【従業員の勤労意欲を高めるために】第875回:高齢化社会との向き合い方(2)男性らしさを求める社会でエイジズムが見られる理由

第875回:高齢化社会との向き合い方(2)男性らしさを求める社会でエイジズムが見られる理由

前回は、ハングリー精神を強く持つ人ほど、高齢者を社会のお荷物と感じる度合いが大きいというお話でした。これは、お金や成功に執着する人ほど、高齢者を支えるための社会的負担の増加による分け前の低下に敏感なためです。今回も、これに関連した「男性らしさ」のお話です。

Ng & Lim-Soh(2021)は、英語圏にある20か国を対象にした研究により、80億語のデータベースを使用して評価された国ごとのエイジズム(年齢を理由とした差別)が、Hofstede(1980)の文化尺度であり、業績や成功、地位への執着の強さを表す「男性らしさ」と相関することを示しています。男性らしさがエイジズムに関係するのは、競争を重んじ、強者や成功者を高く評価する社会が、その対極にある年長者を弱者と決めつけ易いためです(Ng & Lim-Soh, 2021)。先行研究では、例えば、男性の筋肉労働が経済を支えるイングランドの重工業地帯の社交クラブで、高齢男性が働き盛りの若年男性から疎外される様子が描写されています(Pain et al., 2000)。

ちなみに、日本は78ヵ国の中で男性らしさが2番目に高い国です。そのため、エイジズムが高まり易い文化を持つ国といえます。一方、マレーシアは36番目で、日本に比べると、競争よりも生活の質を重視する「女性らしさ」の強い国です(Hofstede et al., 2010)。従って、マレーシアは、成功への執着心が低い分、高齢者には優しい社会と考えられます。現役を退いた後の少なくない日本人がマレーシアを移住先に選ぶのも、こうした文化に起因する居心地の良さが理由かも知れません。

Hofstede, G., Hofstede, G. J., and Minkov, M. (2010). Cultures and Organizations: Software of the Mind. Revised and expanded 3rd edition, New York: McGraw-Hill.

Ng, R., & Lim-Soh, J. W. (2021). Ageism linked to culture, not demographics: Evidence from an 8-billion-word corpus across 20 countries. The Journals of Gerontology: Series B, 76(9), 1791-1798. https://doi.org/10.1093/geronb/gbaa181

Pain, R., Mowl, G., & Talbot, C. (2000). Difference and the negotiation of ‘old age’. Environment and Planning D: Society and Space, 18(3), 377-393. https://doi.org/10.1068/d31j

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、東北大学客員准教授、国際経済労働研究所理事、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、産業創出学の構築に向けた研究に従事している。
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マレーシア総人口が推定3400万人に到達=統計局

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 統計局は2024年第1四半期の人口統計を発表。総人口は推定3,400万人に到達し、前年同期(3,320万人)比で2.3%増となった。

内訳はマレーシア国民が全体の90%を占め、前年同期比20万人増の3,060万人、非国民が同60万人増の340万人。男性が同40万人増の1,780万人、女性が同30万人増の1,610万人となり、男女比は111対100となった。年齢別では0-14歳が770万人、15-64歳が2,380万人、65歳以上が250万人となった。

民族別ではマレー系が全体の57.9%に当たる1,770万人となり、前年同月比で10万人増加した。華人は22.6%、インド系は6.6%、その他ブミプトラ(マレー人と先住民の総称)は12.2%を占めた。

州別ではセランゴール州が734万1,300人で最も多く、これにジョホール州、サバ州、ペラ州、サラワク州、ケダ州、クアラルンプール(KL)と続いた。

同期の出生数は10万6,386人で、前年同期比9.4%減少した。男性が5万4,747人、女性が5万1,639人。マレー系が68.8%を占め、華人は8.8%、インド系は3.7%にとどまった。

死者数は4万7,964人で、1.5%減となった。マレー系が51.4%、華人が27.0%、インド系が8.5%を占めた。

南西モンスーン期、5月17日に始まる見通し=気象局

【クアラルンプール】 マレーシア気象局は、南西モンスーンの季節が5月17日から始まる見込みだと明らかにした。南西モンスーン期は9月まで続く見通し。全国的に大気の状態が安定し、気温が低下し、降雨量が減少すると予想されるという。

気象局のムハマド・ヘルミ・アブドラ局長は、南西モンスーンの季節は通常、風が一貫して南西から吹き、湿度が低く大気の状態がより安定するとし、このため雨雲が形成されず、期間中の降雨量の減少につながると指摘。野焼きを規制しないと、7月から9月にかけてヘイズ(煙害)が発生する恐れがあると警告した。ただ全体の降雨量が減っても、強風と雷を伴う大雨が特に早朝に半島の西海岸、サラワク州北部、サバ州西部で発生する可能性があるという。

気象局によると、エルニーニョ南方振動(ENSO)への移行が5月に始まり、9月まで続くと予測され、一方、ラニーニャ現象が今年第3四半期に発生すると予想されている。
(ザ・スター、5月15日、マレーシアン・リザーブ、ベルナマ通信、5月14日)

第2のカジノ建設計画はない=アンワル首相

【ドーハ】 アンワル・イブラヒム首相は、先ごろ報道のあった第2のカジノ建設構想について改めて事実関係を否定。国家の収入源は他にもあるためカジノによる収入に依存する必要はないとし、アンワル政権下で第2のカジノ・ライセンスを発行することはないと言明した。

カタールを訪問中のアンワル首相は、「カタール経済フォーラム」の特別セッション「マレーシア首相との対話」に出席し、「マレーシアはデジタルトランスフォーメーション(DX)、技術移転、人工知能(AI)などの分野に注力しており、これらの分野は国の収入を賄うのに十分だ」と強調した。アンワル首相の発言は、セッションの司会を務めたブルームバーグ・テレビの特派員からの質問を受けたもの。

マレーシアのカジノ・ライセンスはこれまで、1969年にゲンティンに対して発行された1件のみ。最近、ブルームバーグは、ジョホール州沖で開発中の「フォレスト・シティ」におけるカジノ設立に向け、政府と関係者が交渉を行ったと報じ、関係者として名指しされたベルジャヤ・グループの創設者ビンセント・タン氏およびゲンティンの会長兼最高経営責任者(CEO)のリム・コックタイ氏、そしてアンワル首相がいずれも事実関係を否定していた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月14日、マレー・メイル、ベルナマ通信、5月13日)

補助金削減実施は「適切な時期」に=アンワル首相

【ドーハ】 カタールを訪問中のアンワル・イブラヒム首相は、同地で行われた対話セッションに出席し、マレーシアの燃料補助金削減について「適切な時期」に行う必要があるとの考えを改めて強調した。

「カタール経済フォーラム」の特別セッション「マレーシア首相との対話」に出席したアンワル首相は、政府債務水準を削減するために過剰な補助金の削減を含む無駄な支出を削減する必要があると述べた上で、削減の実施時期については「やるべきことではあるが、慎重に行う必要がある」と強調、補助金廃止の実施期限については明言を避けた。

アンワル首相は、「貧困層に負担を強いることなくどうやってこの改革に着手していくか、それが私の考えでは非常に重要な点だ」と言明。「適切な時期にそれ(補助金削減)を行うつもりだ」と述べた。

マレーシアは現在、燃料や食用油の価格の多くを政府が補助金として負担しており、昨年の補助金負担額が810億リンギに上ったと推定されている。このため政府は今年、誰でも公平に享受している現行の補助金制度を対象を絞った補助金制度に切りかえ、財政赤字の対国内総生産(GDP)比率を2023年の5%から今年は4.3%まで縮小することを目指している。

アンワル首相は任期初めに、マレーシアの財政状況を改善し、政府債務を現在のGDPの60%を超える水準から削減すると約束していた。
(ザ・スター、5月15日、フリー・マレーシア・トゥデー、ブルームバーグ、5月14日)

ブリッジ、日本企業の技術紹介に向け現地教育団体と提携

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 インサイドセールスや研修などの法人営業改革支援サービスを提供するブリッジインターナショナル(本社・東京都世田谷区)は14日、マレーシア子会社ブリッジインターナショナルアジアが5月13日付けで、トレーニングと人材開発のハブを提供する非営利団体セランゴール・ヒューマン・リソース・デベロップメント・センター(SHRDC)との間で包括的連携協定(MoU)を締結し、パートナーシップ体制を構築したと発表した。

ブリッジインターナショナルアジアはSHRDCと協力し、▽マレーシアの産業の高度化に寄与する、日本企業保有技術の導入推進に向けた共同研究および技術協力▽両者間の技術開発に関する技術資料の共有や研修機会の提供▽ハンズオン・トレーニングや実証実験を通じた人材育成プログラムや技術習得機会の共同運営▽両社の活動に関する共同マーケティングおよびプロモーション活動ーーを行っていく。

また、SHRDCは同日、ブリッジインターナショナルアジアの協力のもとで持続可能なエネルギーの促進拠点を開設した。ブリッジインターナショナルアジアのパートナーであるエナジー・ソリューションズ(本社・東京都千代田区)が開発したソーラーパネル検査の「ドローンアイ」サービスを展示し、技術トレーニングを提供する。「ドローンアイ」のマレーシア展開および現地太陽光発電所の管理運用の高度化を目指す。