500万リンギ未満の中小企業の電子インボイス、来年以降に延期

【クアラルンプール】 内国歳入庁(IRB、LHDN)は5日、今年7月1日付けで完全導入義務化が予定されていた電子インボイスについて、年間売上高が500万リンギ未満の中小企業(SME)を対象に導入期限の延期を発表した。

今回、年間売上高が2,500万リンギ未満50万リンギ以上のSMEを、さらに細かく3つのカテゴリーに区分。500万リンギ以上は予定通り7月から導入されるが、500万リンギ未満―100万リンギ以上は2026年1月、100万リンギ未満―50万リンギ以上は2026年7月にそれぞれ期限を延長し、50万リンギ未満は当面免除とした。加えて、各段階における義務化発効後6カ月間の猶予期間も認めている。

今回の延期について内国歳入庁は、SMEがより十分な準備期間が必要としているため、とする。これに対し、マレーシア華人商工会議所(中華工商聯合会、ACCCIM)や中小企業協会(SAMENTA)は歓迎しつつ、中小企業協会のウィリアム・ン会長は免除対象を100万リンギ未満からにするよう求めている

電子インボイスについては、昨年8月1日からの第1段階では1億リンギ以上、今年1月1日からの第2段階では2,500万以上と、段階的に導入された。当初は第3段階として2,500万リンギ未満は7月1日から一斉に導入される予定だったが2月に50万リンギ未満のSMEに対しては2026年1月1日への延期が発表されていた。
(ザ・スター、6月7日、ベルナマ通信、6月6日、エッジ、6月5日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第901回:中小企業の両利き経営(4)深化が好まれる理由

第901回:中小企業の両利き経営(4)深化が好まれる理由

前回は、競争や変化の激しい業界においては、深化よりも探索を戦略の中心に据えることが合理的であることを示しました。

しかしながら、中小企業の多くは深化を好みます。これは、深化には非合理的な側面と合理的な側面の両面があるからです。英国の新興B2Bテクノロジー企業180社を対象とした研究では、主要顧客への依存は、製品開発へのモチベーションを低下させるなど、企業の存続に大きな悪影響を及ぼすことが示されました。しかし、こうしたリスクを乗り越えて生き残った企業では、顧客ポートフォリオの成長にプラスの影響が及ぶという逆説的な結果が示されました(Yli-Renko et al., 2020)。これは、長年にわたって深化を続けることで主要顧客との良好な関係を維持した中小企業は、その評判を利用して新規顧客を獲得できる可能性があることを示唆しています。

一見非合理的に見える深化をなぜ中小企業が続けるのかを考える上で、この研究は大きな示唆を与えてくれます。例えば、日本では大企業と中小企業が系列システムを形成しており、中小企業は既存のサプライチェーンの中で大企業が求める仕様の製品・部品を迅速かつ正確に供給するために、ラディカル・イノベーションよりも、プロセス・イノベーションやインクリメンタル・イノベーションに取り組むことが期待されてきました。このような環境下では、新たな情報ネットワークを必要とする探索よりも、既存の情報ネットワークを活用した深化が企業業績に大きく影響します。したがって、このような状況下では、既存顧客への満足が最も合理的な生存戦略であるため、探索を行わない中小企業をイノベーティブではないと批判することはあまり建設的ではない可能性があります。

そうはいっても、時代は大企業への依存から脱することを中小企業に求めています。中小企業の取るべき戦略はどのようなものでしょうか。次回に続きます。

Kokubun, K. (2025). Digitalization, Open Innovation, Ambidexterity, and Green Innovation in Small and Medium-Sized Enterprises: A Narrative Review and New Perspectives. Preprints. https://doi.org/10.20944/preprints202504.0009.v1

Yli-Renko, H., Denoo, L., & Janakiraman, R. (2020). A knowledge-based view of managing dependence on a key customer: Survival and growth outcomes for young firms. Journal of Business Venturing, 35(6), 106045. https://doi.org/10.1016/j.jbusvent.2020.106045

