第498回 マレーシアの人口、これからどうなる?

5月14日、マレーシア統計局は、マレーシアの2024年第1四半期の推計人口が前年同期比2.3%増加して3400万人になったことを発表しました。うち3060万人がマレーシア国民、340万人が外国人となっています。国連人口部の最新の中位推計によれば、マレーシアの人口は2060年代に4200万人台でピークとなり、2100年には3950万人前後となることが予想されています。マレーシアの人口は、これから40年前後は増勢が続くことになります。

一方で隣国のタイですが、2023年末の人口が前年比0.06%減の6605万人となったことが発表されました。ただ、これは住民登録データに基づくもので、国連人口部の中位推計では2023年の人口は7180万人、2029年の7209万人をピークに人口減少が始まり、2100年には4457万人とマレーシアの水準に近づくことが予想されています。

図は縦軸に労働力人口に対する高齢者人口の比率を、横軸に一人当たり所得(名目米ドル)をとったものです。橙線は単回帰による世界標準の関係を示しています。橙線より上の国は所得水準に対して高齢者/労働力比率が高く、高齢者ケアの現役世代への負担が大きくなることが予想されます。

マレーシア(MYS)は一人当たり所得が10,960米ドル、高齢者/労働力比率が9.7%となっており、橙線よりもずいぶん下です。所得水準がほぼ同じの中国(CHN)の高齢者/労働力比率は17.6%とマレーシアの倍に近い水準で、世界標準を上回ります。タイ(THA)についても一人当たり所得が7080米ドル、高齢者/労働力比率が18.7%でマレーシアの7割程度の所得水準で高齢者/労働力比率は中国を越えています。

このようにアジアの同程度の所得水準の国と比較して、マレーシアの高齢者ケアの現役世代への負担は、所得・人口動態からは軽くなることが予想されます。これが、マレーシアの民間消費がこのところ好調な大きな要因となっていると考えられます。

ちなみに、一人当たり所得が5万ドル付近に高齢者/労働力比率が49.9%と世界でも突出して高い国があります。日本(JPN)です。これは既に手がつけられない水準で、1000万人単位の外国人労働者を導入するか画期的な技術革新がないかぎり、日本の高齢者ケアは非常な困難状況に直面する可能性が高いと考えられます。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所海外調査員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp