コロナ禍で働く意識に変化、企業も変化が必要=調査

新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大にあって、在宅勤務が求められたり外出が制限されたりしたことで人の働き方や働く意識が大きく変わり、企業もそれに応じて改革を迫られている。このほど人材紹介会社のヘイズはアジアの国・地域別の労働者の意識変化に関するリポートを発表。企業が人材を確保するために必要な将来の職場環境を象る4つの要素として▽フレキシビリティ▽テクノロジー▽スキルアップ▽働きがい——を挙げ、マレーシアの雇用主への提言として、▽フレックスタイム制導入▽会社の設備改善(特にフレックスやリモートが導入できない場合)▽プロセスのデジタル化▽思いやりのあるリーダーシップ▽リモートスキル開発——の5点を挙げている。

同調査によると、人口の半数近くが15~35歳と若いマレーシアでは特に大きな変化が起きており、回答者の多くがプロセスのデジタル化(81%) 、変化の積極的受け入れ(77%)、リモートでの柔軟な働き方(68%)に肯定的で、アジアの中でも高い割合となっている。また研修や能力開発の機会の増加(64%)、ハイブリッド型やパートタイムへの移行といった既存の職務の再設計も高い回答率となっている。

フレキシビリティに関してマレーシアでは、回答者の85%がコロナ禍以降にリモートワークの選択肢が重要になったと答え、さらに81%がフレックスタイムが重要になったと述べ、60%が定時勤務の重要性が低くなったと答えた。しかしヘイズの調査によると、リモートワークを実施している雇用主がコロナ発生前の31%から発生後の54%へと大幅に増加している一方で、フレックスタイムを実施している雇用主は47%から51%へと緩やかにしか増加していないという。また回答者の75%が、コロナ後に従業員の幸福がより重要になってきたと答えたが、これを提供している雇用者は31%に留まっており、大きなギャップがあるという。

またテクノロジーに関してマレーシアでは、回答者の85%が自分の職務に関わらず、組織のデジタル化の取り組みが重要であると答えており、大多数の回答者は、転職する際に検討する最も重要なツールとして、ビデオ会議(85%)とリモートワークアクセス(83%)を挙げている。しかしビデオ会議はコロナ禍後で導入率が大きく上昇したがリモートワークアクセスを提供している組織は半数を少し上回る程度(66%)に留まっており、クラウド型ストレージとシステムを提供している組織はさらに少数(49%)にとどまっているという。

スキルアップに関してマレーシアでは、回答者の94%がスキルアップは重要であると回答しており、中国(94%)と並んで最も高い回答率となっている。その一方で、マレーシアの雇用主が実施している率はeラーニングが50%だが、デジタルスキル習得((29%)、リスキリング(24%)、リモートオリエンテーション(28%)、リモートリーダーシップ研修(16%)にとどまっており、従業員と雇用主の考え方にずれがあることを示している。

働きがいに関してマレーシアでは、回答者の94%が働きがいや仕事の意義が従業員のモチベーションを高める上で重要と回答している。「自分の貢献が認められ報われること」(81%)、「自分の仕事が大企業に与える影響を感じたり目にしたりすること」(70%)、「会社の価値観やミッションに共感したり同意したりすること」(67%)の順で多くなっている。

(マレーシアBIZナビ編集部)

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コロナ耐性ランキング、マレーシアはなぜ低評価?

ブルームバーグが先ごろ、新型コロナウイルス「Covid-19」耐性ランキングを発表。マレーシアは経済規模の大きな53カ国・地域中で真ん中より少し下の29位にとどまり、感染者を多く出している英国や米国を下回った。

同調査は、経済規模が2,000億米ドルを超える国・地域を対象に、感染対策やコロナ下での生活に関する合計10の主要指標に基づいて点数化してランク付けした。

マレーシアは、感染対策状況に関する5項目では、ワクチン確保状況が低い評価にとどまったものの、10万人あたりの1カ月当たりの感染者数は93人、1カ月当たりの死亡率は0.4%、100万人当たりの死者数は10人、感染率は6.1%とまずまずの評価だった。

その一方で生活の質に関する5項目では、国内医療体制や人材開発指数はまずまずの評価だったものの、ロックダウンの期間や厳格度が非常に高かったこと、移動の自由が低いこと、今年通年の経済成長予想がマイナス6%となっていることが全体の評価の足を引っ張った。

マレーシアは死亡率や死者数、感染率は日本より良好だったが、ロックダウンの厳格度の評価はシンガポール、ベトナム、中国を下回りほぼ最低レベルの評価だった。移動の自由についても評価が低く、感染者が多く出たスペインやインドも下回った。