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

KLIAエアロポリス本格始動、航空産業に特化の工業団地が起工

【クアラルンプール】 航空宇宙産業に特化した工業団地、セランゴール・エアロパーク(SAP)の起工式が5日、クアラルンプール新国際空港(KLIA)の隣接地で行われた。セランゴール州政府は、16日から開催される世界最大規模のパリ航空ショー(パリ国際航空宇宙ショー)で、SAPを含めたKLIAエアロポリス構想をアピールし、世界的な誘致に取り組む。

SAPは、空港運営会社マレーシア・エアポーツ・ホールディングス(MAHB)と、州政府系企業メンテリ・ベサル・セランゴールが提携して開発する。600エーカー(243ヘクタール)で、総開発価値(GDV)は23億リンギが見込まれる。第1フェーズとして開発される200エーカー(81ヘクタール)のうち半分は、米国の航空機エンジンメーカー、GEエアロスペースがMRO(保守・整備・オーバーホール)施設などの建設用地として確保している。残る400エーカー(162ヘクタール)は2028年以降、段階的に開発していく。

KLIAエアロポリスに関しては2022年、MAHBに対し、連邦政府所有地8,500エーカーの99年間のリースおよび開発権を付与している。

セランゴール州のアミルディン・シャリ州首相は「KLIA第2章の始まりであり、空港だけでなく、産業とサプライチェーンを統合した完全なエコシステムを構築する」と述べた。現在、国内の航空宇宙産業の68%超が同州に集中しているが、さらに2030年までに73%に引き上げるとしている。

アンソニー・ローク運輸相は「東南アジアにおけるトップクラスの航空貨物ハブを目指している。目指すのは、銅メダルや銀メダルではなく、金メダルだ」と意気込む。中国と協力して、「エア・シルクロード」構想のもと、KLIAを東南アジアと中国を結ぶゲートウェイとして強化していく方針も示している。
(マレーシアン・リザーブ、6月6日、ビジネス・トゥデー、6月6日、6月5日、エッジ、6月5日)

ペラ州、デジタル経済を基盤とする2つの戦略計画を発表

【イポー】 ペラ州政府は4日、「州デジタル経済行動計画2030」と「州スマートシティ・ブループリント2040」を発表。デジタル経済を基盤としたインクルーシブ(包摂的)で持続可能、かつ競争力のある州への変革を図る。

州政府は2021年に、デジタル経済など9つの主要課題からなる「州計画2030」を策定しているが、今回の2つの戦略計画はそれを補完するもの。特に、デジタル経済行動計画は技術や人材開発、ブループリントはインフラ整備を軸に、企業や研究所、地域社会など幅広い意見を採り入れ策定した。

サアラニ・モハマド州首相は「現在の需要に応えるだけでなく、将来の課題にもより効果的かつ持続的に対応できる弾力性を持つもの」と述べた。また州計画2030を主導する、州開発公社のレザ・ラフィク最高経営責任者(CEO)は「両計画を通じ州の競争力を強化し、州公共サービスの効率性、都市管理、そして住民の生活の質全体を向上させることを目指している」と付け加えた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、6月4日)

MM2H支援のセカンドホームプラン設立、中国などに注力

【クアラルンプール】 外国人の長期滞在を奨励するマレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)プログラムのサポート業者、セカンド・ホーム・プランが4日、正式に設立された。中国、台湾からの申請者を中心に、年内に最大300人のMM2H申請者の処理を目指すという。

2002年に始まったMM2Hは、昨年6月、申請できる年齢が25歳以上で、年間で90日以上の現地滞在が必要となるなど制度が見直されたほか、申請代行業者のライセンス要件が厳格化された。

同社のジューン・チャン社長は「現在のMM2H制度で申請がしにくくなったという意見もあるが、タイ、インドネシア、ベトナムといった競合国に比べ、中国や台湾、中東などからの申請希望者に対し有利な立場にある」と指摘する。

また現在、140以上のMM2Hライセンス業者が登録されているが、すべてが実際に事業を展開しているわけではなく、同社はビザ申請代行だけでなく、生活全般のサポートなど、東南アジアで最も信頼されるサービスを目指していく。すでに中国浙江省マレーシア海外友好協会とMM2Hの促進に関する覚書(MoU)を締結したという。

同社は、現在のイブラヒム・イスカンダル国王の長女トゥンク・カマリア氏が会長を務めている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、エッジ、6月4日)

フアットライ、国内最大のケージフリー卵生産施設を年内稼働へ

【クアラルンプール】 大手養鶏業者のフアット・ライ・リソーシズは、2025年第4四半期までにマラッカ州に国内最大のケージフリー鶏卵生産施設を稼働させる予定だ。

最先端の多層式鶏舎システムで20万羽の採卵鶏を飼育する予定で同社のケージフリー卵生産能力を大幅に向上させると期待している。2012年にシンガポールの子会社、チューズ・アグリカルチャーで開始したケージフリー養鶏事業の大幅な拡大となる。

数カ月以内に、同社は現在20万羽の鶏を飼育している既存の鶏舎10棟をケージフリーシステムに転換する。新施設の稼働によりフアット・ライのケージフリー飼育能力は6万羽から4倍以上に増加し、国内外の市場に向けて、より手頃な価格で安定的にケージフリー卵の供給が可能になる。

ケージフリー卵は今後も需要拡大が期待されており、GMOリサーチの調査によると、マレーシアの消費者の77%はケージフリー鶏卵が好ましいと回答しており、62%は価格上昇の受け入れ、多くは10―25%の価格上昇を受け入れる考えを示しているという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ビジネス・トゥデー、エッジ、6月5日)

ベーカリーの韓トゥレジュール、サンウェイピラミッドに1号店

【クアラルンプール】 韓国の大手ベーカリーチェーン「トゥレジュール」のマレーシア1号店が4日、セランゴール州のショッピングモール「サンウェイ・ピラミッド」にオープンした。14日にはクアラルンプール市のショッピングモール「サンウェイ・ベロシティ」でも開業を予定している。

新規出店は、トゥレジュールを運営する韓国財閥CJグループの外食子会社、CJフードビルと、マレーシアのストリーム・エンパイア・ホールディングスの子会社SEHフードが1月に締結したマスターフランチャイズ契約に基づくもの。

サンウェイ・ピラミッド店は約60坪で、モール2階に位置する。あんパンの5.9リンギをはじめ、高めの価格帯になるが、焼きたてパンにこだわったプレミアムイメージ戦略を推進。インドネシアで運営しているハラル(イスラムの戒律に則った)認証を受けた工場を基盤に、マレーシア国内でも展開を強化していく。

1997年創業のトゥレジュールは現在、米国など9カ国で約560店を展開している。CJフードビルは今後、東南アジア市場への展開を加速させる計画。マレーシアのベーカリー市場は2023年に30億2,000万米ドルで、今後5年間は年平均5.19%の成長を見込んでいるという。
(ベルナマ通信、ザ・コリア・エコノミック・デイリー、6月4日)

岡山大学がマレーシア事務所開設、日本留学促進に向け

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 岡山大学(本部・岡山市北区)は、マレーシア・プトラ大学(UPM)内に岡山大学日本留学情報センター(OJEIC)マレーシア事務所を開設した。5月16日には那須保友学長、四方敬之・在マレーシア日本大使ら100人以上が出席して開所式が行われた

文部科学省受託事業「日本留学促進のための海外ネットワーク機能強化事業」の一環で、同事務所をマレーシアにおける日本留学情報の発信拠点として、UPMを含む現地大学、関連機関、同窓会組織などと連携しながら、日本留学を志す学生の支援活動を一層推進していく。

