2021年の家計支出、前年比9.2%増=フィッチ予測

【クアラルンプール】 格付け大手フィッチ・グループ傘下のフィッチ・ソリューションズは、2021年の家計支出について、前年より9.2%増加すると予測している。
フィッチ・ソリューションズは、継続的な政府の刺激策によって可処分所得や雇用情勢が改善し、2020年(前年比1.6%減の予測)より大幅に改善すると表明。個人消費すべての主要カテゴリーがプラス成長に戻るとの見方を示した。主要カテゴリーの一つである食品・飲料は、2020年の家計支出において最も優先された項目であるため2020年の増加率(前年比10.1%増)より縮小し、前年比8.7%増となるが、他のカテゴリーでは2020年よりも大幅に成長すると分析した。しかし同社のカントリー・リスクチームの分析によると、現在の刺激策には企業側のコスト削減策があまり含まれていないことから、労働者の解雇により可処分所得に圧力がかかる可能性があると指摘した。消費者動向の見通しついては、▽復興のための行動制限令(RMCO)の延長▽RMCO延長に対する国民の反発▽新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチンの入手の遅れーーなどの下振れリスクを懸念した。
マレーシア経済について、格付け会社フィッチ・レーティングスの調査部門は、2020年に4.6%縮小し2021年で6.3%成長に回復すると予測。2021年の失業率は4%に止まると予想した上で、不完全就業率が増加し可処分所得に圧力がかかる可能性があるとした。また2021年は、需要増加により物価が年間平均で2.3%押し上げられ、インフレを引き起こすとの見方を示した。
(ザ・サン、10月1日)

向こう10年の経済成長は年率3.4%程度、フィッチが予想

【クアラルンプール】 フィッチ・ソリューションズは、過去10年間で年平均6.4%だったマレーシアの国内総生産(GDP)成長率が、新型コロナウイルス「Covid-19」の影響で向こう10年間は3.4%程度にとどまるとの予想を示した。
フィッチはさらに、希望同盟(PH)政権が倒れた後の高まる政治的不確実性が政策の継続性と改革の勢いを削ぐことになり、人口増加率の急速な頭打ちや経済活性化に向けた経済対策を行なうための財政的余地が狭まることと相まって、今後10年の低成長が予想されると指摘。「低レベルの工業化によってもたらされた経済成長路線を使い果たしたマレーシアは、中所得国の罠から逃れるために経済を改善しなければならない」とした。
フィッチは政治的不安定の中、ポピュリズムに訴える政治家が保護主義に走ることで外国直接投資(FDI)誘致競争においてベトナムなどに遅れをとることになり、時間経過とともにビジネス環境が悪化する可能性があると指摘。また最近の政治家や政党のくら替えの動きは汚職の復活のリスクを秘めており、投資家心理を悪化させることになると懸念を示した。
その上でフィッチは、マレーシア経済が輸出主導の成長から国内の個人消費主導へとリバランスが進むだろうとし、こうした経済リバランスの動きは全体的な実質GDP成長の足かせとなるが、同時に個人消費の成長が伸び海外需要ではなく国内の中産階級に対応するための投資機会を生み出すだろうとした。

(ザ・サン、10月1日、マレー・メイル、9月30日)

リンギは中期的にやや値上がり、フィッチ見解

【ペタリンジャヤ】 格付け会社フィッチグループのフィッチ・ソリューションズは、対米ドルでリンギは中期的に値上がりするとの見解を示した。
6月以降、リンギは値上がりし、今年のこれまでの平均相場は1米ドル=4.236リンギになった。しかしドルが売られすぎた感があり、短期的にリンギはやや値下がりする見通しだという。
一部の先進国・途上国における新型コロナウイルスの感染再発、米国大統領選で予想される混乱からリスク回避の動きが出て、資金が新興国通貨から安全資産に流れる可能性がある。一方で原油価格は安定的に推移する見通しで、短期的にリンギが急落することはない。政策金利(現行1.75%)の年内再引き下げはないと見込まれるという。
こうした事情からフィッチは、今年の平均相場予想を1米ドル=4.3リンギから4.25リンギに、来年の予想を1米ドル=4.2リンギから4.15リンギに修正した。
(ザ・サン、9月30日)

