MRT3&LPB推進と洪水対策、閣議で予算承認

【クアラルンプール】イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は4日、国内インフラの拡充について閣議決定を行ったと発表した。具体的には、パン・ボルネオ高速道路(LPB)とMRT(大量高速輸送)3号線の推進、洪水対策プロジェクトへの予算増を行う。
LPBについては5年間で367キロメートル分の追加工事19件を実施する。LPBサバ州工区第1期の現状の進捗は52%で2024年10月には完工予定、786キロメートルのサラワク工区第1期の進捗は78%。サラワク工区を補完するためにサラワク・サバ接続道路(SSLR)とボルネオ横断道路プロジェクトの実施も行うという。
MRT3号線はクアラルンプールの住宅街や商業エリアを結ぶ総延長約50キロメートルの環状線で、高架と地下が混在し、新設する駅は31駅の予定。鉄道開発のMRTコープがプロジェクトを担当している。事業資金不足の懸念から無期限延期されていたが、昨年8月に再開が決定された。しかし、政府の承認待ちで再開が遅れていた。
また、第12次マレーシア計画(12MP、対象期間:2021 25年)で当初年間10億リンギとされていた洪水対策プロジェクトへの予算を、2023年から2030年にかけ追加で150億リンギ割り当てる。昨年末から発生している洪水被害を受けて決定された。
イスマイル首相はマレー半島、サバ、サラワクで大規模インフラプロジェクトを実施することは、経済開発を促進し、国家の競争力と国民の幸福に貢献すると述べた。
(ザ・スター、3月5日、エッジ、マレーシアン・リザーブ、ニュー・ストレーツ・タイムズ、3月4日)

パーム油価格上昇、ウクライナ問題&原油高騰が要因=MOPB

【クアラルンプール】 パーム原油(CPO)価格が過去最高値を更新していることについて、マレーシア・パーム油委員会(MPOB)は、ロシアのウクライナへの軍事侵攻と石油輸出国機構(OPEC)による生産量の枠組み維持が影響していると分析。今後も上昇傾向が続くと予想している。
アハマド・パルビス・グラム・カディル長官は、原油価格が2月7日以降は100米ドルを超えており、2月28日に1バレルあたり103.87米ドルで取引されたブレント原油価格は3月1日は115.58米ドルに上昇したと指摘。バイオディーゼル原料としてのパーム油の魅力が高まって価格を押し上げていると分析した。また世界的な大豆油価格高騰が、食用油市場におけるパーム油需要を高めていることも価格上昇に繋がっていると指摘。2021年12月に1トンあたり1,457米ドルだった大豆油価格が、2022年1月には3.5%上昇して1,508米ドルになり、3月1日には1,804米ドルの高値で取引されたと指摘した。
また、食用油の競争相手であるひまわり油の主要生産地であるウクライナとロシアからの供給が紛争のために遅れるとみられることから、大口輸入国のインドがマレーシア産パーム油の輸入を増やす可能性があると指摘。モンスーンとアブラヤシ農園が直面している労働力不足により、生産量が2021年12月の145万トンから今年1月には125万トンに落ち込んだこともあり、価格上昇に繋がっていると分析した。
(エッジ、3月2日)

クラン港とタンジョンプルパス港でコンテナ取扱量拡大へ

【クアラルンプール】 ウィー・カション運輸相は1日、セランゴール州クラン港とジョホール州タンジョン・プルパス港(PTP)でコンテナ取扱量を引き上げるために拡張工事を行っているとし、貿易拡大を下支えするとの期待を示した。
「第19回東南アジア諸国連合(ASEAN)港湾・海運展示会・会議2022」の基調演説でウィー大臣は、拡張工事によりクラン港のコンテナ取扱量は、2040年までに60%増加し、3,200万TEU(20フィートコンテナ換算)となり、PTPの取扱量は、2025年までに350万TEU増加する予定だと明らかにした。新型コロナウイルス「Covid-19」の感染拡大の影響で2020年のクラン港におけるコンテナ取扱量は2.5%減少したものの、2021年には3.6%増の1,370万TEUとなり、過去最高となったと言明。PTPのコンテナ取扱量も昨年は14%増の1,120万TEUと好調だったとした。世界中で買い物や消費パターンが変化したことで、電子商取引が成長したと言明。流通や倉庫移設の需要が高まっているとした上で、デジタル自由貿易地域などのイニシアチブは、貿易の成長を加速させると述べた。
ウィー大臣によると、世界のコンテナの取扱量ランキングで、クラン港は12位、PTPは15位となっている。
(ザ・スター、3月2日、ベルナマ通信、エッジ、3月1日)