開所式典前には記念日本留学セミナーが実施され、日本留学に関心のあるUPMの学生ら約90人が参加した。セミナーでは事業実施で連携している国立六大学の各代表者による大学および特色ある研究やプログラムの紹介があり、UPMおよび岡山大学卒業生が日本留学の体験談を語った。セミナー終了後には、登壇者と参加学生が直接交流できる機会も設けられ、参加学生からは日本留学への多くの関心と反響が寄せられた。

国内の産業への影響懸念強まる、米鉄鋼・アルミ関税50%で

【クアラルンプール】 米国が4日付けで鉄鋼・アルミニウムに対する関税を従来の25%から2倍の50%に引き上げたことを受け、マレーシアの産業界に懸念が広がっている。

マレーシア鉄鋼産業連盟(MISIF)のロシャン・M・アブドラ会長は「マレーシアは米国に大量の鉄鋼を輸出しているわけではないが、今回の関税引き上げは、下流鉄鋼メーカーに重大な影響を与えるだろう」と述べた。

また、米ASEANビジネス協議会(USーABC)のマール・ミーリー副会長兼最高政策責任者は「マレーシアにすぐに深刻な影響を与えるわけではないかもしれないが、将来的にはグローバルサプライチェーンの中でマレーシアの産業にも直接的な影響を与える可能性がある」と警鐘を鳴らす。

2023年のマレーシアの鉄鋼総輸出量820万トンのうち、米国市場は3.9%(32万2,282トン)だった。一方で、トランプ政権の関税措置の影響で、今年に入りマレーシア企業などに、中国を中心とした国々から鉄鋼の輸出オファーが急増。さらに今回の関税倍増措置で、これまで米国に輸出されていた鉄鋼がさらに東南アジアに流入し供給過剰を招き、マレーシアも価格圧力と貿易変動の影響をより強く受けると懸念する声が上がっている。

またマレーシア政府は先月、ブリキ製品に関し、日本などに反ダンピング関税を課したが、こうしたダンピングが激化し、対応に追われる可能性もある。

マレーシアと米国の関税交渉の一方で、東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国としてどう対処すべきか、MISIFなどは政府に対し迅速な対応を求めている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、6月2日、エッジ、ベルナマ通信、6月4日)

マハティール元首相、野党PPMB及びPASとの連携発表

【プトラジャヤ】 マハティール・モハマド元首相は、現政権が解決できずにいるマレー人が直面する問題の解決を目指し、野党・統一プリブミ党(PPBM、ベルサトゥ)及び汎マレーシア・イスラム党(PAS)と連携し、マレー人結束を目指す運動を立ち上げると発表した。

マハティール氏とPPMB及びPASは、すべてのマレー人が一つのグループに所属できるよう、「大きな傘(payung besar)」と呼ぶ非公式の運動を立ち上げることに合意した。運動に賛同する者は与野党を問わず超党派で受け入れる考え。4日の記者会見には、PPBMのムヒディン・ヤシン党首(元首相)、ハムザ・ザイヌディン副党首、PASのイブラヒム・トゥアン・マン副党首らがマハティール氏と共に出席した。

マハティール氏は、「マレー人民事務局委員会」と称する新たな運動について、「政治的動機に基づくものではなく、マレー人が直面する問題を解決するためのプラットフォームとして機能する」とした上で、「マレー人の権力回復という運動の目標は、最終的に政権を奪還した場合にのみ達成できる」と強調した。

マハティール氏は、「現時点では、マレー人にはまだ献身的な擁護者がいない。我々は今、他の問題には関心がなく、ただ一つ、マレー人を救う闘いに集中したい」と言明。「マレー人が直面している多くの問題は、政府がマレー人によって支配されなければ克服できないことを我々は知っている。だからこそ、我々は権力を取り戻し、マレー人が直面している問題に対処できる道を見つけるために闘っている」と述べた。

なお今後の運動の行方についてマハティール氏は、「マレー人の勝利を確実にするために準備を進める」とだけ述べ、政党化して次期総選挙に立候補するかどうかに関しては明言しなかった。
(エッジ、6月4日)