今年のGDP成長予想、世銀がマイナス4.9%に下方修正

【クアラルンプール】 世界銀行は9月29日、マレーシアの2020年通年の実質国内総生産(GDP)について4.9%の大幅なマイナス成長と予想。従来予想のマイナス3.1%を下方修正した。
2020年10月版「東アジア太平洋経済アップデート」の中で世銀は、第2四半期に17.1%と大幅なマイナス成長になった要因として、新型コロナウイルス「Covid-19」拡大を防止するために発令された行動制限令(MCO)による内需の減少と外的要因を指摘。「一部の州で最近MCOが再開されたことに示されているように、全国的に規制措置が強化されるリスクがある」とした上で、「経済成長見通しに対するリスクは確実に下振れしている。予想以上に長引くとみられる世界的な景気回復は投資決定を妨げ、外需をさらに抑制する可能性がある」とした。
世銀は、「加えて失業率上昇や労働市場の弱さは、引き続き個人消費を圧迫するだろう」とし「これらの動向を反映して、ほとんどの需要要素(純輸出、個人消費、民間投資)は2020年に縮小すると予想される」とした。
一方、JPモルガンは、今年については経済活動の再開及び政府の景気対策が下支えするとして、マイナス5.8%と従来予想のマイナス7.7%を上方修正。輸出が例年並みに回復しているとしてきた。なお来年についてはプラス7.7%とし、今年の予想の上方修正を反映して従来予想のプラス8.8%を下方修正した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、9月30日、エッジ、9月29日)

信用取引の証拠金不足、救済措置を年末まで延長

【クアラルンプール】 株式の信用取引に関し、証拠金不足が生じた場合の特別救済措置が今年末まで延長実施される。
同措置は3月27日に導入され、9月30日に打ち切りの予定だったが、マレーシア証券委員会とブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)の共同声明によると、市場の安定を優先し延長を決めた。
通常は、投資家が追加証拠金を納入できず、委託証拠金100に対し建玉が130を下回った場合、信用を供与している証券会社は強制的に建玉を決済しなければならない。
特別救済措置では、強制決済を行うかは証券会社の裁量に委ねられ、債券、投資信託、金(きん)、不動産も証拠金として受け入れることができる。
救済措置を行うには、証券会社は自己資本比率と株主資本の要件を満たしていなければならない。
ある証券会社社員は、救済措置は強制決済が多数発生した3月事件の再発防止が狙いとコメントした。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、9月29日、エッジ、9月28日)

ハラル商品のマーケットプレイス、12月に立ち上げ

【クアラルンプール】 ハラル(イスラムの戒律に則った)産業の育成を支援するハラル開発公社(HDC)は、オンライン・マーケット・プレイス「ハラル・インテグレーテッド・プラットフォーム(HIP)」を立ち上げると明らかにした。
ハイロル・アリフェイン・サハリ最高責任者(CEO)は、12月に立ち上げを予定していると言明。5,000社の企業の出店と、20カ所の政府関係機関や銀行、保険、運送などのサービス機関の参加を見込んでいると述べた。ハラル産業に関わる企業の生産性や革新性の競争や、3兆米ドルと言われる世界のハラル市場に進出できる機会となり、輸出量の増加につながるとの期待を示した。国内のハラル商品の市場規模は700億米ドルだが、2030年までに1,500億米ドルまで拡大できると期待されている。
ハイロル氏はそのためHIPを立ち上げることで、国内のハラル産業企業や個人が新たな世界経済に進出するきっかけとすることができると言明。日本や台湾、韓国などの関連機関と協力して国内のハラル商品やサービスを輸出すると述べた。5年内に中国やベトナム、インドネシアへの進出も予定している。
ハラル認証の申請は中小企業からが多く、取得まで30営業日となっており、海外でも認知度は高まっている。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、9月28日)

格安航空エアアジア、デジタル部門の拡大資金を調達へ

【クアラルンプール】 世界屈指の格安航空エアアジアはデジタル部門子会社、エアアジア・デジタルの業務拡大を目的に資金調達に乗り出す。

 23日の記者会見でトニー・フェルナンデス最高経営責任者(CEO)は、転換社債か株式の発行を予定していると明らかにした。
会見に同席したカマルディン・メラヌン会長によれば、旅行・ライフスタイルプラットフォームのデジタル化など業務の多様化で新型コロナウイルス「Covid-19」禍による収入減を緩和することができたという。
カマルディン氏は「航空市場の制約が解除され、以前どおり自由になればデジタルビジネスは拡大し、当社の中核部門になる」と語った。
エアアジアは物流部門のテレポート、機内食部門のサンタン向けにも債務証券を通じ資金を調達している。サンタンは店舗運営にも乗り出しており、年内マニラに出店する。
(マレーシアン・リザーブ、9月24日)

ホームセンターのミスターDIYがIPO開始、1部上場へ

【クアラルンプール】 ホームセンターを経営するミスターDIYグループ(M)は24日、新規株式公開(IPO)を開始した。マレーシア証券取引所1部に上場する。
売り出し株を含め9億7,449株を発行し、推定5億米ドル(21億リンギ)の資金を調達する。売り出し株(約3億株)は内外の機関投資家向け。新株式のうち一般公募分は1億2,553万株。
行動制限令(MCO)の施行で売り上げは急減したが、解除後は急回復しており、アドリアン・オン最高経営責任者(CEO)は声明で「店舗網を拡大する。資本市場から資金を得ることで成長戦略に弾みがつく」と語った。
同社はミスターDIYブランドの店舗を国内で640店、ブルネイで4店経営している。ほかに、おもちゃのミスター・トイと、食品・飲料・家庭雑貨を2リンギか5リンギの均一価格で売るミスター・ダラーをチェーン展開している。
CIMB、メイバンク、RHB、クレディ・スイス、JPモルガン、UBSなど内外の投資銀行が幹事を務める。
(エッジ、ベルナマ通信、9月24日)

低中所得層向け生活支援第二弾、財政赤字拡大への懸念も

【クアラルンプール】 ムヒディン・ヤシン首相は23日、新型コロナウイルス「Covid-19」禍の影響を受けた低・中所得者向け支援策の第二弾「Kita Prihatin(私たちの関心事)」(総額100億リンギ)を発表したが、アナリストらは経済成長を押し上げる効果を認める一方、財政赤字拡大を懸念している。
CGS・CIMB証券は、予算赤字は対国内総生産(GDP)比で0.7%増加するとの見通しを表明した。
ケナガ・インベストメント・バンクは財政赤字予想を対GDP比6.8%から7.5%へ修正。政府債務についてはGDP比62.6%を予想している。債務の法定上限は60%。ケナガは今年のGDP予想(5.9%の減少)を維持したが、金融緩和、財政措置を根拠に、下半期の回復に期待を寄せている。
Amバンクは貸し付け動向から経済が回復しているとの見方を示した。7月の貸付指数は前年同月比7.7%の上昇で、上昇が加速しており、行動制限令(MCO)の緩和に伴い、経済回復に弾みがついているとした。
中央銀行バンク・ネガラ(BNM)は翌日物政策金利を1.75%まで下げた際、金融緩和の打ち止めを示唆したが、政情の混乱で施策の実行が遅れた場合、BNMは金融政策を見直す可能性があるという。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、9月25日、ベルナマ通信、9月24日)

マレーシアの今年の成長はマイナス6%=英オックスフォード

【クアラルンプール】 英オックスフォード・エコノミックスは21日に発表した「世界経済アウトルック」の中で、マレーシアの国内総生産(GDP)成長率について今年はマイナス6%、来年はプラス6.6%と予想した。
同報告はイングランド・ウェールズ勅許会計士協会(ICAEW)の依頼を受けて行なったもので、マレーシアについて新型コロナウイルス「Covid-19」感染拡大抑制のために導入された行動制限令(MCO)が第2四半期の経済を悪化させたものの、現在は新型コロナ感染拡大は抑制されており経済回復に向かっていると指摘した。
特に経済の原動力である輸出は中国の輸入需要と電子製品サイクルの改善によって恩恵を受けるが、世界的な需要低迷、行動制限令(MCO)失業率、投資控えの状況を鑑みると回復の速度は遅くなる可能性が高いとした。
同リポートは東南アジア域内全体について、1997年のアジア通貨危機以来のショックを経済にもたらすとして今年の経済成長をマイナス4.2%、来年についてはプラス6.4%とそれぞれ予想している。中でもベトナムは今年は2.3%と唯一プラス成長を維持すると予想、来年は8.0%成長を予想している。フィリピンは東南アジア諸国の中で最も打撃が大きく、今年の成長予想をマイナス8.2%としている。
(エッジ、ベルナマ通信、9月21日)