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ちなみにランキングトップはニュージーランドで、2位は日本、3位は台湾、4位は韓国の順だった。マレーシアは東南アジアではフィリピンよりは上位だったものの、シンガポールやタイ、インドネシアの後塵を拝した。

感染者数だけでなく死亡率や生活への影響を考慮しているところが同ランキング調査のミソで、中国や韓国より強制を伴わない封じ込め策をとった日本の方がランクが上だったわけだ。

一方マレーシアは、3月というかなり早い段階でロックダウンに近い厳しい行動制限令(MCO)を全国規模で実施。一時は復興に向けた行動制限令(RMCO)まで規制を緩和したものの、サバ州議会選挙による人の移動や外国人労働者用の宿舎でのクラスター発生などが影響して第3波が本格化すると、再び全国的な条件付き行動制限令(CMCO)を発令した。移動の自由度の無さや経済への悪影響などから厳しい評価となった格好だ。

ブルームバーグの評価が妥当かどうかは異論のある所だが、ノール・ヒシャム保健省事務次官が主張するように、第3波発生当初の基本再生産数(R0)は2.2だったが、CMCOによって0.9—1.1に下がっており、確かに数字上はCMCOの効果は出ている。

一方で新規感染者数が4桁を維持し、新たなクラスターが次々と発生する様子をみると、CMCOそのものよりマレーシア政府の行政管理の方に問題があるのではと不安を感じるのも分からないではない。

リー・ブーンチャイ前副保健相は、新たなクラスターが次々と発生している背景として、コンタクトトレーシング、感染検査、隔離の不十分さを挙げた上で、政府にはこれらを実行する能力が乏しいと指摘。人員や予算をもっと増やすことが必要だとしている。

(マレーシアBIZナビ編集部)

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エアアジア、日本国内線への2度目の挑戦も失敗に

エアアジアが日本で2014年に合弁会社として設立し、2017年から日本の国内線を運航していたエアアジア・ジャパンが11月17日に、東京地裁に破産手続き開始を申し立てました。エアアジア本体がマレーシアで2001年に設立され、アジアのLCC(格安航空)市場を席巻してきましたが、日本市場は鬼門中の鬼門だったと言えそうです。
エアアジアは、2011年にも日本国内線への進出を試み、全日本空輸と提携していったんは就航しましたが、2013年には提携解消してバニラ・エアと社名変更、2019年にはピーチ・アビエーションに吸収されました。このエアアジア・ジャパンは、今回、破産手続きを開始したエアアジア・ジャパンとは別の法人格となります。
2度目のチャレンジは航空業界ではなく、楽天、ノエビアホールディングス、アルペンといった異業種の企業からの出資を受ける形で始まりました。筆者が2016年にトニー・フェルナンデス会長にインタビューをした際に、日本の大手航空会社とエアアジアはカルチャーが違いすぎると話していました。中部国際空港をハブとして、2017年に新千歳行きを皮切りに、仙台、福岡へと就航し、国際線として台北にも飛ばしていました。
一方、日本国内ではLCCによる競争が激化していた時期でしたが、エアアジア・ジャパンは2014年の会社設立から今までに、社長が5人目となり、短期間で頻繁に交代していた印象が拭えず、一貫した経営方針で日本の国内線市場に根付くのは難しかったのではないかとも推察されます。
トニー・フェルナンデスは、マレーシアでは起業家として高い評価を受け、若者たちのロールモデルとしても人気がありますが、日本国内市場への2度目の挑戦は、コロナ禍という不測の事態がとどめを刺すという形で残念ながら失敗に終わりました。

※本連載の内容は著者の所属組織の見解を代表するものではなく、個人的な見解に基づくものです。

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マレーシア: 経済2021年予算について(2)

11月6日、マレーシア政府の2021年予算案が上程されました。この予算は「過去最大規模」をうたっており、国民に対して手厚い支援を行うものですが、「なし崩し的に財政を拡張していない」という姿勢をみせるための工夫がいくつか見られます。

表は過去3年分の財政収支を示したものです。財政規律を重視する姿勢を示しているひとつめの点として、マレーシア政府は歳入から給与や債務返済、補助金などの経常的な支出を差し引いた経常支出が赤字にならないように配慮していることが分かります。経常支出が歳入の範囲内に収まるように努力することで、「将来への投資には借入が必要だが、当年の支出に困っているわけではない」ところを見せています。ただし、マレーシア政府は経常支出費目のいくつかを開発支出に付け替えていることをみとめていますので、実態は苦しいところです。

2点目は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延に対応するために、通常の予算と独立した「COVID-19基金」を時限的に立ち上げて、そこから支出を行っている点です。これにより、COVID-19を言い訳として実際には財政全体を拡張しているのではないか、という懸念に対応しています。さらに、この基金への拠出を2020年の補正予算で大きく行い、2021年予算では半額程度に抑えていることもポイントです。結果として、財政赤字のGDP比は2020年の6.0%から2021年は5.4%と改善しています。

8月に財政赤字の累積額の上限をGDP比55%から60%に引き上げたことも含めて、形式的な面が強くても財政規律に配慮する姿勢をみせることは、格付け機関や国際機関の心証を良くするためには重要なことです。

マレーシア経済:2021年予算について(1)

11月6日、マレーシア政府の2021年予算案が上程されました。この予算は「史上最大」の予算規模となっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けた国民に対して直接的な支援を積極的に行っています。ただ、COVID-19対策に設立された特別基金への支出は2020年の半分程度であり、コロナ禍が続いた場合、さらに予算を積み増す可能性もあると考えられます。

2021年予算では、医療関係者への500リンギの直接給付に代表されるように、COVID-19で影響を受けた人々、所得階層下位40%(B40)の家計に対する手厚い給付や税控除が目立ちます。例年行われている国民に対する直接給付金も増額されています。その他、医療費の控除、所得税減税、雇用者年金基金(EPF)の納付率引き下げなど、例年以上に国民への直接的なベネフィットが目立つ予算になっています。

予算演説の前半では、こうした国民への個別の支援策の発表が1時間近く続きました。2010年代半ばから既に経済成長よりも国民への分配を重視する予算となっていましたが、今回の予算はその中でも分配重視となっています。雇用補助金の延長や、ローンの返済困難者に対する支援もあり、COVID-19の感染が拡大するなかで、国民の不安を和らげる予算であると言えます。

近年のマレーシア政府の予算は、財政再建路線の制約が強かったため、国民への分配を重視しつつも、様々な面で財政赤字を減らすための工夫をしてきました。しかし、コロナ禍において、財政再建を理由に緊縮予算にすることなく、積極的に国民に対する支援を行っており、この方向性は正しいと言えるでしょう。

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首都圏でのCMCO実施の経済的影響は(3)

10月14日から首都圏で実施されている条件付き行動制限令(MCO)が1カ月間で解除されると仮定した場合、GDPへの影響はどの程度になるでしょうか。Googleが提供する人の移動データ(Community mobility report)を利用してごく大まかに計算してみます。

表はKLとスランゴール州のCMCO導入後の人流の変化を2020年1〜2月上旬の比較で示したものです。両地域とも職場への人流については3割前後減っており、減少幅は6月平均よりもやや大きく、小売店などへの人流は4〜5割減少して5月平均と6月平均の中間となっていることが分かります。職場への人流を元に製造業生産指数を推測すると0〜マイナス5%、小売店への人流を元に卸売・小売業売上高を推測するとマイナス15〜マイナス20%となります(連載319回参照)。

KLとスランゴール州を合わせると、2019年時点でマレーシアの製造業GDPの32%、建設業GDPの59%、サービス業GDPの51%を占めています。CMCOにより建設業はサービス業に近いと影響を受けるとみなして計算すると、今回の首都圏へのCMCOはマレーシアのGDPを5〜7%押し下げる計算になります。ただし、CMCOを1カ月限定とすれば、四半期GDPでは影響は1/3となり、押し下げ幅は1.5%〜2.5%程度となります。

2020年第2四半期のGDP成長率はMCOの影響を1カ月 強受けたことで、マイナス17.1%となりました。今回のCMCOが、首都圏以外の経済にあたえる間接的な影響を考慮しても、3〜5月のMCOとの比較では、GDPへの影響はかなり小さく抑えることができそうです。

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首都圏でのCMCO実施の経済的影響は(2)

10月14日に首都圏で発令された条件付き活動制限令(CMCO)は、当初の10月27日までの2週間の予定が11月9日までさらに2週間延長されました。Googleが提供する人の移動データ(Community mobility report)の最新版では10月23日までのマレーシアの人の移動の増減が州別に分かるため、CMCOの影響を確認することができます。

図1と図2はそれぞれKLとセランゴール州での人の移動の変化を「職場」「小売店・レクリエーション」「生活必需品店」についてみたものです。増減は新型コロナウイルス流行前の2020年1月〜2月上旬を基準にしています。

どちらも人の動きは似ており、10月14日以降、人の移動が減少していることが分かります。職場への移動についてはCMCO前と比較して10%強、小売・レジャー施設については20%前後減少しています。生活必需品店への移動については、CMCO前日の13日にいつもより増加しており、買いだめと考えられる動きがみられます。

