サイバーセキュリティ専門家、1.2万人が不足=通信相

【クアラルンプール】 マレーシアにはサイバー攻撃の脅威に対応できるサイバーセキュリティの専門家が約1.2万人不足している。ファーミ・ファジル通信デジタル相が明らかにした。

ファーミ大臣は、国営放送「ベルナマTV」のインタビューで、国内にサイバーセキュリティ専門家が約2.7万人必要だが、現状では1.5万人しかおらず、1.2万人が不足していると説明。企業、特にデジタル経済分野の企業はサイバーセキュリティを最優先しており、専門部門の早急な設立を望んでいると述べた。企業規模にもよるが、1企業あたり20ー30人は専門家が必要で、特に中小企業における人員補給が急務となっていると述べた。

ファーミ大臣はまた、通信デジタル省は、サイバーセキュリティ・マレーシア(CSM)を通じ、サイバー攻撃から企業を守るための取り組みを行っているとし、国公立および民間の高等教育機関の協力や、海外からの専門家の招聘によって攻撃に対抗できると述べた。2024年度予算案の中にもサイバーセキュリティ専門家の海外からの誘致に関する項目が含まれているとしている。
(デイリーエクスプレス・オンライン、10月22日、ベルナマ通信、10月21日)

豪ライナス、炭酸塩処理工場を除くマレーシア事業を一時停止へ

【クアラルンプール】 パハン州で希土類元素(レアアース)精製工場を運営する豪ライナス・コーポレーションは、混合レアアース炭酸塩処理工場を除くマレーシアでの全事業の操業を11月中旬から一時停止する。

ライナスは最新の四半期報告の中で、操業停止中は西オーストラリア州カルグーリーにおけるレアアース処理施設立ち上げ事業を支援するためにマレーシアの主要なC&L(クラッキングおよび浸出)要員が派遣されると説明。あくまで操業停止は一時的なものだと強調した。

ライナスはまた、ネオジム・プラセオジム(NdPr)の生産能力を年間約1万500トンに増やすために、下流事業のアップグレードを実施する計画だと明らかにした上で、マレーシアでの事業ライセンスが更新され、来年1月1日からランタノイド精鉱の継続的な輸入と加工が許可される場合に必要な追加能力になると説明。継続的な輸入と加工が認められれば、分解・浸出施設の保守作業も引き受けると述べた。

ライナスの事業認可を巡っては、マレーシア原子力庁(AEM)傘下の原子力認可委員会(AELB)が今年3月、向こう3年間の更新を承認したが、更新条件にランタノイド精鉱の輸入加工の禁止、パハン州ゲベンの施設では中間材料のみを精製することなどが盛り込まれていた。これに対しライナスは不服を申し立てた上で、更新条件が7月1日時点で撤廃されていない場合、マレーシアでの事業を一時的に停止するか、生産期間短縮を行う計画だと明らかにした。

ライナスの不服申し立ては却下されたが、チャン・リーカン科学技術革新相は世界のレアアースのサプライチェーンへの影響を避けるためC&L事業期限を12月31日まで6カ月間延長する決定を行っていた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、ロイター、10月20日)

リンギが最安値を更新、一時的に1ドル=5リンギの可能性も

【クアラルンプール】 マレーシアの通貨リンギは19日、対米ドル為替で1米ドル=4.7703リンギと過去最安値を更新した。前回の最安値は、アジア通貨危機が発生した25年前の1998年で、1米ドル=4.725リンギだった。対米ドル相場で今年、円に次ぐ大幅下落となっている。

リンギ下落はイスラエル・ハマス紛争などを背景に、安全資産としての米ドルに資金が流れているためで、最大の貿易相手国である中国の経済減速もあって、マレーシアの輸出が9月まで7カ月連続して減少したことも要因となっている。

サンウェイ・ビジネス・スクールのイア・キムレン教授は、一層の利上げ観測を背景に米ドルは値上がりを続けており、1米ドル=5リンギまでリンギは下がる可能性があると指摘。ただ米経済の基礎的条件は弱まっており、米ドルが現在の水準を維持することはできず、景気の冷え込みとともに下落し、リンギを含むほかの通貨が米ドルに対し値上がりしていくと述べた。

マレーシア科学技術大学のジェフリー・ウィリアムズ教授も同様に、1米ドル=5リンギまで下落する可能性があるとの意見だが、これは地政学的な不確実性とより安全な市場に投資が向かうための一時的なものだとし、長期的には4.0-4.5リンギの範囲で推移するとみている。
(フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、10月19日)

独系物流企業DHLサプライチェーン、1.3億ユーロを投資

【バヤンレパス】 独系物流企業DHLサプライチェーンは、マレーシアに1億3,100万ユーロ(約6億5,107万リンギ)の投資を行う計画を明らかにした。

同社の東南アジアへの投資額としては最大となる。近隣国に対しては、シンガポールに1億400万ユーロ、フィリピンに8,000万ユーロ、インドネシアに3,500万ユーロを投じる計画で、投資総額は3億5,000万ユーロとなる見込み。

具体的には、ペナンに2カ所、クアラルンプールに1カ所、ジョホールバルに1カ所、新施設を設置し、倉庫容量を現状の21万7,300平方メートルから11万3,000平方メートル増加させる。ペナン州バヤンレパスに建設中のペナン・ロジスティクス・ハブ5(PLH5)に高度なオートメーション設備も導入する。PLH5は2024年に完成予定。クアラルンプールにも5G網などに接続したコントロールタワーを建設予定で、標準化・集中化された輸送サービスの提供を目指す。また、最新の自動パレット保管・検索システム、ロボット技術などのデジタル化への投資も継続し、デジタル化・自動化の推進により、2024年までに450人の雇用を創出する見込み。

DHLサプライチェーン東南アジアのアンドリース・レティーフ最高経営責任者(CEO)は、東南アジアにおける倉庫容量や労働力を増加させ、持続可能性への取り組みを拡大するため、今後5年間で投資を行っていくと説明。サプライチェーンの世界的な再編成が進んでおり、マレーシアでは特に製造業においてその恩恵を受けるとし、数多くの自由貿易協定に参加しているマレーシアは、調達先の多様化を目指す企業にとって魅力的な選択肢となっていると述べた。
(エッジ、10月17日)

米マイクロン、ペナンに第2工場を開設

【バトゥ・カワン】 米半導体大手、マイクロン・テクノロジーは13日、ペナン州のバトゥ・カワン工業団地に2カ所目となる組立・テスト施設を開設した。同社のペナンにおける新工場設立は、2015年にプライ工業団地に最初の工場を設立して以来となる。

マイクロン・テクノロジーは、昨年12月にペナンにおける第2工場設立計画を公表しており、それによると投資額は10億米ドル(44億リンギ)(削除)で、工場の総面積は150万平方フィートに拡大する。

マイクロンのNAND運用組立・テスト担当のアマルジット・サンドゥ副社長は、新施設の開設によりサイクル・タイムを短縮し、高品質の製品を大規模かつ納期通りに顧客に提供できるようになると述べた。

開所式に出席したチョウ・コンヨウ州首相は、マイクロン・テクノロジーが第1、2工場を合わせて累計20億米ドル(94億6,000万リンギ)(削除)を投資し、合計4,500人分の雇用を創出したと賞賛し、マイクロンによる将来的な投資拡大に期待を示した。
(フリー・マレーシア・トゥデー、10月13日)

マレーシアとタイの国境を貿易地域に、首脳会談で合意

【プトラジャヤ】 11ー12日の日程でマレーシアを訪問したタイのセター・タウィシン首相は11日、アンワル・イブラヒム首相と首脳会談を行い、両国国境を貿易地域とすることで合意した。

会談後の共同記者会見でセター首相は、マレーシア北部とタイ南部の安全保障について協議し、国境を貿易地帯に変え、両国の人々に繁栄をもたらすことで合意したと言明。そのほかにも、貿易取引を拡大することでも合意したと述べた。

アンワル首相は、会談では、様々な分野で強力な関係を構築するために、特別委員会を設立することを決めたと言明。特別委員会は、観光や貿易、投資、国境警備、食料安全保障を監督すると述べた。

両首脳は農業、観光、食料安全保障、投資、貿易についても協議した。ハラル(イスラムの戒律に則った)部門や自動車部門、特に国民車メーカー、プロトン・ホールディングスと中国・浙江吉利控股がタイに工場を建設する計画についても話し合いが行われた。

タイとマレーシアの2022年の貿易総額は、前年比17.9%増の1,220.3億リンギ。マレーシアにとり、世界で7番目の貿易相手国となっている。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月12日、マレーシアン・リザーブ、10月11日)

DRBハイコムと吉利、自動車ハイテクバレー開発を具体化へ

【クアラルンプール】 国民車メーカー・プロトンの親会社DRBハイコムは11日、中国の浙江吉利控股グループとの間で、ペラ州タンジョン・マリムの「自動車ハイテクバレー(AHTV)」開発に関する基本協力協定書(MCA)を締結したと発表した。

DRBハイコムがブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)に宛てた声明によると、MCAは、AHTVプロジェクトの基本原則、ガバナンスの枠組み、相互協力事項などを定めたもので、開発および販促活動のための具体的な役割分担も含まれている。今年3月ー4月にアンワル・イブラヒム首相が北京を訪問した際に締結された、総額320億リンギの投資に関する合意書に続くもの。MCA締結式にはアンワル首相も出席した。

DRBハイコムは、AHTVを新エネルギー車(NEV)の国際的な自動車拠点にすることを目指し、自動車本体の生産のみでなく、地元企業によるNEV用部品製造も推進していくとしている。
(ザ・サン、10月12日、ザ・スター電子版、ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、マレーシアン・リザーブ、ポールタン、10月11日)

エネルギー効率節約法成立、電力・ガスの大口消費者に順守義務

【クアラルンプール】 エネルギー効率節約法案が11日、下院で承認された。電力、ガスを大量に消費する商工業者にエネルギーの効率的利用を促す内容で、順守すれば電力料金を最大25%削減できるという。

年間電力料金にして240万リンギあるいはガス料金にして100万リンギに相当する、年間2万1,600ギガジュール(1ギガ=10億)のエネルギーを消費する商工業者が適用対象。工業では1,500社、商業では500社が適用を受ける。

また床面積8,000平方メートルかそれ以上のオフィスビルも、国家ビルエネルギーラベルの規定に従い、1平方メートル当たり年250キロワット時以下の電力消費に抑えなければならない。

現時点で300の政府ビルが要件を満たしている。天然資源環境気候変動省は、ホテル、病院も適用対象にする予定だ。推定4,102の建物が同法の適用を受ける。

エネルギー効率節約法は公示から1年後に発効する。この際、適用対象の商工業者は最初の検査を行わなければならない。順守しているかの検査は5年後で、不順守の場合は2万ー10万リンギの罰金が科せられる。検査は公認エネルギー検査員が行う。

ニック・ナズミ大臣によれば、社内でのエネルギー管理者任命、エネルギー節約管理、エネルギー検査など、法順守に年10万ー12万リンギの経費が商工業者にかかる。
(エッジ、10月11日)

国際貿易で脱ドル化を推進、議会答弁でアンワル首相

【クアラルンプール】 アンワル・イブラヒム首相は10日の下院審議で、中国との貿易の最大28%はリンギ建てになると明らかにした。基軸通貨、交換媒体としての米ドルへの依存を減らす脱ドル化の動きだ。

アンワル氏は、国際貿易の多くは米ドル建てで行われているが、マレーシアは複数の国との貿易で積極的にリンギを使うようにしていると語った。

脱ドル化の件は中国を訪問した際、また9月、ジャカルタにおける東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でも取り上げた。中国はリンギ使用の提案を歓迎し、インドネシア、タイとの間でも特定の産品の決済をリンギ建てとすることで合意したという。

企業の動きでは、ほとんどの政府系企業と複数の大手民間企業がリンギ建て取引にするための動きをとっているという。

アンワル氏は「経済、投資は好調で、失業率も下がっているのに、リンギが値下がりしている。対米ドルでのリンギ下落はマレーシア経済の基礎的条件を反映していない。米連邦準備制度理事会による利上げが原因」と述べた。

リンギの今年の値下がり幅は6.5%。下落幅が大きいのは円で10.8%。
(ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、10月11日、マレー・メイル、10月10日)

乳飲料のダッチレディー、来年新工場移転で生産量を倍増へ

【クアラルンプール】 オランダ系乳飲料大手のダッチ・レディー・ミルク・インダストリーズは、ネグリ・センビラン州バンダル・エンステックに5億4,000万リンギをかけて建設中の新工場への本格移転に伴い、2024年には生産量を2倍にする計画だ。

ラムジート・カウル社長によると、新工場の敷地面積は12.9ヘクタールで、セランゴール州ペタリンジャヤ工場の3倍の広さをもつ。8本の生産ラインを設置する予定で、生産は2024年半ばの開始を見込んでいる。新製造ハブには流通センターを併設し、製造から出荷まで一貫して行えるようにする。また輸出向け製品開発のための研究開発(R&D)センターも併設する予定だ。

ダッチ・レディーは2023年8月時点でマレーシアでトップの28.1%の市場シェアを有し、数量ベースでのシェアは34.2%に達する。

ペタリンジャヤ・セクション13にある現工場の敷地は、不動産開発のUEMサンライズに売却しており、UEMサンライズは2024年下半期に工場を取り壊し、2025年にも高層住宅と小売店で構成される複合不動産開発に着手する計画だ。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、ベルナマ通信、10月8日)