パーム油価格、初めて8千リンギを突破

【クアラルンプール】 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、両国が主要生産地となっているひまわり油の供給がストップしたことから、マレーシアのパーム油原油(CPO)価格が1日、初めて1トン当たり8,000リンギを突破した。
3月のCPO先物価格は712リンギ上がって8,163リンギに、4月は663リンギ上がって7,435リンギに、5月も463リンギ上がって6,762リンギとなった。ウクライナの生産ストップと港湾閉鎖による供給ギャップを埋めるため、バイヤーが一時的にパーム油や大豆油の買い占めに走ったことが要因とみられている。
ひまわり油はパーム油、大豆油に次いで、世界で3番目に多く取引されている植物油。ウクライナとロシアはひまわり油生産量でそれぞれ第1、2位となっており、世界全体の60%を占めている。輸出市場に関しては、両国がそれぞれ47%、29.9%を占めている。
CGS-CIMBリサーチは2月28日付けメモで、バイヤーによるCPO買い占めは、状況が改善するまで続く可能性が高いと分析。短期的にはCPO価格は高止まりする可能性が高く、1トン4,100リンギとしていた2022年の平均価格予想を上回っていると指摘した。
(エッジ、3月1日)

馬・タイ両国、KL-バンコク間高速鉄道の事業化調査実施へ

【バンコク】 マレーシアとタイは、クアラルンプール(KL)とタイのバンコクを繋ぐ高速鉄道(HSR)の実現可能性調査を実施することで合意した。タイを訪問中のイスマイル・サブリ・ヤアコブ首相が2月26日明らかにした。

イスマイル首相によると、タイのプラユット・チャンオチャ首相との会談でHSRの必要性について話し合い、合意に達したという。両国はまた、ケダ州ブキ・カユ・ヒタムの税関・出入国管理・検疫・安全管理(CIQS)施設とタイ南部ソンクラーのサダオ税関・移民・検疫(CIQ)施設とを結ぶ道路建設の促進、クランタン州スンガイ・ゴロクでの友好橋プロジェクト2件に関する協議の再開にも同意した。
物理的接続プロジェクト(PCP)の実施を通じて、「インドネシア・マレーシア・タイ成長トライアングル(IMT-GT)」の枠組みの下で協力を強化していく。マレーシアとタイは、農業・農業関連産業、観光、ハラル(イスラムの戒律に則った)製品・サービスという3つの主要分野に焦点を当て、革新的、包括的でありかつ持続可能な「2036年IMT-GTビジョン」の実現を目指す方針だ。
(フリー・マレーシア・トゥデー、ベルナマ通信、2月26日)

近隣4カ国間の陸路VTL、5月までに開始予定=首相

【バンコク】 タイを公式訪問中のイスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は、新型コロナウイルス「Covid-19」のワクチン接種を完了した者を対象に隔離なしで出入国を認める「ワクチン接種完了者向けトラベル・レーン(VTL)」ついて、タイ、シンガポール、ブルネイ、マレーシアの近隣4カ国間で5月までに陸路VTLを開始できる見込みだと明らかにした。
保健省が現在、近隣4カ国間の陸路VTLに関する内閣からの提案を検討している。空路VTLは、空港到着後のスクリーニング検査が容易なため実施しやすいが、陸路VTLでは入国審査時に行列を作らせないために方法を考える必要があるという。
イスマイル首相は、特にタイとの間の陸路VTLは、観光だけでなく二国間貿易にも関わるため重要であるとした。陸上国境を通じた貿易は両国間貿易額の半分を占め、タイからマレーシアへの2021年輸出額は年間105億米ドル(約441億リンギ)にのぼったという。
イスマイル首相はまた、タイとの間でワクチン接種証明書を相互承認することに合意したと述べた。マレーシアの「MySejahtera」アプリ、タイの「モー・プロム(Mor Prom)」アプリ上の接種証明書が両国で正式な接種証明書として認められることになる。
マレーシアとタイは、陸路・空路・海路でVTLを実施することに原則的に合意しており、実施を妨げる課題について具体的な解決方法の検討に入っている段階だという。
(ザ・サン、2月28日、ザ・スター、ニュー・ストレーツ・タイムズ、2月27日)

モデルナ、マレーシアなどアジア4カ国地域に子会社設立

【クアラルンプール】 医薬品メーカーの米モデルナは、▽マレーシア▽シンガポール▽台湾▽香港ーーのアジア4カ国・地域に現地子会社を設立すると発表した。同社のメッセンジャーRNA(mRNA)をベースとした新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチンや治療薬の販売ネットワークをアジア全域に拡大させることを目指す。
市販ワクチン担当のパトリック・ベルクステット副社長は、マレーシア国内の学術センター、大学、病院と協力する可能性に言及し、マレーシアのパートナーとのワクチン開発や製造における協力を通じてモデルナのmRNAプラットフォーム技術を世界中に供給したいと表明。マレーシアにおいてmRNAサイエンスを共同開発する可能性もあると述べた。
ステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)は、「2021年はモデルナにとって大きな意味のある年だったが、2022年も引き続きアジアでのプレゼンス拡大を通じて継続的な成長を遂げることができると期待している」と述べた。
モデルナはアジア太平洋地域ではすでに日本、韓国、豪州に子会社を設立しており、日本や欧州連合(EU)、英国、イスラエル、カナダなど70カ国以上で新型コロナワクチンの承認を受けている。2021年には8億700万回分のワクチンが出荷され、うち25%が低所得国に輸出された。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、2月17日、エッジ、2月16日)

エアロダインとペトロサー、サラワクでDT3サービス提供へ

【クアラルンプール】 日本でも事業展開しているドローンサービスのエアロダイン・グループは、技術職業教育訓練(TVET)センターのペトロサー・アカデミーと協業で、サラワクおよびボルネオ市場でドローン点検のDT3事業(ドローン技術、データ技術、 デジタル・トランスフォーメーション)を提供すると発表した。
両社が共同で発表した声明によると、エアロダインの持つドローン技術とデータ管理ソリューション、ペトロサーが持つサラワクおよびボルネオ市場でのプレゼンスを活かして、民間および公共部門両方に、石油・ガス向けエンジニアリング・サービスやインフラ資産の検査、セキュリティ・空中監視、ドローンによる配達のサービスを行う他、技術訓練や人材開発を実施する。
エアロダイン・グループのカマルル・ムハメド最高経営責任者(CEO)は、ペトロサーと共にサラワクとボルネオにおいてデジタル化を進めることで、企業は事業のプロセスを見直し、それぞれの目標の達成に繋げることができると言明。一方でペトロサーのアズファル・サフリCEOは、エアロダインとの協業はサラワク州企業にとり大きな節目となるとし、我々は境界線に縛られず、ボルネオ島全体のドローン分析産業に刺激を与えていく計画があると述べた。
(ザ・サン、2月16日、ベルナマ通信、2月15日)

独商工会議所、独マイスタープログラムを国内で提供開始

【ペタリンジャヤ】 在マレーシア・ドイツ商工会議所(MGCC)は、1月からマレーシア国内でメカトロニクス分野の「インダストリー・マイスター」資格の提供を開始したと発表した。職業訓練プログラムであり、ドイツの公式資格が取得できるマイスター・プログラムのドイツ国外での提供は初となる。
独カッセル・マーブルク商工会議所、独系医療機器メーカーのビー・ブラウン・メディカル・インダストリーズ(BMI)、ペナン技能開発センター(PSDC)が協力する。技術者を目指す人を対象に、高度技術や組織・経営知識に関するトップレベルのトレーニングを提供する。プログラム参加者は、PSDCで24カ月間のトレーニングを受けた後、MGCCによる認定を取得できる。BMIがスポンサーとなっているため、受講料は無料。さらにドイツ本国でのマイスター試験を受けることで独カッセル・マーブルク商工会議所から追加認定も取得できる。
MGCCのダニエル・バーンベック専務理事は、ドイツ国外では初となるマイスター・プログラムをマレーシアに導入できることを誇りに思うとし、このプログラムが成功すれば、マレーシアの人材は世界で最も求められる人材になると期待を示した。
BMIのクリスチャン・スターク オペレーション担当副社長は、製造業でのロボット依存度向上によりメカトロニクス専門家に対する需要も高まっているとし、今回のプログラムにより、ロボット分野での人材育成が推進できると述べた。
(ザ・サン、2月10日)

今年のGDP成長率予想、最大6.5%=中銀総裁

【クアラルンプール】 中央銀行バンク・ネガラ(BNM)のノル・シャムシア総裁は4日、今年のマレーシア国内総生産(GDP)成長予想について、5.5%から6.5%となるとの見通しを示した。世界的な需要拡大と民間支出の増加が成長を支えるという。
ノル氏は国営ベルナマ通信からのメールインタビューに対し、中国や米国、近隣国などの主要貿易国からの電気・電子(E&E)製品に対する強い外需が輸出部門の拡大に貢献すると指摘。家計支出についても、所得、雇用状況、消費者心理などの改善により拡大するとし、E&E製造業やデジタル投資などの大規模投資も成長を牽引するとした。一方、世界経済の鈍化、サプライチェーンの混乱、ワクチン耐性を持つ新型コロナウイルス「Covid-19」変異株出現などをリスクとして挙げた。
2022年のヘッドライン・インフレ率は、原油高騰のベース効果により、前年比で緩やかな上昇となる可能性が高いとし、コア・インフレ率も、経済と労働市場の回復により上昇圧力が抑えられ、緩やかな上昇となると予想。一方、世界的な商品価格動向およびサプライチェーン混乱の長期化によるリスクもあるとした。
ノル氏はまた、昨年12月の豪雨による洪水被害からも、環境・社会・企業統治(ESG)の重要性が明らかだと指摘。一部の銀行では融資や投資におけるポートフォリオを分析し、ESGの懸念がある顧客企業に働きかけを行なっており、顧客企業がより持続可能な活動に移行することをサポートする銀行も増えているとした。洪水による銀行業界への影響については、返済猶予や紛失書類再発行の手数料無料化など、コストが必要な被災者支援に取り組んでいるが、パンデミックによる悪影響に備えて2020年から徐々に引当金を積み上げてきたためコスト増は管理可能であるとし、銀行の収益にも大きな影響を与えることはないと強調した。
(ザ・スター、2月5日、ベルナマ通信、2月4日)