第602回 フィリピン、ハラル食品拡大のため中小零細企業や農家へ積極融資

Q: フィリピンでのハラル産業拡大におけるイスラム銀行の役割は?

A: さる9月20日と21日、フィリピン・ハラル産業サミットがマカティ市で開催された。同国唯一の政府系イスラム銀行であるアル・アマナ・イスラム投資銀行のアメナ・パンガンダマン会長兼CEOが登壇し、ハラル産業を通じた中小零細企業や農家の振興のため、10億ペソ(約25億円)の融資枠を設立することを明らかにした。7月に就任したばかりの新会長兼CEOが新方針を明らかにしたかっこうだ。

パンガンダマン氏の講演やその後のメディア・インタビュー等によれば、フィリピンの事業所の約99.5%、雇用の約63%は中小零細企業が担っており、これらに融資することは事業や雇用が拡大に繋がるとした。他方、ハラル産業では国内の供給が不足しており、近年は1億米ドルの輸入に頼らざるを得なくなっている。そこで、ハラル食品を製造する中小零細企業に積極的に融資することによって、事業や雇用の拡大を図りつつ、国内需要に対応し、将来的は輸出産業として育てていく狙いもあるとしている。

同銀行の取り組みは、政府が掲げるハラル産業開発戦略計画にそって政府機関と連携して進めていく模様だ。この一例としては、貿易産業省と覚書を結び、ハラル認証取得の費用支援や食肉処理施設の整備などを進めていく。また、同国のハラル認証団体であるフィリピノ・ムスリム国家委員会とは、金融支援に関する覚書を締結する取り組みをすすめることで合意している。

パンガンダマン氏によれば、中小零細企業がハラル市場に参入するためには、認証基準のハードルを下げることではなく、認証プロセスを理解しやすく、また利用しやすいようにすべきであると指摘し、ハラル食品のための設備拡充や物流の充実などに融資が用いてもらいたいとの期待を述べた。

 

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。