【クアラルンプール】 日本貿易振興機構(ジェトロ)は、日本、マレーシア両国企業の新分野での協業を促進する方針だ。

佐々木伸彦理事長は「ベルナマ通信」の取材に対し、今年40周年を迎える「ルックイースト政策(東方政策)」により両国企業に強い関係が築かれたとし、ジェトロでは貿易・投資関係の強化を目指し、特にスマート製造、カーボンニュートラル、日本食品のハラル(イスラムの戒律に則った)対応などの推進を考えていると述べた。

スマート製造では、今年度、日本の大手企業やベンチャーキャピタルとマレーシア企業間のマッチング支援を強化し、双方向のビジネス形成の基盤を醸成。日本企業、スタートアップ、デジタル企業間の国際的なオープンイノベーション創出のためビジネスプラットフォーム「ジャパン・イノベーション・ブリッジ(J-Bridge)」を通じて、グリーン分野でのビジネスマッチングも支援する。

カーボンニュートラルでは、ジェトロはマレーシアの主要企業をまとめた報告書を提供し、ウェビナーを開催する。脱炭素化の推進は日本にとって重要な投資活動で、「環境・社会・企業統治(ESG)」問題もサプライチェーンに大きな影響を与え始めており、ESGが投資や融資、取引の条件となっており、ESG課題を尊重する姿勢が国際競争力の源泉になっているという

日本食品のハラル対応では、クアラルンプールでハラル認証を受けた、あるいはムスリムフレンドリーな(イスラム教徒への配慮のある)日本食サンプルを常設展示し、マレーシアのバイヤーに商品紹介やサンプル提供を行い、オンライン商談も行う。常設展示品の一部は、9月に開催される「マレーシア国際ハラル・ショーケース(MIHAS)」に出展する予定だ。

佐々木理事長は、新型コロナウイルス「Covid-19」の感染拡大を契機に、貿易の枠組みや協定が新たに生まれ、貿易や投資が拡大する可能性が高いとコメント。今年第1四半期の日本ー東南アジア諸国連合(ASEAN)間の貿易総額は約630億米ドルで、9年半ぶりの高水準となったとし、マレーシアとの貿易も拡大しており、今年第1四半期には100億米ドルを超え、2019年第1四半期と比べ30%増加したと述べた。マレーシアへの直接投資も2021年には21億米ドルで、2015年以来最高となっているという。

一方で、米中摩擦やロシアのウクライナ侵攻により経済的安全保障が重要な課題だと指摘。地政学的な観点から、不測の事態に備えた、回復力の高いサプライチェーンの構築が重要になってきており、ジェトロは、日本とASEANのサプライチェーンを強化するため、海外生産拠点の多様化に向けた設備導入や実証実験などの支援も行っていると述べた。
(ベルナマ通信、8月14日)