪化、新型コロナの今後の動向が成長リスクとなり続けるとした。その上で、今年のヘッドライン・インフレ率について、平均で2.2ー3.2%と予想。コア・インフレ率は2.0ー3.0%となるとの見解を示した。
一方で世界経済について中銀は、経済再開と労働市場の改善が経済成長を下支えしていると指摘。インフレ圧力を軽減するためにマレーシア以外でも中銀による政策金利の調整が行われると予想した上で、今後の世界経済の成長見通しは、ロシアのウクライナ軍事侵攻、新型コロナやサプライチェーンの動向、コモディティ価格の急上昇などの影響を受け続けるとの見解を示した。

極貧層の撲滅プログラム、5月中旬より実施

【クアラルンプール】 ムスタパ・モハメド首相府相(経済担当)は、5月半ばより「マレーシア家族・極度の貧困層撲滅プログラム」を実施すると発表。2025年末までに19万5,664世帯ある極度の貧困層を根絶したいと述べた。
ムスタパ大臣によると、極度の貧困層はサラワク州で5万8,611世帯、サバ州で3万1,598世帯と東マレーシアで多い傾向にあり、マレー半島部では、クランタン州で2万8,553世帯、ケダ州で1万5,964世帯となっている。
政府は、同プログラムの下で生活を改善するための支援を州政府などと協力して実施する。各世帯の収入増加を目指し、子供達の教育格差を埋めることにも焦点を充てる。第1期は80地域の5,000世帯を対象に実施する。うちサバ州とサラワク州のそれぞれ10地域、残りはマレー半島で行う。それぞれの地域によりニーズが違うため、各地域で戦略を変え、漁村では漁具などの提供、農村地帯では畜産などの支援を行うという。
(エッジ、5月1日、4月30日)

包装材のトングアン、生産拡大に1.5億リンギ

【ジョージタウン】 包装材のトン・グアン・インダストリーズは、フィルム材の生産拡大に向け1億5,000万リンギの追加投資を計画している。
アルビン・アン取締役によると、先ごろ拡張したばかりのケダ州スンガイ・プタニにある面積24エーカーの生産拠点で、インフレーションフィルムとストレッチフィルムの生産ラインをそれぞれ3基増やす。合計6基の生産ライン増設により2021年に年間18万トンだった生産能力が23万トンに拡大すると見込んでいる。
トン・グアンは2億リンギ超を投じて16エーカーだった拠点の面積を24エーカーに拡大し、生産施設3カ所を建設していた。うち1カ所ではストレッチフィルム素材を、他の2カ所では宅配便バッグと高級食品包装製品を生産している。
トン・グアンの売り上げの20%は日本向けで、米国や欧州、豪州向けが30%となっている。来年には米国でストレッチフィルム製造に乗り出す計画で、中西部ですでに建設地を特定し投資コストの計算に取り掛かっているという。
(ザ・スター、5月5日)