半導体チップ不足、国内産業に深刻な影響

【クアラルンプール】 世界的な半導体チップ不足は、多様な製品の生産遅延や生産コストの上昇を招き、国内産業にも深刻な影響を与えている。
ペナン州政府系投資会社インベスト・ペナンのリー・カーチョーン取締役は、英字紙「マレーシアン・リザーブ」の取材に対し、ペナン州ではパンデミック以来、サプライチェーンの混乱が続いているため、生産に影響が出ているとし、半導体を必要とする製品の増加だけではなく、半導体チップ不足を懸念する企業による在庫増加の動きも出ているため、しばらくは不足状況が継続するだろうとした。
マレーシア自動車協会(MAA)は、半導体チップなどの部品不足や出荷遅延により、4月の自動車総販売台数が3月の7万3,222台から23.2%減の5万6,213台となったと発表。アイシャ・アハマド会長は、半導体チップ不足は、自動車生産の中でも特に現地組立(CKD)に影響を及ぼし納車遅延の原因になっているとし、回復時期については現時点では予想ができないと述べた。
マレーシア半導体産業協会(MSIA)のウォン・シューハイ会長は、半導体チップ不足の影響を受け、国内での半導体部品の生産が滞っているとし、国内企業は、生産能力の向上を図っているものの、需要を満たすにはしばらく時間がかかるだろうと述べた。今後の見通しについては、ほとんどの半導体メーカーが増産体制をとっているため、徐々に需要が満たされていくと楽観視しているという。
(マレーシアン・リザーブ、6月13日)

飲料水のスプリツァー、設備投資に過去最大の1億リンギ

【ジョージタウン】 大手飲料水メーカーのスプリツァーは、今年1億リンギの設備投資を行うと明らかにした。生産ラインと水処理工場の新設、機械の更新、昨年取得した土地の費用残金を支払う。
ケニー・リム最高経営責任者(CEO)は、英字紙「ザ・スター」の取材に対し、1億リンギの設備投資は、同グループにとり過去最大で、年産能力は8.5億リットルから9億リットルに増加するとした。生産ラインと水処理工場の新設に2,500万ー3,000万リンギ、ミネラルウォーター製造施設用に取得したペラ州ブキガンタンの1,227エーカーの土地費用残金として7,610万リンギを割り当て、5年以内に製造施設を開設する予定だ。
タイピンの既存工場の稼働率は約70%。昨年はタイピンとジョホール州ヨンペンのミネラルウォーター工場の土地をそれぞれ7.4エーカー、6.1エーカー拡張し、新たに土地5カ所を合計350万リンギで取得。今年1月には、既存工場に隣接する土地(約60エーカー)を総額620万リンギで取得した。
リムCEOは、最大の懸念事項は原材料の高騰であり、樹脂価格は2020年は1トン当たり3,200リンギだったが、現在は5,800リンギに上昇したと言明。ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を包装材として使用しており、利幅が圧迫されていることから、昨年12月に販売価格を5%ほど引き上げたと説明した。今後、原材料の価格が上昇し続ければ、再度価格調整の必要もあるという。
一方でリムCEOは、今月1日に新しい企業ロゴを発表したとして、下半期には再生プラスチックの包装材利用を開始し、ラベルデザインも刷新すると述べた。またバリューチェーン全体のプロセス、市場占有率、販売量を常に改善し、国内飲料水業界で首位維持を目指し、中核ブランドへの投資、生産工程と生産能力の自動化、事業機会の追求、持続可能なパッケージ導入にも注力すると言明。ミネラルウォーターの利点や人体に悪影響を及ぼす可能性のあるマイクロプラスチックの混入がない点を強調するなど、製品の差別化を行い、コスト上昇の監視・管理対策、オンライン販売や海外市場の拡大などにも取り組むとした。
スプリツァーは、1989年に飲料水の製造・販売を開始。飲料水で40%の市場シェアを持ち、2000年9月にブルサ・マレーシア(マレーシア証券取引所)メイン市場に上場した。
(ザ・スター、6月13日)

広告宣伝での宗教的要素の使用禁止、新規定を近く発表へ

【ペタリンジャヤ】 マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)は近く、商品の広告宣伝に宗教的要素を使用することを禁じる新たな倫理規定を発表する予定だ。

マレーシア通信マルチメディア・コンテンツ・フォーラム(FKKMM)のメディハ・マフムード専務理事によると、「2022年コンテンツコード」は、広告主が顧客を惹きつけるために宗教的要素を利用することを防ぐことを目的としており、年内にも施行される予定だ。例えば、「コーラン(クルアーン)の祈りで祝福され、病気を治す」「沐浴に最適」などと主張する商品は、販売者がその主張について詳しく説明し、証拠の提供が求められることになる。草案には、宗教だけでなく、扇動的・挑発的コンテンツ、性暴力行為などに対する規定も含まれるという。
メディハ専務理事は、新規定はイスラム教だけでなく、全宗教の宗教的要素に適用されると言明。宗教がマーケティング手法の一部として使われないようにするためだとした。宗教家が製品を宣伝するアンバサダーに就任することは禁止されないが、宗教的な主張により商品価値を誤認させることはできなくなる。FKKMMにはこれまで宗教を利用した広告宣伝について多くの苦情が寄せられており、消費者保護に加え、それらの苦情に対応するために新規定が設けられることになったという。
(フリー・マレーシア・トゥデー、6月8日)

景気回復までGSTの再導入はなし=財務省副次官

【クアラルンプール】 財務省のジョハン・マハムード・メリカン副事務次官は、新型コロナウイルス「Covid-19」で落ち込んだマレーシアの景気回復が確実に軌道に乗るまで、物品・サービス税(GST)再導入を含む新たな税制の導入は考えていないと言明した。
「インベストASEAN2022会議」に出席したジョハン氏は、「最初に明確にしたいが、GSTの再導入についてはまだ何も決定していない」とした上で、国の財政を強化するという財務省の使命に沿って、GSTの再導入に踏み切る可能性は高いと言明。「周知のように財務省は財政状況の改善を目指しており、我々はGST再導入も視野に入れている」と述べた。
その上でジョハン氏は、財務省としては新たな税制の導入でなく既存の税制体系の統合や再編に注力していると言明。「我々は段階的な財政再建に取り組んでおり、単に歳入を強化するだけでなく、歳出の効率化も含まれる。歳入については新たな税制ではなく既存の税制の見直しを中心にしており、現時点ではターゲットをどのように絞っていくかが重要だ」と述べた。
マレーシアは2015年4月1日付けでそれまでの売上税・サービス税に代わる税率6%のGSTを導入。しかし希望同盟(PH)政権時代の2018年9月1日付けでGSTが廃止され、売上サービス税(SST)が再導入された。
(エッジ、6月8日)

リンギの動きは人民元次第、エコノミスト見解

【クアラルンプール】 通貨リンギは1米ドル=4.4リンギ近くと過去最安値の水準にあるが、中国が経済活動を全面的に再開すれば短期的にリンギ値上がりの可能性もありそうだ。
エコノミスト、通貨ストラテジストによると、リンギの動向を左右する要因は複数あるが、最も影響するのは人民元の動きだ。
サンウェイ大学のイア・キムレン教授は「マレーシアは中国との貿易額が多く、中国経済の再開は元、リンギを押し上げる」と語った。
SPIアセット・マネジメントは「有価証券に資金が流入すると元は値上がりするが、リンギの値上がりは元より遅い。投資家は中国資産の方を優先するからだ」と語った。また中国経済の全面再開は強い元をもたらし、全アジア通貨に波及するという。
米国経済もリンギ相場に影響するが、Amバンクのアンソニー・ダス主任エコノミストは、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融引引き締めの方針を転回しそうな場合、米ドルは値下がりの可能性もあると述べた。
(ザ・スター、6月7日)

セキュリティの米フォーティネット、顧客センターを設置

【クアラルンプール】 サイバーセキュリティ大手の米フォーティネットは2日、クアラルンプール(KL)市内中心部に位置するエクアトリアル・プラザにオフィスを移転し、カスタマー・ブリーフィング・センター(CBC)を設置すると明らかにした。

CBCでは、フォーティネットの最新ソリューションやテクノロジーに加え、次世代のサイバーセキュリティ機器を顧客企業に紹介していく。

新オフィスの開所式で、フォーティネット・マレーシアのカントリーマネージャーであるディクソン・ウー氏は、国内および近隣諸国でのデジタル化が急ピッチで進むにつれ、サイバー攻撃も増加かつ巧妙になっていると言明。それに対応するため、フォーティネットではイノベーションや人材育成に注力しているとし、セールスやマーケティング、情報セキュリティアナリスト、セキュリティエンジニア、コンプライアンスマネージャーなど、すべての中核分野における人材の採用に向け投資を続けていくとした。

国内のサイバー人材不足に対処するため、新オフィスでは従業員のスキルアップに向けた専用トレーニングスペースを設置する。また、マルチメディア大学(MMU)などの国内教育機関にリソースを投入し、トレーニングや認定、キャリア情報、雇用機会などを提供し、サイバーセキュリティ分野でのキャリア構築を支援する。

フォーティネットは2000年に米カリフォルニア州で設立。統合脅威管理(UTM)製品の開発・製造に携わる。公共部門、通信、金融などを中心とする企業に対し、セキュリティ機器を提供している。
(ベルナマ通信、6月3日)

