第543回:マレーシアの銀行、フィリピンのイスラム銀行市場に関心

Q: メイバンクがフィリピンのイスラム銀行市場に関心を寄せているようですが?

A: フィリピンのイスラム銀行市場の整備・開放が加速しようとしている。フィリピン中央銀行が4月17日(水)に明らかにしたところによると、現在同国内でのイスラム銀行業ライセンスの取得に関心があるとして、マレーシアのメインバンクと、名前は明らかにしなかったもう1行の計2行と交渉を行っていることを明らかにした。

フィリピンのイスラム銀行市場をめぐっては、2019年に施行されたイスラム銀行法によって民間にも市場が解放、これを受けてマイクロ・ファイナンスを手掛ける地元資本の金融機関が、今年2月にカード銀行を創業、イスラム銀行業務を開始したばかりだ。

フィリピン中央銀行でイスラム金融部門を担当するアリファ・A・アラ総裁補佐によれば、多くの金融機関からライセンスに関心を持たれているが、実際に交渉を進めているのはこの2行であるとしている。条件について詳細を詰めている段階で、正式なライセンス取得のための書類はまだ提出されていないものの、おそらく年内には提出される可能性がある、との見通しを示している。

メイバンクは、マレーシア資本の銀行で傘下にメイバンク・イスラミックというイスラム銀行を抱えている。イギリスの金融雑誌「ザ・バンカー」によれば、マレーシア国内のグループ全体のイスラム金融資産は657億米ドル(2022年現在)で同国最大、世界全体でも第5位の資産規模を誇る。アセアン各国に支店網をもつが、フィリピン市場には1997年に地元銀行を買収・改名する形で参入、現在は60支店を国内に構えている。

レモロナ中銀総裁も、この件に関連して「ミンダナオ島のバンサモロ自治区は銀行口座保有率が8%たらずであるため、(信仰に根差した)多くのイスラム銀行が必要である」と強調している。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。