第495回  マレーシアの第1四半期のGDP成長率(予測値)は3.9%、予想を上回る

4月19日、統計局はマレーシアの2024年第1四半期のGDP成長率の事前予測値を前年同期比3.9%と公表しました。23年の四半期別GDP成長率は第1四半期から、5.6%、2.9%、3.3%、3.0%と推移していましたので、3.9%という成長率は1年ぶりの高い数字となります。

3.9%という成長率には、見た目以上のインパクトがあります。図は2022年〜24年のマレーシアの四半期別GDPを金額で示したものです。23年第1四半期のGDPは第1四半期としては高い水準となっています。今回の3.9%成長は、この高いベースと比較しての成長率なので価値が高いと言えます。

筆者は本連載第481回で、24年通年のGDP成長率を4.5%と仮定した場合の四半期別GDPの図を示しました。その図では、24年第1四半期のGDP成長率を3.0%、その後の3四半期は4%台の成長が続くと想定していました。また、「24年の第1四半期の経済成長率が3.0%を超えるようだと通年での成長率は4%台後半、下回るようだと4%台前半になる可能性が強くなる」と述べています。この想定からすると、24年第1四半期の成長率が3.9%ならば、通年の成長率は5%を超えても不思議はないことになります。

3.9%成長の中身を詳しく見ると、サービス業が4.4%増(23年第4四半期は4.2%増)、製造業が1.9%増(同0.3%減)、鉱業が4.9%増(同3.8%増)、農業が3.8%増(同1.9%増)、建設業が9.8%増(同3.6%増)となっています。サービス業が引き続き堅調なのに加えて、製造業もマイナスからプラスに転換しました。建設業が大幅に伸びているのも目を引きます。

同日発表されたマレーシアの24年3月の輸出は前年同月比0.8%減でしたが、ようやく下げ止まりの傾向が見えはじめています。23年は内需が堅調な中で、輸出の不振がGDPを下振れさせていましたが、輸出が底打ちすれば、24年のGDPは予想よりも高くなる可能性があります。あくまでも3.9%の事前予測値が正しいことが前提ですが、筆者は24年通年でのGDP成長率が5%を超える可能性も出てきたと考えます。

熊谷 聡(くまがい さとる)
Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所海外調査員。専門はマレーシア経済/国際経済学。
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