ハラル経済の役割拡大を、首相がシャリア順守委の設立提案

【プトラジャヤ】 イスマイル・サブリ首相は5月30日、アブドラ・バダウィ元首相を記念したレクチャーで、世界情勢の先行きが不確実で、域内諸国同士の競争が激しいなか、マレーシアは経済に占めるハラル産業の役割を拡大するのが望ましいとの認識を示した。
マレーシアは、米調査会社ディナールスタンダードによる81カ国・地域のイスラム経済ランキングで9年連続1位の評価を得ており、特にイスラム金融で強みを持つが、イスマイル首相は、食品、観光、ファッション衣料、化粧品・薬品、メディア、娯楽の領域では改善の余地があると述べた。
イスラム金融は中央銀行バンク・ネガラ、ハラル産業はイスラム開発局と管轄が分かれているが、首相はハラル経済全体を見る機関としてシャリア(イスラム法)順守監督委員会の設立を提案した。
首相は「非イスラムの国もハラル商品の市場になり得る。ハラルは品質保証をも意味する」と述べた。
(ザ・スター、5月31日、ベルナマ通信、5月30日)

産業界、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の発足を歓迎

【クアラルンプール】  バイデン米大統領が23日に発足を表明し、日本、マレーシアを含む13カ国が参加した「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」について、業界団体は歓迎の意を表明している。
マレーシア製造業者連盟(FMM)は25日、IREFを通じて米国からの投資がさらに強化されることを歓迎するとし、米国から電気・電子(E&E)製品や医療機器などの分野で高品質な投資を得られることで、雇用創出だけでなく、技術移転や産業高度化を通じての地元メーカー育成にもつながると言明。国内製造業者は、IPEFから得られる戦略的・経済的利益を最大限に活用し、マレーシアを魅力的な投資先やサプライチェーンのハブにできると述べた。
マレーシア半導体産業協会(MSIA)は、通産省と米商務省が今月、半導体サプライチェーンの強化で協力覚書を交わしたことと合わせ、国内半導体業界、E&E業界にとって前向きな進展であり、世界の重要な半導体ハブの1つとしてのマレーシアの地位をさらに強固にできる上、半導体と電子機器のサプライチェーンを長期的に強靭にしてコストを下げるのに役立つと述べた。
IPEFは、インド太平洋地域における経済協力を目的とし、貿易、サプライチェーン、クリーンエネルギー・脱炭素化・インフラ、税・腐敗防止について地域共通基準を定めるもの。特恵関税制度は含まれていない。参加国は、▽米国▽日本▽マレーシア▽オーストラリア▽ニュージーランド▽韓国▽インド▽ブルネイ▽インドネシア▽フィリピン▽シンガポール▽タイ▽ベトナムーーの合計13カ国で、世界の国内総生産(GDP)の40%を占める。
(ザ・サン、ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月26日、エッジ、5月25日)

米ハーシー、ジョホールにR&Dセンターを開設

【クアラルンプール】 チョコレート製造の米ハーシー・カンパニーは13日、ジョホール州において研究・開発(R&D)センターを開設したと発表した。商品の開発やイノベーションを加速させる。
ハーシーは発表した声明の中で、R&Dセンターを開設したことにより、消費者の好みに合わせた新製品や革新的な製品を迅速に開発、テスト、発売できるようになると説明。面積は1万400平方フィートで、同社にとり米国外で最大規模のR&D施設の一つになるとした。
インドおよびアジア太平洋地域・欧州・中東・アフリカ(AEMEA)地域事業のハルジット・バハラ副社長は、同センターはAEMEA地域全体の拠点として機能すると言明。R&Dセンターの設立は、市場全体の消費者の好みを理解したいという同社の継続的な取り組みを反映するものと説明した。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、5月14日、ベルナマ通信、5月13日)

政策金利引き上げ受け、銀行が次々と利上げを発表

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 中央銀行バンク・ネガラが11日に1.75%だった政策金利を2.00%に引き上げたことを受け、国内の銀行が次々と利上げを発表している。
銀行最大手のマラヤン・バンキング(メイバンク)は5月13日付けで、基準金利(BR)及び基準貸出金利(BLR)をそれぞれ0.25ポイント引き上げ、年率2.00%、5.65%とする。メイバンク・イスラミックもイスラム基準金利と基準融資金利(BFR)をそれぞれ2.00%、5.65%とする。メイバンクの金利見直しは2020年7月9日以来。
RHBグループも5月18日付けでBR及びBLRをそれぞれ0.25ポイント引き上げ2.75%、5.70%とする。RHBグループの金利見直しは2020年7月13日以来。
中銀の政策金利の引き上げは2018年1月ぶり。多くのエコノミストが低水準で推移するインフレ率を理由に政策金利を当面据え置くと予想していただけに市場では驚きの声が上がっている。
中銀は2018年1月に3.25%に利上げしたが、その後景気悪化への懸念を背景に2019年5月、2020年1月、同年3月、5月、7月に相次いで利下げを実施。2004年以来16年ぶりの低水準である1.75%となっていた。