生活費支援のSTR、30万人増の530万人に12億リンギ支給

【プトラジャヤ】 財務省は15日、低所得世帯などを対象とした「思いやり現金給付(STR)」の今年第3期の支給を開始。受給者は530万人となり、1月の第1期から30万人増加し、第3期の支給額は12億リンギとなる。

受給者の内訳は、月間世帯所得5,000リンギ以下の世帯390万人と、配偶者のいない高齢者140万人。第1期時点では、それぞれ370万人と130万人だった。アンワル・イブラヒム首相は受給者の増加について「生活費高騰の影響を受けている人々への支援を確実に届けるための取り組みを反映したもの」と説明している。

STRは四半期に一度支給され、第3期では、世帯に関しては所得と子供の人数に応じて150―600リンギ、配偶者のいない高齢者には150リンギを支給する。3回を合わせた支給総額は36億リンギとなった。

政府は今年、幅広い層の生活必需品購入を支援する「スンバンガン・アサス・ラフマー(SARA=基礎的慈悲の寄付)」と、STRを合わせ、過去最高額の150億リンギを予算化している。
(ビジネス・トゥデー、エッジ、8月15日)

軽便鉄道シャアラム線、15日から有料化

【クアラルンプール】 6月に営業運転を開始した軽便鉄道3号線(LRT3、シャアラム線)は、開通記念として実施してきた無料運行を14日で終了。15日からフィーダーバスなども含めて有料運行となった。

シャアラム線は、首都圏クランバレー西部地域を結ぶ総延長距離37.8キロメートル、20駅の路線。全線利用時の最大運賃はキャッシュレス決済で4.3リンギ、現金決済(トークン利用)で4.9リンギとなる。
(ビジネス・トゥデー、ポールタン、8月14日)

民主行動党が臨時党大会開催、連立に留まることを決議

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 アンワル・イブラヒム首相率いる与党連合・希望同盟(PH)の構成党、民主行動党(DAP)は16日に臨時党大会を開催し、今後も連立政権にとどまることを決議した。地区代表2,223人による投票で、88%が政権に留まることを支持した。

連立政権を離脱することは有権者を見捨てライバル政党(マレーシア華人協会=MCA)を利することになるとの判断が背景にあったほか、政権離脱により政策への影響力を失うべきではないという実利的判断、あくまで政権内部からDAPがかねてから掲げている改革を推進すべきとの判断があったとみられる。

大方針をトップダウンで決めるのではなく臨時党大会を開いて投票を通じて決めることで、とりあえずは党内の団結を確認した格好。ただ次期総選挙までに具体的な改革を実現できなければ、党の信頼性がさらに損なわれるリスクがある。

DAPの下院議員は、アンワル首相率いる人民正義党(PKR)の31人を上回る40人とPH構成党では最多で、現在、閣僚ポスト5つと副大臣ポスト7つを保持している。にも関わらず、敵対するMCAが所属する国民戦線(BN)との連携を維持し続け、制度改革や汚職などへの対応も遅れがちのアンワル政権への不満、またそのアンワル政権にモノ申せない党中央への不満が、党内や支持層から強まっていた。

DAPの連立政権にとどまる決定により、さしあたりアンワル政権はひと息つくことになったが、アンワル政権が改革のスピードを上げられなければ、DAP内の不満が再燃し、政権の安定に再びリスクをもたらす可能性がある。

アンワル政権に対する批判は無党派層からも強まっており、先ごろ行われた2州の州議会選でPHは連敗。DAPも議席を減らし、ジョホール州では10議席から6議席、ネグリ・センビラン州では11議席から9議席に後退した。次期総選挙が迫る中、これ以上連立政権にとどまると支持率が更に下落するとの危機感が党内で広がっている。

【総点検・マレーシア経済】第553回:マレーシアの輸出、どこまでAIバブル?

第553回:マレーシアの輸出、どこまでAIバブル?

7月20日、マレーシアの6月の輸出額が前年同月比で45.4%増と発表されました。国別では、米国が首位で前年同月比108.6%増、2位がシンガポールで47.6%増、3位が中国で36.1%増となりました。図1は上位3カ国の輸出額の変化を3カ月移動平均でみたものです。ここ数カ月で、米国向けの輸出がさらに一段増加していることが分かります。

表1は2026年上半期の米国向けの輸出をHSコード6桁レベルで示したものです。総額では54.8%増と大幅に増加しています。輸出額の首位は「集積回路の部分品」で前年同期比で約5倍になっています。これは実際には何なのかと考えると、ヒントは米国側の統計にあります。米国側で、この金額と見合うのは「PC等用プリント基板(8473.3011)」です。これは、連載521回でも登場していますが、その時は、マレーシア側で見合うのが「パソコン用処理装置(8471.50)」だったので、ノートPC用のプリント基板と推測しました。

今回は、マレーシア側の分類ではが「集積回路の部分品」なので、ノートPCの基板よりもさらにモジュール寄りであり、この金額の急増ぶりから考えると、「AI半導体関連のモジュール」であると推測されます。

輸出額の2位「プロセッサ・コントローラ」はインテルのCPUに代表されるプロセッサ半導体の完成品で、前年同期比約6割増となっています。3位の「半導体メモリー装置」はSSD、4位の「ICメモリー」はSSDになる前のNANDフラッシュメモリと考えられ、前者が3.4倍増、後者が4.5倍増となっています。

1位のPC等用プリント基板の数量を米国側の統計で見ると、前年同期比25%増にとどまっており、3位の半導体メモリー装置については30%減少しています。ということは、米国への輸出の大幅な伸張は、AIブームによる輸出単価の高騰によるところが大きいと結論できます。

ということは、今回のAIブームが終焉を迎えた際には、特に米国向け輸出額が一気に3割、5割というオーダーで減少する、ということが考えられます。現状は、あくまでも「AIブームによる特異な状況」と考えた方が良いでしょう。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp

【イスラム金融の基礎知識】第598回 パキスタン、女性従業員の服装をめぐる議論

第598回 パキスタン、女性従業員の服装をめぐる議論

Q: パキスタンのイスラム銀行の女性従業員の服装をめぐる議論があるようですが?

A: パキスタンの上院委員会において、イスラム銀行の女性従業員の服装とその規定をめぐる議論が行われた。ムスリム女性のファッションのあり方は、国によって異なっており、その一端を表す事例とみることができる。

議論は7月29日の上院財政歳入常任委員会で行われた。ザルカ・スハルワルディ・タイムール上院議員によれば、イスラム銀行では「女性従業員は(生地が厚く透けないアラブ風の)アバヤの着用を強制されているが、男性従業員は服装を自由に選ぶことができる」と指摘した。シェリー・レーマン上院議員も、「いかなる従業員も特定の服装を強制されるべきではない」と主張した。また同議員は、故ベンナジール・ブット元首相も愛用したシャルワール・カミーズという薄手の布で紙の露出をある程度許容する伝統的民族スタイルで十分だとしており、アバヤの着用義務規定に異議を唱えた。これに対してパキスタン中央銀行のジャミール・アハメド総裁は、中央銀行は市中銀行に対して特定の服装を強制したことはなく、控えめな服装(モデスト・ファッション)の順守だけを求めた既存のガイドラインを周知徹底すると答えた。

働くムスリム女性のファッションをめぐっては、法律や世論、イスラム法の解釈などを背景として、イスラム諸国の間でも隔たりがある。特に企業における接客担当のスタッフの制服の場合は、マレーシアでもかつて外資系のホテルや百貨店でのトゥドゥンの着用が論争の的になったことがある。とりわけ髪をすべて隠すベールの着用は、本人の信仰が優先されるか、あるいは企業や国が強制できるのか、また、最近のマレーシアでのユニクロの商品をめぐる議論のように、イスラムの観点からみた正しいファッションとは何かという点での見解の違いもあるので、論争は複雑化する傾向にある。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。