この人の流れの変化と製造業生産指数や卸売・小売業売上高の対応関係をみることで、CMCOが経済に与える影響を概ね予測することができます。

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首都圏でのCMCO実施の経済的影響は(1)

マレーシアの首都圏では新型コロナウイルス感染拡大への対応として、10月14日から条件付き活動制限令(CMCO)が再び実施されています。今回のCMCOでは多くの経済活動が引き続き実施可能となる一方、地区(district)をまたぐ移動が原則禁止されたり、教育機関や娯楽施設などが閉鎖されたりしています。

人の移動と経済活動の間には明確な関係があります。図1はGoogleのデータに基づく職場への移動(赤)と製造業生産指数(青)の増減を重ねたもの、図2は小売店・レジャー施設への移動(赤)と卸売・小売業販売高(青)の増減を重ねたものです。どちらのグラフも、人の移動と経済活動の間に明確な関係があること示しています。

職場への移動と製造業生産指数の増減は5月までは連動していますが、6月からは製造業生産指数がプラスに転じる一方で、職場への移動はコロナ前の15-20%減にとどまっています(図1)。これには、リモートワークやビデオ会議の活用が関係していると考えられます

小売店・レジャー施設への移動と卸売・小売業販売高の増減は基本的に連動していることが分かります(図2)。サービス業のほうが、製造業よりも人の移動との相関が高いといえます。

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新型コロナウイルス、ASEANの状況

10月12日、KL、スランゴール、プトラジャヤに対して10月14日から27日までの間、条件付き活動制限令(CMCO)が再度発令されることが発表されました。

地図は、Googleの人流データに基づいて、ASEAN各国の9月30日〜10月6日の職場への人の移動の増減を新型コロナウイルス流行前と比較して色分けしたものです。現在、ASEANで最も職場への移動が減っているのはミャンマーで54%減となっています。これは、マレーシアの過去状況に当てはめるとMCO期に相当します。

逆に状況が良いのはベトナムで、新型コロナウイルス流行前よりも職場への移動が増加しています。タイについても、職場への移動は10%減にとどまっています。

マレーシアの職場への移動は15%減、状況が近いのはカンボジアとラオスで、ともに19%減となっています。一段状況が悪いのはインドネシアとフィリピンで、職場への移動はそれぞれ23%、35%減少しています。これはマレーシアではCMCO期に相当します。

アジアではこれまで感染が少なかったネパールとミャンマー、マレーシアで新規感染者が急増しています。ただ、マレーシアについては欧米と比較すれば感染者数は少なく、適切な政策で抑制可能と考えられます。今回の措置も、首都圏での感染爆発を防ぐための予防的措置と考えられます。

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マレーシアで新型コロナウイルス陽性者が急増

10月5日、マレーシアの新型コロナウイルスの陽性者数は432人となり、過去最高を更新しました。7月下旬以降、最大でも20〜30人だった新規陽性者は、9月に入って増加に転じ、10月に入ると過去最高をたてつづけに更新しています。

マレーシアで陽性者数が急増している要因のひとつがサバ州での感染拡大です。大規模なクラスターが最初に発生したのは東部のラハ・ダトゥで、陽性者にはフィリピンやインドネシアからの違法労働者が多く含まれていました。また、サバ州への旅行者を起点とする感染が全ての州で発生していることが確認されています。

これまでマレーシア政府は新型コロナウイルスの感染拡大を効果的に抑制してきましたが、周辺国との人流が多いマレーシアで新型コロナウイルスをコントロールすることは大変難しくなっています。直近の数字では、インドネシアでは1日の新規陽性者数が4,000人を超えており、フィリピンでも2,000人を超えています。

アジアではマレーシア以外にも、最近まで感染者数が非常に少なかったミャンマーやネパールで新規陽性者数が急増しており、1日の新規陽性者数が7万人を超えるインドとの人流が影響している可能性があります。

10月4日、ノル・ヒシャム保健局長はツイッターで「最前線にいる全ての仲間へ。大きな戦いが我々を待ち受けている。我が国の命運は我々にかかっており、これまでの不眠不休の努力と慢性的な疲労はあるけども、涙を拭いて顔を上げ、前を向いて、再び感染者数を押さえ込もう」と呼びかけました。

全世界が準備不足だった2〜3月の状況に比べ、現在は検査体制も整っているため、陽性者数を直接比較することはできません。しかし、世界中で新規感染者数が再び増加に転じる国が増えてきており、予断を許さない状況です。

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