アジア開銀、26、27年のマレーシア経済成長予想を上方修正

【クアラルンプール】 アジア開発銀行(ADB)は、マレーシアの2026年と2027年の実質国内総生産(GDP)成長率予測をそれぞれ4.9%、4.7%に引き上げた。7月時点の予測は4.6%、4.5%だった。半導体需要の回復や堅調な技術輸出、データセンター投資などが成長を支えるとみている。

ADBが23日公表した「アジア経済見通し(ADO)」9月版によると、マレーシアでは純輸出が成長に強く寄与しており、企業が生産を拡大し、受注残を消化したことで製造業の活動も強まっている。2026年後半以降は成長がやや鈍化するとの予測だが、データセンター投資を背景に消費や建設が底堅く推移すると分析。2026年後半には、ハイパースケーラーによるスプリングヒル、セレンダ、ジョホールでの大規模データセンター開発が始まることで、第2次データセンター投資ブームが見込まれるとしている。またペナン州のライトレール交通(LRT)やペラ州のケリアン水資源事業などの大型公共インフラも建設・投資を下支えするとしている。

製造業と輸出については、人工知能(AI)の普及が追い風になると分析。世界の半導体売上高は2025年の7,956億米ドルから、2026年には1兆5,000億米ドルに拡大すると予測している。

一方、インフレ率については2026年、27年とも2.0%と予測。2027年については7月時点の1.9%から引き上げた。エルニーニョ現象が2027年第1四半期まで続く可能性があり、農業生産の減少やエネルギー需要の増加を通じ、食品・燃料価格を押し上げるとみている。

ADBは地域経済の下振れリスクとして、中東情勢やロシア・ウクライナ戦争の激化によるエネルギー価格の上昇、強いエルニーニョによる農業生産への影響を指摘。AI関連株の急落、金融環境の引き締まり、貿易政策を巡る不確実性もリスクに挙げている。
(エッジ、ベルナマ通信、ザ・スター電子版、マレー・メイル、9月23日)

インドネシアとハラル協議会を設立、両国間の貿易拡大目指す

【クアラルンプール】 マレーシアとインドネシアは、両国間のハラル(イスラムの戒律に則った)貿易を拡大する目的で、ハラル協議会を設けた。アハマド・ザヒド副首相がグローバル・ハラル・サミットで発表した。インドネシアのハラル認証機関の代表が議長を務め、マレーシアは事務局として機能する。初会合は10月に開催の予定だ。

会合では、2国間のハラル商品貿易をよりスムーズに行えるよう、主に認証について協議する。相手国に参入する際の障害や手続きの重複解消についても協議し、現実に即した解決法を探る。

マレーシアは基準、イスラム金融、貿易支援の面の経験を、インドネシアは生産能力の規模や起業家精神を持ち寄り、市場開放、投資促進、相互機会の創出を図る。

マレーシアは同協議会の域内版である東南アジア諸国連合(ASEAN)ハラル協議会の設立に意欲を持っており、アハマド・ザヒド氏が9月にインドネシアを訪問した際、提案していた。
(ベルナマ通信、9月18日、ザ・サン電子版、マレー・メイル、ベルナマ通信、9月25日)

マハティール元首相夫人のハスマ氏死去、100歳

【クアラルンプール】 マハティール・モハマド元首相の妻、シティ・ハスマ氏が28日午前9時25分ごろ、クアラルンプールの国立心臓病研究所で亡くなった。100歳だった。

同氏はセランゴール州クラン出身で、女性医師の草分けとして医療、公衆衛生、社会福祉の分野で長きにわたり活躍した。

シンガポールの医科大学時代に知り合ったマハティール氏と、大学卒業翌年の1956年に結婚。マハティール氏が首相を務めた2期計24年あまりにわたり、ファーストレディーとして夫を支えた。夫妻の間には4人の実子と、3人の養子がいる。

今年7月にはマハティール氏が101歳、ハスマ氏が100歳を迎え、8月には夫妻がともに100歳以上となったことを記念する認定式が開かれた。
(ニュー・ストレーツ・タイムズ、ザ・スター、ザ・サン、フリー・マレーシア・トゥデー、マレー・メイル、9月28日)

【総点検・マレーシア経済】第556回:8月の台湾からの輸入が急増。要因は?

第556回:8月の台湾からの輸入が急増。要因は?

9月18日、統計局はマレーシアの8月の貿易統計を発表しました。輸出額は前年同月比45.5%増、特に米国向けの輸出は130.4%増の375億リンギに達し、AIブームは衰え知らずとなっています。

一方で、注目されるのは輸入です。8月のマレーシアの輸入額は41.1%増となり、中国からの輸入が61.3%増、シンガポールからの輸入は59.1%増となりましたが、特筆すべきは台湾からの輸入が68.9%増(図参照)となりシンガポールを抜いて国別で2位になったことです。

台湾からの輸入は、2010年代までは中国、シンガポール、日本、米国に次ぐ5位グループでしたが、2010年代後半から増加し、ここ数年で上位3カ国に入るようになりました。

表は2026年8月のマレーシアの台湾からの輸入をHSコード10桁でみたものです。急増しているのは1位のメモリIC、3位のGPUモジュール等で、いずれも前年同月比5倍以上になっています。AIブームの輸入側への影響がここに現れています。

 

同時に、6位のサーバー等も20倍以上に増加しています。これは、マレーシア国内でのデータセンター建設ブームに対応していると考えられます。

近年、インテルの米国での前工程の微細化が停滞したことで、TSMCへのコンピュートチップ前工程の生産委託が本格化しました。これにより、台湾=前工程、マレーシア=後工程という協業が深まっています。

インテルはペナンの新拠点で、EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)と呼ばれる先端パッケージング技術を2026年下半期に導入する予定です。GoogleやAmazonなどがAIチップの前工程をTSMCに、後工程をインテルに委託することが報道されていますが、ペナンも先端後工程の一翼を担うと考えられ、2027年以降はこうした分業によっても、マレーシアの台湾からの半導体の輸入は増加する見込みです。

熊谷 聡(くまがい さとる) Malaysian Institute of Economic Research客員研究員/日本貿易振興機構・アジア経済研究所主任調査研究員。専門はマレーシア経済/国際経済学。 【この記事のお問い合わせは】E-mail:satoru_kumagai★ide.go.jp(★を@に変更ください) アジア経済研究所 URL: http://www.ide.go.jp