
第929回:仕事が変わると、性格の意味も変わる
前回は、経済危機になると、従業員が会社を見る物差しが変わる可能性について紹介しました。今回は、従業員自身の「性格」について考えてみます。
職場では、「協調性が高い人」が好まれることが少なくありません。周囲に配慮し、人と協力し、対立を避ける。確かに、多くの仕事で役立ちそうな性格です。
しかし、同じ性格でも、どんな仕事をしているかによって意味が変わるのではないでしょうか。
この疑問を調べるため、拙稿では22~66歳の働く男女175人について、性格とMRIで測定した脳の灰白質量との関係を分析しました。さらに、管理職や専門・技術職を「知識労働者」、それ以外を「その他の労働者」として比較しました。
興味深い結果が見られたのが「協調性」です。知識労働者では、協調性が高い人ほど脳全体の灰白質量の指標が高い傾向がありました。ところが、その他の労働者では、反対に低い傾向が見られました。
なぜでしょうか。
知識労働では、自分の専門性だけで仕事が完結するとは限りません。他者と知識を共有し、異なる専門性を組み合わせて問題を解決する必要があります。そのような環境では、協調性が仕事を進めるうえで強みになる可能性があります。
一方、協調性の高い人には、対立を避け、自分より相手を優先しやすい面もあります。先行研究では、そのために自分の利益を犠牲にしたり、不利益を受けたりする可能性も指摘されています。
もちろん、今回の研究は一時点の調査なので、仕事と性格の組み合わせが脳を変えたとは断定できません。あくまで両者の「関連」を示した結果です。
それでも、人材管理について一つの示唆があります。「協調性が高い人がよい」「積極的な人がよい」と、性格だけを切り離して評価するのは単純すぎるのかもしれません。
どんな人が優秀かではなく、どんな環境なら、その人の特徴が強みになるのか。
人を見るだけでなく、「人と仕事の組み合わせ」を見ることが大切なのではないでしょうか。
論文情報は以下。末尾のURLから全文をご覧いただけます。
Kokubun, K., Nemoto, K., & Yamakawa, Y. (2026). Occupational Context Moderates the Association Between Agreeableness and Brain Structure. Brain Health, 1, e70009.
https://doi.org/10.1002/brh2.70009
| 國分圭介(こくぶん・けいすけ) 京都大学経営管理大学院特定准教授、 |
