本記事は、日系旅行代理店、日本旅行グループ・サンライズ・ツアーズ&トラベル取締役の壁田忠幸さんへのインタビュー記事の後編です。
中編:旅行業界、コロナ時代の生き残り策(中)
前編:旅行業界、コロナ時代の生き残り策(前)

バーチャルツアーの未来

——高齢化社会が進めば当然、リアルツアーに参加したくても参加できない超高齢者がどんどん増えます。障害者だけでの問題ではないですよね。

壁田:ご指摘の通りです。私がこの考えに至るヒントをくれたのは当社が実施したバーチャルツアーの参加者です。参加後のアンケート回答に「このバーチャルツアーをプライベートでやってもらえませんか?」という声がありました。リアルでは飛行機に乗って海外旅行出来なくなった高齢のおばあちゃんと一緒に家族旅行をしたいというのでした。

旅行業界も他の産業と同様に時代の変化に揉まれ試行錯誤を繰り返しながら今の形に辿りついています。この期に登場してきたバーチャルツアーにはどん意味や価値あるのでしょうか?それとも無いのでしょうか。少なくても当社が実施するバーチャルツアーを少しでも良いものにしたいとする動機はこんなところにあったりします。

——今現在では商品として未成熟なバーチャルツアーでお金をとるのは難しいかもしれませんが、テクノロジーの発達しだいで今後どうなるかわからないですよね。5Gになればネット速度が上がるのでオンライン動画の使い方ももっと変わってくる。

壁田:とても楽しい想像ですね。「はい皆さんランチです」とマレーシアのバーチャルツアー添乗員(MC)が画面か参加者へ声をかける。日本からの参加者のご自宅に「ナシレマ」がタイムリーにデリバリーされる。そんな未来は決して遠くなくて、今はその入り口に立っているかもしれません。リアルツアーに参加できない人にとってもよりリアルに近い体験ができる日やってきそうな気がしますね。

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——ラフレシアを見に行くバーチャルツアーで、実際にラフレシアの花のクサい臭いがしたら面白いですよね。

壁田:ニオイのデジタル化ですね。ますますバーチャルツアーの可能性を感じますね。

——ユーチューバーが世界中いたるところに行って動画に上げていますよね。バーチャルツアーは専門ガイドが丁寧に解説してくれるという点ではユーチューブとは差がありますが、どれだけ付加価値が付けられるかですね。

壁田:昨今影響力のあるユーチューバーを使い、商品造成や告知をしてもったりしている旅行会社もあるようですね。ユーチューバーとして稼げる人が企業案件として旅行会社と組み、旅行会社代わって実質上の販売者になっているわけです。時代に沿った当然の流れですし集客機能としては見習うべき点が多いです。一方で「ツアーを作って運営する」や「サービスの対価を頂戴している」等、の考えに基づく伝統的な「おもてなし」の本質や精神を忘れないようにしたいとも思います。

——その第一段階がオンライン旅行の出現でした。より安く航空券やホテルを手配し、ユーチューブの案内に従って自分で行くという形が若者を中心に主流になりつつあります。一方では「この人が添乗員をするから参加する」というようなツアーもいまだに人気を博しています。

壁田:昨今はリアル・トラベルエージェントがオンライン・トラベルエージェント(OTA)に市場を奪われる構図となっています。コロナ禍ではリアル、OTAともどちらもダメージは大きいのですが、OTAは「人の力」に支えられるところがリアルに比べて少ない分、「困難な時期を乗り越える」ことだけを考えると有利ですね。逆にリアル・トラベルエージェントは正念場と言えます。ここで淘汰されるようではポスト・コロナでもOTAとの戦いには勝てないのだと感じます。

—リアル・トラベルエージェントの在り方は将来的に変わっていくのでしょうか?

壁田:普遍だと思います。最終的には「お客様の心をどうやって満足させられるのか?」、これは永遠の挑戦です。人の心を人の力を使って満足させようとするのがリアル・トラベルエージェントです。簡便な機能や低価格で満足を迫るオンライン・トラベルとの役割分担はより一層明確になっていくでしょう。