来年度予算は3本の柱を核に、予算方針説明会で第2財務相

【プトラジャヤ】 アミル・ハムザ第2財務相は18日、来年度予算に関する方針説明会で、経済競争力の強化、生活費圧力の緩和、弱者保護の充実、教育・医療・基本的行政サービスの強化を優先すると表明した。予算案は10月9日に上程される。

基本方針は、経済の高度化、社会の底上げ、統治の一層の改善の3つで、経済高度化では半導体、エネルギー移行、人工知能(AI)など高価値投資、生産性引き上げ、戦略的分野を優先する。中小企業、スタートアップには、融資、市場参入を通じ支援を強化する。

社会の底上げでは教育、医療、人材育成、雇用機会、家計所得の増加、弱者支援の強化に取り組む。統治改善では、規則の改善、行政サービスのデジタル化、煩雑な役所手続きの簡素化を進める。

アミル・ハムザ氏は「国は大きな成果を上げたが、国民が生活費に困窮しているようでは無意味だ」と指摘。低・中所得層への交付金、必需品の割引価格での提供を継続すると表明した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、ザ・スター電子版、8月18日)

アンワル首相、SST軸に新たな税制モデル検討を言及

【プトラジャヤ】 アンワル・イブラヒム首相は18日、財務省で開催された2027年度予算に関する協議会後、記者団に対し、売上・サービス税(SST)と物品・サービス税(GST)を組み合わせるなど、新たな税制モデルを検討する可能性について言及した。

アンワル首相は、GSTは効率的な税制と認めつつも、生活費が上昇する中、国民の負担増につながるとし、改めてGSTの再導入を否定した。

そのうえで、「SSTを基本」と強調しつつ、「より良い税制にするため、可能な調整があれば行う」と述べた。両税制の長所を取り入れるなど、より柔軟に税制を見直す姿勢を示したとみられる。

マレーシアでは2015年に当時のナジブ・ラザク政権が税率6%でGSTを導入したが、2018年に希望同盟(PH)連立政権が廃止し、SSTに戻した経緯がある。このため、アンワル首相は、GSTの再導入に否定的な姿勢を繰り返し表明してきた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、8月18日)

【従業員の勤労意欲を高めるために】第928回:危機になると、従業員が会社を見る目は変わる

928回:危機になると、従業員が会社を見る目は変わる

前回は、農業を題材に、短期的な効率化が長期的には弱さにつながる可能性について紹介しました。今回は企業に戻り、経済危機が従業員の意識をどう変えるのかについて考えてみます。

従業員が「この会社で働き続けたい」と思う理由は一つではありません。上司の支援、同僚との関係、仕事の裁量、報酬の公平性など、さまざまな要因があります。しかし、こうした要因の重要性は、いつでも同じなのでしょうか。

この疑問を調べるため、拙稿では中国にある日系企業4社で2007年から2011年に実施した従業員意識調査を分析しました。この期間には2008年の世界金融危機、いわゆるリーマン・ショックが含まれています。分析対象は1万1507件でした。

興味深い変化が見られたのが、世界市場向けの電子部品を生産していた製造会社です。この会社では、金融危機後、「報酬が公平である」と感じることと組織コミットメントとの関係が大きく強まりました。一方、他の3社では同じ変化は見られませんでした。

さらに、この製造会社の生産部門を詳しく調べると、一般従業員では、報酬の公平性と組織コミットメントとの関係が危機前の0.415から危機後には0.599へと約44%強まりました。ところが監督者では、0.526から0.557へとほとんど変化しませんでした。

なぜでしょうか。会社の先行きが不透明になると、一般従業員は「会社は自分をきちんと扱ってくれるのか」を判断する材料として、給与、評価、昇進などの公平性を、それまで以上に重視するのかもしれません。監督者は会社内部の情報や裁量を比較的多く持つため、その影響を受けにくかったと考えられます。

重要なのは、危機になると何もかも重要になるわけではないことです。上司の支援、同僚との関係、裁量なども含めて分析すると、危機後に重要性が明確に増したのは報酬の公平性だけでした。

これは「危機になったら給料を上げればよい」という話ではありません。むしろ、給与や評価がどのように決まり、なぜその結果になったのかを従業員が納得できることが重要です。

従業員の勤労意欲を高める方法には、いつでも通用する正解があるわけではありません。環境が変われば、従業員が会社を見る物差しも変わる。不確実な時代の人事には、この視点がますます重要になるのではないでしょうか。

論文情報は以下。末尾のURLから概要をご覧いただけます。

Kokubun, K. (2026). When fair rewards matter more: Economic crisis, employee position, and organizational commitment in Japanese subsidiaries in China. Human Resource Management Journal, Early View. https://doi.org/10.1111/1748-8583.70061

 

國分圭介(こくぶん・けいすけ)
京都大学経営管理大学院特定准教授、機械振興協会経済研究所特任フェロー、東京大学博士(農学)、専門社会調査士。アジアで10年以上に亘って日系企業で働く現地従業員向けの意識調査を行った経験を活かし、組織のあり方についての研究に従事している。この記事のお問い合わせは、kokubun.keisuke.6x★kyoto-u.jp(★を@に変更ください)

ジョホール州、国旗・州旗を逆さに掲揚した工場を一時閉鎖

【ジョホールバル】 ジョホール州クライの工場で、マレーシア国旗とジョホール州旗が上下逆さまに掲揚されていたことが発覚し、クライ地区議会(MPKu)は17日、同工場を一時閉鎖した。同州住宅・地方政府委員会のモハマド・ジャフニ・シュコル議長が明らかにした。

事件が起きたのはオートテック・オートモティブ・マレーシアの工場。州政府は事態を重大視しており、警察が捜査を進めるとともに、工場の取締役から事情を聴く予定。ジャフニ氏は、「国旗と州旗はいずれも国と州のアイデンティティー、尊厳、主権を象徴する重要な旗であり、単なるミスとして済ませることはできない」と述べた。

MPKuは会社側から説明を受け、必要な確約書が提出されるまで、工場施設を一時閉鎖する措置を取った。逆さまになっていた両旗は直ちに正しい向きに直された。クライ地区長はMPKuや関係機関と連携し、既存法令に基づいて適切な措置を取るための対応を進めている。

今回の措置は、「2019年営業・事業・産業免許細則」に基づくもの。同細則の第49条2項では施設の閉鎖に関する規定、第45条1項は旗の掲揚に関する規定を定めている。ジャフニ氏は、州内のすべての企業、事業者、工場などに対し、国旗や州旗を正しい向きで適切に掲揚するよう呼び掛けた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、フリー・マレーシア・トゥデー、8月17日)

セカンドハートとMRT、マレーシアで医療共同事業を開始

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 糖尿病重症化予防に取り組むセカンドハート(本社・京都市下京区)と、医療人材紹介などを手掛けるMRT(本社・東京都渋谷区)は17日、マレーシアで共同事業を開始すると発表した。

両社はこのほど、資本業務提携契約に関する基本合意書を締結した。今後、両社の海外におけるネットワークを活用しながら、医療関係者向けのカンファレンスなどを開催する。また、MRTはセカンドハートの第三者割当増資を499万円で引き受け、発行済株式の約1.33%を取得する。

マレーシアでは糖尿病が深刻な社会課題となっていることから、セカンドハートは、昨年設立した現地法人を通じ、足ケア管理アプリ「ステップライフ」を展開するなどしてきた。一方のMRTは、2024年にシンガポール拠点のMRTグローバル・マネジメントを設立するなど海外展開を本格化。ベトナムで同国最大級の医療人材プラットフォームを運営している

今回の提携を通じ、それぞれの事業基盤を相互活用しながら、まずは糖尿病性足病変の重症化予防を軸にマレーシアで共同事業を展開。マレーシアで蓄積した知見を東南アジア各国に広げ、同地域における医療サービスの発展と事業機会の創出を目指す。

「ペナン州構造計画2040」草案、9月9日まで一般から意見聴取

【ジョージタウン】 ペナン州都市・地方計画局は、2040年までの州の都市・経済開発の方向性を示す「2040年改訂ペナン州構造計画(RSNPP2040)」の草案を発表。地域の交通網強化や経済成長を促す14件の高インパクト事業を示した。草案は9月9日まで一般公開し、一般からの意見を聴取している。

現行の「2030年ペナン州構造計画(RSNPP2030)」に代わるもので、RSNPP2030ではペナン島南部の人工島建設や本土側セベラン・プライの開発強化などが盛り込まれていた。

「RSNPP2040」における主な重点分野としては、島とセベラン・プライ間の均衡のとれた開発、最適な土地利用、成長拠点の強化、交通指向型開発、交通ネットワーク、住宅、経済競争力、環境保護など。草案に盛り込まれた高インパクト事業には、バタワース―クリム鉄道、ペナン沿岸環状道路、ペナン・ゲートウェイ開発、ぺナン・セントラル駅拡張、船舶係留センター計画、バリク・プラウ―パヤ・トゥルボン・トンネルなどがあり、また最大規模のペナン島と本土を結ぶ海底トンネルまたは第3橋の建設案も参考案として含まれている。

チョウ・コンヨウ州首相は、選定された企業との契約が依然として有効であるため海底トンネルまたは第3橋プロジェクトは草案に残されていると説明。最終的な実際の着工・完成時期はまだ確定していないと述べた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ電子版、マレーシアン・リザーブ、マレー・メイル、エッジ、ベルナマ通信、8月17日)

生活費支援のSTR、30万人増の530万人に12億リンギ支給

【プトラジャヤ】 財務省は15日、低所得世帯などを対象とした「思いやり現金給付(STR)」の今年第3期の支給を開始。受給者は530万人となり、1月の第1期から30万人増加し、第3期の支給額は12億リンギとなる。

受給者の内訳は、月間世帯所得5,000リンギ以下の世帯390万人と、配偶者のいない高齢者140万人。第1期時点では、それぞれ370万人と130万人だった。アンワル・イブラヒム首相は受給者の増加について「生活費高騰の影響を受けている人々への支援を確実に届けるための取り組みを反映したもの」と説明している。

STRは四半期に一度支給され、第3期では、世帯に関しては所得と子供の人数に応じて150―600リンギ、配偶者のいない高齢者には150リンギを支給する。3回を合わせた支給総額は36億リンギとなった。

政府は今年、幅広い層の生活必需品購入を支援する「スンバンガン・アサス・ラフマー(SARA=基礎的慈悲の寄付)」と、STRを合わせ、過去最高額の150億リンギを予算化している。
(ビジネス・トゥデー、エッジ、8月15日)

軽便鉄道シャアラム線、15日から有料化

【クアラルンプール】 6月に営業運転を開始した軽便鉄道3号線(LRT3、シャアラム線)は、開通記念として実施してきた無料運行を14日で終了。15日からフィーダーバスなども含めて有料運行となった。

シャアラム線は、首都圏クランバレー西部地域を結ぶ総延長距離37.8キロメートル、20駅の路線。全線利用時の最大運賃はキャッシュレス決済で4.3リンギ、現金決済(トークン利用)で4.9リンギとなる。
(ビジネス・トゥデー、ポールタン、8月14日)

民主行動党が臨時党大会開催、連立に留まることを決議

【クアラルンプール=アジアインフォネット】 アンワル・イブラヒム首相率いる与党連合・希望同盟(PH)の構成党、民主行動党(DAP)は16日に臨時党大会を開催し、今後も連立政権にとどまることを決議した。地区代表2,223人による投票で、88%が政権に留まることを支持した。

連立政権を離脱することは有権者を見捨てライバル政党(マレーシア華人協会=MCA)を利することになるとの判断が背景にあったほか、政権離脱により政策への影響力を失うべきではないという実利的判断、あくまで政権内部からDAPがかねてから掲げている改革を推進すべきとの判断があったとみられる。

大方針をトップダウンで決めるのではなく臨時党大会を開いて投票を通じて決めることで、とりあえずは党内の団結を確認した格好。ただ次期総選挙までに具体的な改革を実現できなければ、党の信頼性がさらに損なわれるリスクがある。

DAPの下院議員は、アンワル首相率いる人民正義党(PKR)の31人を上回る40人とPH構成党では最多で、現在、閣僚ポスト5つと副大臣ポスト7つを保持している。にも関わらず、敵対するMCAが所属する国民戦線(BN)との連携を維持し続け、制度改革や汚職などへの対応も遅れがちのアンワル政権への不満、またそのアンワル政権にモノ申せない党中央への不満が、党内や支持層から強まっていた。

DAPの連立政権にとどまる決定により、さしあたりアンワル政権はひと息つくことになったが、アンワル政権が改革のスピードを上げられなければ、DAP内の不満が再燃し、政権の安定に再びリスクをもたらす可能性がある。

アンワル政権に対する批判は無党派層からも強まっており、先ごろ行われた2州の州議会選でPHは連敗。DAPも議席を減らし、ジョホール州では10議席から6議席、ネグリ・センビラン州では11議席から9議席に後退した。次期総選挙が迫る中、これ以上連立政権にとどまると支持率が更に下落するとの危機感が党内で広がっている。

【総点検・マレーシア経済】第553回:マレーシアの輸出、どこまでAIバブル?

第553回:マレーシアの輸出、どこまでAIバブル?

7月20日、マレーシアの6月の輸出額が前年同月比で45.4%増と発表されました。国別では、米国が首位で前年同月比108.6%増、2位がシンガポールで47.6%増、3位が中国で36.1%増となりました。図1は上位3カ国の輸出額の変化を3カ月移動平均でみたものです。ここ数カ月で、米国向けの輸出がさらに一段増加していることが分かります。

表1は2026年上半期の米国向けの輸出をHSコード6桁レベルで示したものです。総額では54.8%増と大幅に増加しています。輸出額の首位は「集積回路の部分品」で前年同期比で約5倍になっています。これは実際には何なのかと考えると、ヒントは米国側の統計にあります。米国側で、この金額と見合うのは「PC等用プリント基板(8473.3011)」です。これは、連載521回でも登場していますが、その時は、マレーシア側で見合うのが「パソコン用処理装置(8471.50)」だったので、ノートPC用のプリント基板と推測しました。

今回は、マレーシア側の分類ではが「集積回路の部分品」なので、ノートPCの基板よりもさらにモジュール寄りであり、この金額の急増ぶりから考えると、「AI半導体関連のモジュール」であると推測されます。

輸出額の2位「プロセッサ・コントローラ」はインテルのCPUに代表されるプロセッサ半導体の完成品で、前年同期比約6割増となっています。3位の「半導体メモリー装置」はSSD、4位の「ICメモリー」はSSDになる前のNANDフラッシュメモリと考えられ、前者が3.4倍増、後者が4.5倍増となっています。

1位のPC等用プリント基板の数量を米国側の統計で見ると、前年同期比25%増にとどまっており、3位の半導体メモリー装置については30%減少しています。ということは、米国への輸出の大幅な伸張は、AIブームによる輸出単価の高騰によるところが大きいと結論できます。

ということは、今回のAIブームが終焉を迎えた際には、特に米国向け輸出額が一気に3割、5割というオーダーで減少する、ということが考えられます。現状は、あくまでも「AIブームによる特異な状況」と考えた方が良いでしょう。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp