緊急令の廃止、下院議会で正式可決

【クアラルンプール】 下院議会は25日、非常事態宣言下で発令されていた7つの緊急令の廃止について全会一致で可決した。感染対策に関する緊急令の廃止に伴い、違反した際の罰則や罰金も引き下げられる。
 廃止の対象となるのは、▽2021年緊急令(基本権限)▽2021年改正緊急令(感染症の予防と制御)▽2021年改正緊急令(従業員の住宅、宿泊施設、アメニティの最低基準)▽2021年緊急令(基本権限)第2号▽2021年改正緊急令(基本権限)▽2021年改正緊急令(犯罪者の強制出頭)▽2021年改正緊急令(国家信託基金)ーー。
 審議では、多くの議員が非常事態は失敗だったとし、緊急令の失効についても、非常事態宣言終了後ではなくもっと早い段階で議論すべきだったとの見解を示した。
非常事態宣言は8月で終了したが、緊急令については先ごろワン・ジュナイディ首相府相(法律・国会担当)が「来年2月まで引き続き適用される」と述べていた。
緊急令については、7月に当時首相だったムヒディン・ヤシン氏が、アブドラ国王の承認なしに無効にすると発表したことで大きな非難を浴び、政権維持のための過半数議席が確保できなくなり、その結果首相を辞任するに至った。
(フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、10月25日)

州議選控えたマラッカ州、感染予防のため選挙集会を禁止

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 マラッカ州議会の選挙戦が始まることを受け、カイリー・ジャマルディン保健相は選挙絡みの集会や説教(Ceramah)社交行事を10月25日から11月27日まで禁止すると発表した
新型コロナウイルス「Covid-19」の感染再拡大を防ぐためで、「2021年感染症防止コントロール規則」を適用し、選挙絡みの宗教、スポーツ、娯楽、社会、文化など目的を問わず、集会を開催することが禁じられる。マラッカ州議会選挙の公示は11月8日、投開票は11月20日に行なわれる。
集会の禁止が発表されたことを受け、同州与党連合の国民戦線(BN)、野党連合の希望同盟(PH)の幹部や人権団体などからは批判の声が上がっている。
BN構成党の統一マレー国民組織(UMNO)幹部は、対面での選挙活動を禁止することは民主主義を損なうものだと批判。PH構成党の民主行動党(DAP)幹部は、選挙活動が制限されることは織り込み済みだったとし、代わりにオンラインによる選挙活動に力を入れていくと述べた。
一方、民主的な選挙を求める非政府組織、「Bersih2.0」は、選挙委員会がテレビ討論会など選挙活動の代替案を各党に提示すべきだと指摘した。

マラッカ州議会選、11月20日に投開票と決定

【マラッカ=マレーシアBIZナビ】 10月5日に解散したマラッカ州議会について、選挙委員会(EC)は18日、11月8日の公示、11月20日を投開票とする州議会選挙日程を明らかにした。
マラッカ州議会では10月4日、与党系議員4人がスレイマン・モハマド・アリ州首相(統一マレー国民組織=UMNO)支持を撤回すると発表。スレイマン州首相支持が過半数を割り込んだとして、退陣を要求した。これを受けた同州元首であるモハマド・アリ・ルスタム知事はスレイマン州首相が州議会で過半数の支持を失ったと判断、翌10月5日に州議会の解散を宣言した。
解散を受け、憲法の規定により州議会選挙が60日以内に開催されることとなったが、昨年のサバ州議会選後に新型コロナウイルス「Covid-19」感染者が急増した例もあり実施を危ぶむ声が上がっていた。
マラッカ州議会の定数は28で、昨年3月の政変劇でUMNOなどを構成党にもつ政党連合・国民戦線(BN)が14議席、共闘するPPBMが2議席、無所属1議席の合計17議席を擁して、州政権を希望同盟(PH)から奪回したが、今回4人が政権から離脱したことで合計13議席となり過半数を割り込んだ。
すでに州議会選に向けて各党派が動き出しており、政権与党の国民同盟(PN)も構成党間の議席配分調整に着手しているが、これまで議席をもっていなかった汎マレーシア・イスラム党(PAS)が候補を擁立する意向を示しており調整難航も予想される。

低所得者層向けローン返済支援プログラム、11月15日から

【クアラルンプール=マレーシアBIZナビ】 連邦政府は、「財務管理・耐久プログラム(URUS)」と称する低所得者向けローン返済支援プログラムを実施すると発表した。11月15日から申請受付を開始し、2022年1月31日が締め切りとなっている。
政府がこれまで行ってきた新型コロナウイルス「Covid-19」により影響を受けたグループに対する支援策を補完するもので、世帯収入が下から50%を占める5,880リンギ以下の低所得者層(B50)を対象としたローン返済支援プログラム。3カ月の金利免除、利率引き下げを含む24か月の低額分割払いなどが受けられる。また無担保ローン/ファイナンスや個人のクレジットカード所有者も、金利引き下げの恩恵を受けることができる。
銀行セクターとクレジット・カウンセリング債務管理機関(AKPK)が共同で行うもので、銀行セクターは同プログラム実施のために合計10憶リンギを割り当てている。

労働安全衛生マスタープラン発表、健康的な労働文化形成目指す

【クアラルンプール】 イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は13日、「労働安全衛生マスタープラン2021ー2025(OSHMP25)」を発表した。健康的な労働文化の形成を促進させ、「マレーシア幸福指数(MyWI)」の向上を図る。
イスマイル首相は、職場での事故や死亡、病気の感染率を下げると説明。職場のみならず、在宅ワークなども考慮して策定したと述べた。OSHMP25は、▽公共部門における労働安全衛生(OSH)の向上▽職場での自主規制の慣行強化▽OSHの教育および研究▽労働衛生の強化▽中小企業におけるOSH順守の向上▽技術を取り入れたOSH強化▽交通安全やインフォーマルセクター(非公式経済)などにおけるOSHの改善ーーを柱としていると言明。OSH順守を怠ると国内総生産の年間売り上げは4%減少すると述べた。
またイスマイル首相は、新型コロナウイルス「Covid-19」感染症にも触れ、感染拡大は公衆衛生のみならず、経済的、社会的にも大きな影響を与えたと指摘。現状を乗り切るために、在宅勤務を実施したり職場での働き方を変える必要があるとした。
「労働安全衛生マスタープラン2020」では、労働者1,000人当たりの事故発生率は2.18%低下した。死亡率も45%ダウンした。また2020年の1万人当たりの死亡率は2.09%で、前年の3.83%を下回った。
(ベルナマ通信、フリー・マレーシア・トゥデー、10月13日)

 

科学技術革新省、2025年までに5千社の起業を目標

【クアラルンプール】 科学技術革新省(MOSTI)は、2025年までに5社のユニコーン企業(評価額が10億米ドル以上の未上場スタートアップ企業)を含む5,000社の起業を目標に、スタートアップ開発ロードマップを策定している。アダム・ババ科技相が11日、上院で明らかにした。
同相によると、MOSTIは、国内スタートアップ企業の発展を促進するため、年内に「マイスタートアップ(MyStartup)」という名称の包括的プラットフォームを立ち上げる。起業家とさまざまな機関や関連省庁を結び、資金調達、トレーニング、助言などを受けられる場とする。
同相は、既存の国内ユニコーン企業として、中古乗用車取引のカーサム・マレーシアの例を挙げた。カーサムは、MOSTI傘下のベンチャー投資会社MAVCAP(マレーシア・ベンチャー・キャピタル・マネジメント)を通じて1,400万リンギの資金提供を受け、また、500スタートアップスやゴビ・パートナーズなど、様々なベンチャーキャピタルからも資金提供を受けているため、インドネシア、タイ、シンガポールなどへの海外進出やネットワーク拡大が可能になったとした。ドローンサービスを提供しているエアロダイン・グループ・マレーシアも、MOSTIの2,500万リンギの投資により、「ドローンサービス企業ランキング2021」において世界第5位から第1位のドローン点検企業へと成長したと強調した。
また、シンガポールとの間の新型コロナウイルス「Covid-19」ワクチン接種証明書の相互承認について、保健省、外務省、国家サイバーセキュリティー局とともに、両国で技術面についての議論を重ねてきたと説明。両国は7月6日に相互承認について合意したが、関連政策や技術についてはいまだ改良中だと述べた。
(ザ・サン、10月12日、ベルナマ通信、10月11日)

政府債務は今月末には対GDP比で60%超に、国会で財務相

【クアラルンプール】 テンク・ザフルル財務相は11日、下院における法案審議でガ・コーミン議員(希望同盟所属)の質問に対し、政府債務は10月末には対国内総生産(GDP)比で法定上限の60%を超えるとの見通しを示した。コロナウイルス対策に追加予算を組んだためだ。
政府収入1リンギに対する利子負担は18セン。債務返済能力を示す元利金返済カバー率は今年が18%となる390億リンギ、来年が431億リンギ程度になるという。
法案には、法定債務上限の65%への引き上げと、ウイルス対策予算の増額が含まれており、発声投票で承認された。
ザフルル氏によると、中期的計画として政府は財政赤字を対GDP比で25年までに3ー3.5%に減らすことを目指す。
ガ議員は、法案が承認されると政府債務は1兆3,000億リンギになり、国民1人当たり4万リンギに相当するとし、債務削減の行程表の明示を求めた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、10月11日)

「マレーシア家族」チームを立ち上げ、国民を支援=首相

【クアラルンプール】 イスマイル・サブリ・ヤアコブ首相は8日、「Keluarga Malaysia(マレーシア家族)」のためのチームを発足させた。女性家族共同体開発省傘下の社会福祉局が主導し、各省庁機関、民間企業、非政府組織(NGO)で編成。全国から約1万人を動員し、全ての国民を支援の網の目からこぼさないよう、支援の仕組みを調整していく。
8日には、クアラルンプールのアンカサプリで「マレーシア家族」プレ公開イベントが開催され、閣僚や政府関係者が参加した。その場でイスマイル首相は、「このコンセプトを確実に成功させるために、各省庁が最適な支援策を確認している」と説明。これは、援助を必要とする国民の負担を軽減するため、「パフォーマンス重視」の考え方を根づかせる最初のステップだと強調した。「マレーシア家族」の公式発表は、22日にサラワク州クチンで行われる予定だ。
イスマイル首相は、8月22日の首相就任演説の中で「マレーシア家族」について初めて触れ、国民に対し、それぞれの違いを横に置き、「共栄ビジョン2030」実現に向けお互い協力するよう呼びかけていた。「マレーシア家族」は、宗教、民族、人種の垣根を越えた包括的な概念であり、マレーシア国民が一つの家族として団結することを促すためのものだという。
(ザ・スター、10月8日)

電気自動車の優遇措置を発表、各種税を減免=通産相

【クアラルンプール】  政府は、電気自動車(EV)の製造、充電設備などのEVエコシステムの開発に対し、減税を行っていく。アズミン・アリ上級相(兼通産相)が5日の下院演説で明らかにした。
2050年までのカーボンニュートラルの目標達成に向け、国内でのEV普及と関連インフラの開発を促進するため、道路税の免除、EV購入時やEV充電設備設置時の所得税減税などが行われる。OEM(相手先商標製品)メーカーに対しては、所得税減税に加え、投資税控除、輸入関税・物品税の免除がインセンティブとして提供される。
同相は、EVの域内拠点を争っているライバル国がOEMメーカーへのインセンティブ提供に集中しているのに対し、マレーシアは包括的であり明確かつ一貫した政策を講じていると強調。国家自動車政策(NAP2020)の更新版では、重要部品の製造、標準規格の設定、研究開発、商用化、イノベーションの促進など、国内EV技術を発展させ、EVエコシステム全体を強化するための具体的な取り組みを行っていくとした。
また、貿易について、経済回復のためには地域包括的経済連携(RCEP)や包括的及び先進的な環太平洋経済連携協定(CPTPP)などの貿易協定を批准する必要があるとし、これらの自由貿易協定は、輸入関税や非関税障壁をなくすため、輸出市場が拡大すると強調した。
(ベルナマ通信、フリー・マレーシア・トゥデー、ポールタン、10月5日)

MM2H参加の新条件、既存参加者向けに大幅譲歩

【クアラルンプール】 連邦政府は、10月から厳格化されることになっていた外国人の長期滞在を奨励するマレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)プログラム参加条件について、既存のビザ取得者に追加されるのは年間ビザ費用増額と滞在義務の2項目のみと発表した。
既存のビザ取得者を対象とした譲歩は、ハムザ・ザイヌディン内務相が第12次マレーシア計画(12MP)関連の国会質疑で明らかにした。新たな条件は改正も含めて10項目あるが、既存のビザ取得者は既存の条件以外に、▽年間ビザ費用の90リンギから500リンギへの引き上げ▽年間90日間のマレーシア滞在義務化 ーーの2項目のみが求められる。
8月に発表された新条件では、ビザ有効期間の10年から5年への短縮、年間ビザ費用増額、滞在義務などが盛り込まれたが、特に問題視されていたのが資産証明に関する条件の厳格化。これまで月1万リンギだった海外所得が4倍の4万リンギに、これまで35万—50万リンギだった銀行への定期預金額が100万リンギに大幅に引き上げられた。
これを受けて既存のビザ取得者からは「延長ができなくなる」、ビザ斡旋業者や不動産業者といった関連業界からは「申請者が近隣諸国に逃げる」といった懸念の声があがっていた。
(フリー・マレーシア・トゥデー、エッジ、10月5日)