第594回 エルドアン大統領「利子があるところに恩恵なし」

Q: トルコのエルドアン大統領はイスラム銀行をどのようにみていますか?

A: 6月3日から6日にかけて、トルコのイスタンブールでアル・バラカ・グループ主催の「第3回世界イスラム経済サミット」が開催された。マレーシア中銀のアブドル・ラシード総裁をはじめ、各国のイスラム金融関係者が参加する大規模なサミットだが、この中でエルドアン大統領がスピーチを行った。大統領は「利子があるところに恩恵なし」として、イスラムが経済と社会に貢献することを強調した。

イスラム政策を進めるエルドアン大統領であるが、彼の考え方はこのスピーチによく表れている。スピーチによれば、経済や国際関係は、欧米発祥の単一のシステムに縛られるものではないとしている。イスラム金融は正義、倫理、リスク分担、持続可能性、社会福祉といった価値観に基づいて運営されており、欧米社会の価値観とは異なるもう一つの選択肢となる。また、イスラム金融はムスリムだけのものでなく、全世界にとってより 公平で安全なモデルであるとしている。

ただ、現在トルコの金融市場に占めるイスラム銀行の割合は9.5%にとどまっている。長らくトルコの銀行市場を従来型金融が占めていることに対して、大統領は長年の不満を込めて「利子があるところに恩恵はない」と批判した。続けて大統領は、政府系イスラム銀行4行のうちジラート・カトゥルム銀行、ヴァルフ・カトゥルム銀行、ハルク・カトゥルム銀行の合併、および残る一つのエムラク・カトゥルム銀行のIPOを実施することを明らかにした。具体的な時期や方法については言及しなかったものの、これらの動きが重大な相乗効果を生むと強調した。

トルコでは、イスラム式の銀行は「参加銀行」(カティリム・バンカシ)と呼ばれる。イスラム銀行を推進するエルドアン政権下にあっても、「イスラム」の名称を冠することがない独自の政治と宗教のバランスがあるのがトルコの現状を表しているといえよう。

福島 康博(ふくしま やすひろ)
立教大学アジア地域研究所特任研究員。1973年東京都生まれ。マレーシア国際イスラーム大学大学院MBA課程イスラーム金融コース留学をへて、桜美林大学大学院国際学研究科後期博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。2014年5月より現職。専門は、イスラーム金融論、マレーシア地域研究。