第545回:マレーシアの対米輸出が増え続ける理由

4月20日、統計局はマレーシアの3月の貿易統計を発表しました。輸出額は前年同月比8.3%増の1488億リンギで、国別では米国向け輸出が18.3%増加して268億リンギとなり、2位のシンガポール(190億リンギ)、3位の中国(173億リンギ)を引き離して首位となりました。

図1はマレーシアの輸出先上位3カ国への月別の輸出額の推移を示したものです。2024年半ばから対米輸出が増加し始め、2025年には一貫して中国を上回るようになりました。2026年に入ると、シンガポール、中国向け輸出が伸び悩む中で、米国向けだけが突出して伸び、他の2カ国に大きな差を付けて首位に立っています。

2025年12月、マレーシアの米国向けの輸出額は前年同月比48.8%増と急増しましたが、これは、2026年1月にAI用の高性能GPUに対する関税が課されることを見越した駆け込み輸出であったとみられます。ただ、2026年に入っても米国向け輸出は増加傾向が続き、輸出増加が一過性のものではなかったことが分かります。

図2はマレーシアの対米輸出の上位5品目(HS6桁)の推移を示したものです。3月時点ではCPU/GPU等がトップで、半導体用の部品がほぼ同額で続きます。この2品目は2025年の秋口から大幅に輸出を増やしています。3位はDRAM等でここ数ヶ月で急増、4位はルーター等で安定して輸出を増やしています。5位はSSD等でこれも2025年の秋口から増加傾向が続いています。

これらの品目を見て分かるのは、全て半導体・データセンター関連であるということです。米国でのAIブームが影響しているものと考えられます。Amazon、Microsoft、Google、MetaのAI関連投資は、2024年の約2500億ドルから2025年には3880億ドルに達し、2026年には6000億ドルを超えるものと予想されています。

さらに、インテルの動きも重要です。次世代プロセッサPanther Lake(Core Ultra シリーズ3)では、TSMCに委託していた「コンピュート・タイル」を自社工場に回帰させたことで、後工程を担うペナン工場の役割が拡大しています。2026年後半には、ペナン工場の大規模拡張が完了し3Dパッケージング技術Foverosが導入されるため、インテル・マレーシアから米国への半導体の輸出額はさらに増加すると見込まれます。

これらの要素を勘案すると、マレーシアから米国への輸出額は2026年後半にはさらに一段増加し、シンガポールや中国を引き離して輸出先首位の地位を不動のものとする可能性が高いと言えます。

 

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp