539回:カザフスタンのイスラム銀行 

Q:カザフスタンのイスラム銀行の現状は?

A:カザフスタンは、人口約1,900万人、ムスリム人口比率7割にして、マレーシアと同じく産油国であり、人口一人当たりのGDPもほぼ同水準にある中央アジアの国である。同国のアル・ヒラル・イスラム銀行のゴードン・ハスキンスCEOは、地元メディアに対してこの国の経済とイスラム銀行市場について語っている。

カザフスタンにはおよそ20の銀行があるが、このうちイスラム銀行は2行のみである。一つは国内資本のザマン銀行で、1991年に創業した。もう一つが今回取り上げるアブダビ資本のアル・ヒラル・イスラム銀行で、2010年の創業である。イギリスの金融雑誌「ザ・バンカー」によれば、後者はイスラム金融資産ランキングで196位に挙げられている。

ハスキンスCEOによれば、カザフスタンのイスラム銀行市場は多数派を占めるムスリム国民による信仰の発露として利用されている側面がある一方で、従来型銀行と比較して経営が健全で透明性があるからという理由で選ぶ利用者も多いとしている。こうした利用者意識が高いものの、国による制度がまだ十分整えられていない点も指摘している。すなわち法律・会計・税制などで、イスラム銀行のための制度設計がなされていないため、ビジネスの困難さに直面しているとした。

同銀行は外国資本であるため、カザフスタン国外の投資家との接点も多いが、同国の経済をみた場合、従来の石油や天然ガスだけでなく、ここ数年は鉱物・農業・物流なども発展分野であるとみなしている。地政学的にも中央アジアで重要な位置にあるカザフスタン経済は、近年安定しており、インフレの低下とともに金利を下げる政策を中央銀行は採用した。こうしたことを背景として、今後3年から5年は同銀行の成長が見込めるだろうとの見通しを、ハスキンスCEOは語った。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。