解散・総選挙実施論が浮上、ムヒディン首相の判断は?

 マハティール・モハマド前首相やアンワル・イブラヒム人民正義党(PKR)党首ら野党勢力がムヒディン・ヤシン政権打倒にむけて気勢を上げる中、与党・国民連盟(PN)構成党内からは解散・総選挙に打って出るべきとの声が高まりをみせている。

 気勢を挙げているとはいえ、本来なら合力すべきマハティール氏とアンワル氏は野党統一の首相候補の人選で対立しており、野党側の内部対立は簡単に解決しそうもない。

 一方で草の根ネットワークを国の隅々まで張り巡らしているPN構成党の統一マレー国民組織(UMNO)や汎マレーシア・イスラム党(PAS)は、国会における現有議席こそ少ないものの、一枚岩になりきれない野党側の状況をみて、いま直ちに総選挙を行なえば準備不足の野党に勝てると考えている。

 UMNOのモハマド・ハサン副総裁は先ごろ、政治的不安定な状況を解消するためとして総選挙の実施を主張した。実際UMNOとPASは6月初めにはすでに総選挙の準備にむけた会合を行ったとされ、両党の間で議席配分に関する交渉がかなり進んでいるという。

 では解散権をもつムヒディン首相本人の意向はどうかといえば、多くの政治アナリストはムヒディン首相が早期の解散・総選挙の要請に応じないと予想している。

 理由の一つはムヒディン首相率いる統一プリブミ党(PPBM)の内部対立だ。党内では草の根レベルで党会長職を追われたマハティール氏を支持する勢力が根強い。党内では一応ムヒディン氏支持で一致しているがマハティール氏はいまだに返り咲きを狙っており、ムヒディン体制は決して盤石ではない。

 マレーシア工科大学(UKM)のアズミ・ハッサン教授は、ただでさえ弱小勢力であるPPBMの内部対立が解消するまでは総選挙を回避するのではないかとみている。著名政治学者のウォン・チンフアット氏も同意見で、草の根組織、選挙組織が脆弱なPPBMにとって内部分裂している状況での総選挙実施は賢明ではないと指摘している。

 もう一つの問題は、PN政権の構造そのものにある。PPBMはPN構成党内で唯一、PH政権の生き残りであり、選挙の洗礼を受けていない現政権の正統性を示す存在でもある。だからこそ巨大勢力のUMNOやPASが弱小勢力であるムヒディン氏=PPBMを支えているわけだ。政治アナリストらは、ムヒディン内閣が解散・総選挙に追い込まれることになる、すなわち用なしになれば容赦なく牙を剥くと予想している。

 前出のウォン氏は、総選挙になった場合、PN構成党内で議席配分を行なう際にはPPBMはUMNOとPASに主導権を奪われることになり、前回総選挙のように50選挙区で候補を立てることは許されない立場に追い込まれるだろうと予想。たとえPNが選挙に勝ってもムヒディン首相の続投が認められないことになるだろうと述べている。

 ウォン氏は、選挙に勝っても先の見えないムヒディン氏にとっての最善の策が、議会改革を実施してPHの要求を受け入れPHとの停戦を模索することだと指摘。その方が「UMNOとPASに抹殺されるよりマシ」だとし、そうした穏健なやり方は政治的混乱を嫌う経済界や一般国民からも支持を集めるだろうと述べている。

 ウォン氏はさらに、UMNOとPASだけで過半数の議席を押さえることができないことにこそPPBMの活路があると指摘する。サバ・サラワク州の政党は、「最高落札額を提示した方になびく」傾向がありいつも日和見だ。真のPNの同盟者としてキャスティングボートの役割を担うことこそがムヒディン氏=PPBMの生き残る術だというわけだ。

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新型コロナ感染者が新たに2人、うち1人が国内感染者

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 保健省(MOH)は6月30日、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染者数が前日から2人増えて8,639人になったと発表した。

新規感染者のうち1人は海外から帰国しクアラルンプール国際空港で感染が確認されたマレーシア人。もう1人はサバ州で感染したマレーシア人だった。また新たに20人が退院し回復者数は8,354人に増加した。死者数は17日連続でゼロだった。

サバ州サンダカンのセントラルマーケットに勤務する従業員が新型コロナに感染したことを受け、サンダカン市議会のウォン・フーティン会長は29日、14ー28日間において同マーケットを訪れた人々に対し、「ケント公爵夫人病院」またはサンダカンの医療クリニックにて検査を受けるよう呼び掛けた。サンダカンは2カ月間、感染者数ゼロのグリーンゾーンに指定されていた。

PCR検査不要の日本人、入国時の抗原検査は120リンギ

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 保健省は、マレーシア入国時に実施される新型コロナウイルス「Covid-19」感染検査の検査料に関する新たな規則を発表した。6月29日付けで検査内容によってマレーシア国民は30—150リンギ、外国人は60—250リンギとなる。
6月26日に発表した新規則では、感染検査は入国審査の前に行なわれるが、どの検査を受けなければならないかは保健省事務次官が決定するとしている。
検査料は、クイック抗体検査の場合は30リンギ、クイック抗原検査の場合は60リンギ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査の場合は150リンギ。外国人の場合はそれぞれ60リンギ、120リンギ、250リンギとなっている。
在マレーシア日本大使館は、入国資格のある日本人駐在員および家族のマレーシア入国に際しては、日本国籍者について出国3日前のPCR検査受診及び陰性結果の提示が不要であることを保健省から確認をとったとしている。
大使館によると、PCR検査を受けていない日本国籍者は「PCR検査陰性結果がない者」として扱われ、マレーシア到着時に抗原検査受診が求められる。抗原検査陰性だった場合は14日間の自宅隔離となるが、陽性だった場合は病院に直行することになる。陰性だった者は、リストバンドを装着して生活し、13日目に改めて抗体検査を受け、陰性だった場合は結果を通知した上でリストバンドを除去し隔離が終了する。

ペナンヒルのロープウェイ計画、外資連合が新たな提案か

【ジョージタウン】 ペナン・ヒルで計画されていたロープウェイ建設計画について、中国やシンガポールの国際企業連合がルートを大幅に変更した新たなプランを提案している模様だ。「ザ・スター」が報じた。

企業連合が提案している新たな計画はペナン・ヒル頂上と観光地として人気のバトゥ・フェリンギに近いテルク・バハンを結ぶ全長6キロメートルで、中央に駅を1カ所設置。鉄塔は20基で、保守道路は全長10キロメートルとなり、総工費は当初の計画の三倍に当たる3億リンギと見込まれている。

当初のロープウェイ建設計画はペナン・ヒル頂上とペナン植物園(ボタニック・ガーデン)を結ぶ予定で、当時の希望同盟(PH)政権が昨年発表した今年度予算に1億リンギを計上。事業化調査が今年下半期に完了し、年末にも着工する予定だった。

しかし今年3月にPH政権に代わって国民同盟(PN)政府が樹立すると、同計画への資金拠出の取り止めを決定。このため同州政府が独自に継続していく意向を示していた。ロープウェイ計画には環境保護団体が反対しているため、ルート変更となれば新たな環境影響調査などが必要になる。

(ザ・スター、6月28日)

訪日マレーシア人、53.6%はリピーター=調査

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 アウンコンサルティング(本社・東京都文京区)は25日、2019年の訪日外国人の年間動向調査結果と2020年の予測を発表。2019年の訪日マレーシア人の53.6%はリピーターで、46.4%が初めての訪日であったと明らかにした。
2019年の訪日マレーシア人の平均消費額は11万2,814円で、前年から6,487円減った。団体パッケージツアーの料金は16万5,314円で、前年から7,850円低かった。個人旅行向けパッケージツアーの料金は11万7,131円で、前年から1万2,013円下がった。往復航空券の運賃は5万5,998円で、前年より402円高かった。
都道府県別の訪問率は、マレーシア人の訪問率がもっとも多かったのは東京都で17.6%となった。それに▽大阪府▽京都府▽千葉県▽北海道▽奈良県ーーが続いた。
グーグルのキーワードプランナーツール利用による検索数データによると、マレーシアのほか、インドネシア・フィリピン・シンガポール・タイ・ベトナムなどの東南アジア地域では、「白川郷」「銀山温泉」「上高地」といった、雪景色などの絶景が楽しめる観光地が近年人気を集めていることがわかった。

第2波の可能性低いが警戒続けるべき=専門家ら

【クアラルンプール】 政府は6月10日から8月31日まで復興のための行動制限令(RMCO)と位置づけて社会・経済活動の規制緩和を段階的に行なっているが、感染症専門家からは「第2波が来る可能性は低いが警戒を続けるべき」との声が上がっている。
マレーシア科学大学(USM)のカマルル・イムラン・ムサ准教授は、集団感染が今後も散発的に起きるものの感染爆発が起きる可能性は少ないとみているとした上で、政府が再び行動制限令(MCO)第一段階に戻す可能性は低いが、感染が続いているエリアを選んで強化行動制限令(EMCO)に指定する可能性はあると指摘。政府が高リスクの場所を重点的にスクリーニングして疑わしい症例では隔離を行なうべきだと主張した。
マレーシア公衆衛生師会のザイナル・アリフィン会長も同意見で、「巨大な第2波ではないが、いくつかの小さなクラスターが今後も発生する可能性がある」と指摘。クラスターは建設現場、ナイトマーケット、社交イベントなどの多くの人が集まる場所から出現する可能性が高いため、政府は地区レベルでの監視を強化し、国境での厳格な検査を実施し、コミュニティと緊密に連携する必要があると指摘した。
感染症専門家のアディーバ・カマルルザマン教授は、今後何が起こるかを予測することは困難であり、「警戒を続ける」ことがより重要であると指摘。今後も検査を続け脆弱なグループで起こり得る小さなクラスターをキャッチして速やかに隔離する必要があるとし、国境封鎖を続けるべきと述べた。
(ザ・スター、6月29日)

野党の首相候補人選、サバ遺産党党首案が浮上

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 野党側の統一首相候補の人選が膠着状態にある中、マハティール・モハマド前首相が妥協案として希望同盟(PH)の友党であるサバ遺産党(ワリサン)のシャフィー・アプダル党首を首相候補として推す案を発表した。実現すればサバ・サラワク州からの首相選出は建国以来初めてとなるため注目されている。
マハティール氏は当初の自身が三たび首相となる構想をPH側に提案していたが、PHを率いるアンワル・イブラヒム人民正義党(PKR)党首が首相候補に決定済みだとしてPKR側が拒否。マハティール氏は「ムヒディン・ヤシン政権打倒に向けた協力をPKRが拒むのであれば、別の方針を模索する」とPKR側に最後通牒を突きつけていた。
マハティール氏はさっそく25日にPKRを除くPH構成党及び友党のリーダーと会合を開催。この中でマハティール氏はPH構成党ではないシャフィー氏を推す案を出し、ほかの野党から支持を得たと主張している。マハティール氏自身が一歩退く決意をPKR側に示すと共に、下院でキャスティングボートを握るサバ・サラワク州の民意を味方につける狙いがあるとみられる。
またマハティール氏は、アンワル氏について第1副首相候補として推す案を出し、実子のムクリズ・マハティール前統一プリブミ党(PPBM)副党首を第2副首相候補として推す案を出し、これも了承されたとしている。
これに対しPKRのサイフディン・ナスシオン書記長は、いかなる決定もPHの最高幹部理事会の決定を経る必要があると指摘。ただし新たな提案については話し合う用意があるとしている。

新型コロナ感染者が新たに3人、うち2人が国内感染

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 保健省(MOH)は29日、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染者数が前日から3人増えて8,637人になったと発表した。
新規感染者は全員マレーシア人で、1人はニュージーランドとフィジーへの旅行歴がある帰国者。2人はセランゴールとサバ州でそれぞれ感染した。また新たに16人が退院し回復者数は8,334人に増加した。死者数は16日連続でゼロだった。
保健省のノール・ヒシャム事務次官は26日、治癒中の感染者が191人に減少し、行動制限令(MCO)が施行された3月18日以降初めて200人を下回ったと発表した。また国内の回復率が96.4%と、東南アジア諸国連合(ASEAN)間において高水準となり、死亡率も1.41%と、世界規模で最小値を記録したと述べた。企業およびコミュニティにおける標準運用手順(SOP)の順守がこれらの成果に貢献したと言明。復興のためのMCO(RMCO)を成功させるため、引き続き規定のSOPおよびアドバイスに従うよう改めて国民に呼びかけた。
■セランゴール州アンパンでマラリア患者、地元住民も感染■
セランゴール州アンパンで地元住民を含む14人がマラリアに感染していたことが分かった。ノール事務次官によると、インドネシアのアチェ州で感染したインドネシア人の建設労働者から感染が拡大した。
感染者はインドネシア人が9人、バングラデシュ人が3人、マレーシア人とネパール人がそれぞれ1人の14人に上った。12日に初めて感染を確認し、現在は制御下にあるという。予防措置の一環としてフル・ランガット地区の保健局は、193件の家に残留噴霧を行い、340人の労働者に薬用蚊帳を配布した。

駐在員の入国手続き、日本人は事前のPCR検査が免除に

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 マレーシア出入国管理局は23、24日に一部の外国人駐在員と家族に関する24日付けの入国手続きについて最新情報を発表。懸案となっていた入国許可の要件となっていた出発前の新型コロナウイルス「Covid-19」のPCR検査については、日本大使館の問い合わせに対し、日本人を適用除外とすることを確認した。
出入国管理局からの入国許可が不要なのは、就労パス・カテゴリー1(EP1)及び居住者パスー技能(RPT)保持者とその家族。出発前のPCR検査は不要。ただしマレーシア入国時に感染情報アプリ「MySejahtera」アプリのインストール、14日間の自宅隔離を行なう必要がある。また保健省の指示があればPCR検査を受ける必要がある。
専門職訪問パス(PVP)、就労パス・カテゴリー2(EP2)及び扶養家族、就労パス・カテゴリー3(EP3)などはグリーンゾーン国(現時点では豪州、ブルネイ、ニュージーランド、シンガポールの4カ国)に指定されてない日本の場合は入国許可をとる必要がある。まずは管轄官庁から必要な職種であるということを証明するサポートレターをもらい、それを添えて出入国管理局に申請する。
これらのカテゴリーでも24日付けで出発前のPCR検査は不要となる。ただしマレーシア入国時に感染情報アプリ「MySejahtera」アプリのインストール、14日間の自宅隔離を行なう必要がある。また保健省の指示があればPCR検査を受ける必要がある。ただ緊急業務のため入国するPVP保持者は隔離は不要。

テクスケムが冷凍食品を開発、「すし金」やネットで販売へ

【クアラルンプール】 日系テクスケム・リソーシズは、冷凍食品を開発しており、近く回転寿しレストラン「すし金」やECプラットフォームで販売を開始する予定だ。
テクスケム・グループの創業者で会長の小西史彦氏によると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で生活スタイルが変化したことに伴い若い消費者の需要に応えるために冷凍食品の開発を決めた。
コロナウイルスの影響について小西氏は、世界的にロックダウンが実施され世界経済に影響を及ぼしたと指摘。同社は影響を緩和するためコストの効率化や宅配サービスなどマーケティングのイニシアチブを変え、キャッシュフローの改善に努めるなど様々な対策を講じたことを明らかにした。また個人用保護具(PPE)や衛生用品の生産を開始したと言明。「テクス・シールド」というフェイスシールドをマレーシア、日本、シンガポール、米国、タイ、インドネシア、ベトナムに供給したことを明らかにした。産業部門では、表面消毒剤と、手指消毒剤も生産しているという。
同社の昨年の売り上げは11.3億リンギで、税引き前利益は81万5,000リンギだった。食品部門と好調だったが、生産部門は米中貿易戦争などの影響で利益マージンに影響が出た。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月26日)