第553回:マレーシアの輸出、どこまでAIバブル?

7月20日、マレーシアの6月の輸出額が前年同月比で45.4%増と発表されました。国別では、米国が首位で前年同月比108.6%増、2位がシンガポールで47.6%増、3位が中国で36.1%増となりました。図1は上位3カ国の輸出額の変化を3カ月移動平均でみたものです。ここ数カ月で、米国向けの輸出がさらに一段増加していることが分かります。

表1は2026年上半期の米国向けの輸出をHSコード6桁レベルで示したものです。総額では54.8%増と大幅に増加しています。輸出額の首位は「集積回路の部分品」で前年同期比で約5倍になっています。これは実際には何なのかと考えると、ヒントは米国側の統計にあります。米国側で、この金額と見合うのは「PC等用プリント基板(8473.3011)」です。これは、連載521回でも登場していますが、その時は、マレーシア側で見合うのが「パソコン用処理装置(8471.50)」だったので、ノートPC用のプリント基板と推測しました。

今回は、マレーシア側の分類ではが「集積回路の部分品」なので、ノートPCの基板よりもさらにモジュール寄りであり、この金額の急増ぶりから考えると、「AI半導体関連のモジュール」であると推測されます。

輸出額の2位「プロセッサ・コントローラ」はインテルのCPUに代表されるプロセッサ半導体の完成品で、前年同期比約6割増となっています。3位の「半導体メモリー装置」はSSD、4位の「ICメモリー」はSSDになる前のNANDフラッシュメモリと考えられ、前者が3.4倍増、後者が4.5倍増となっています。

1位のPC等用プリント基板の数量を米国側の統計で見ると、前年同期比25%増にとどまっており、3位の半導体メモリー装置については30%減少しています。ということは、米国への輸出の大幅な伸張は、AIブームによる輸出単価の高騰によるところが大きいと結論できます。

ということは、今回のAIブームが終焉を迎えた際には、特に米国向け輸出額が一気に3割、5割というオーダーで減少する、ということが考えられます。現状は、あくまでも「AIブームによる特異な状況」と考えた方が良いでしょう。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp